第188話
ユーカの顔も見たということでヤマキ一家の拠点を出た僕は、一旦自分達の拠点へと来ていた。入学前から確保したここだけど、一応ヤマキ達には教えてはいないし、裏社会がらみの話をする時にはやはりここがいい。
……まあ、ヤマキやルアナにはどうせ把握されてるんだろうな、とは想定してるけどね。
「なるほど、内通者ですか……」
今聞いてきた話を伝えると、ライラは難しい顔をする。この聡明なメイドのことだから考えていなかったということではなくて、想定の中でも悪い可能性が来てしまったということなのだろう。
「そうなりますと、ご主人様とぐす……いえ、ご主人様に骨を折ってもらうことになりますね」
「あぁ……うん」
グスタフの名前を出しかけてやめやがったな、ライラめ……。
確かに内通者の炙り出しなんて繊細な仕事、あいつには向かないだろうけどさぁ。
とはいえ確かに、任せたとすると誰彼構わず刃先を向けて「お前が内通者だな、吐け」とか言って回る姿が目に浮かぶ……かも。いやそこまで無茶はしない……はず。
相棒に申し訳ないとは思いつつ、何にも反論は思いつかなかった。
「――といった所でしょうか」
ライラがいくつか可能性や対処案を挙げてくれていた間、ちょっと考え事に意識がとられていた。まあ僕にしたってスパイの真似事なんて得意じゃないから、正直言って出たとこ勝負だ。
「あ、ご主人様!」
「何やら厄介ごとかの?」
ちょうど話が一段落したところに、サイラとラセツが連れ立ってやってきた。
「いや、厄介ごとではあるけど、まあただの仕事だよ」
「そうか」
肩の力を抜いた返答に、聞いてきたラセツも微妙に拍子抜けしたような様子を見せる。暴れる機会でも期待しての声掛けだったようだ。
「そうなの?」
「そうよ」
サイラの方もライラに確認して同じ返事をされている。相変わらず仲のいい姉妹だ。
まあ少なくとも今の時点では、仲間を総動員してやるようなことではない。ヴァイスやヴァイシャル学園としてはかなり頭の痛い問題だろうし、ヤマキ一家としても全く笑いごとではないだろう。
けどまあ僕個人としては、デルタファミリーに現時点でたいした脅威も感じていないし、真面目には対処するけど必死には立ち向かわないってところかな。
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