第180話
教室を出た僕はグスタフと歩いていた。隣のグスタフは何とも気の抜けたというか、何か別のことを考えているような表情をしている。
「さっきの対戦相手?」
「ん? ああ」
心当たりを聞いてみると、頷きが返ってきた。やっぱりそうだったらしい。
対戦相手というのは、もちろん発表会での模擬戦の相手だ。教員が決めた相手との一対一をすることになるのだけど、その相手というのが先ほど教室に貼りだされていた。
「何て言ったっけか……、確か……ソンブリ?」
「いや、ソブリオだ。二組だな」
惜しい。
というか、特に覚える気もなかったから覚えていなかっただけのことだけど。ちなみに僕らが二組と言えば一年戦闘・戦術科の二組、つまりは一戦二のことだ。一年はある程度成績順にクラスが分けられているはずだから、いってしまえば二組は二番手集団になる訳だけど……、だからこそ熱意を持って牙を研いでいる連中だともいえる。入学試験はあくまでもその日の一発勝負だからね。実戦だと力が出し切れなかったなんて言い訳にもならないけど、日によって調子があるのも事実だ。
何が言いたいかというと油断はできないということなんだけど……、まあ模擬戦だしね。正直僕としては負けたとしても多少陰口を言われる程度だろうし、対戦相手の情報収集とかまでしようとは思っていない。
そんな僕の方の対戦相手は、レンツァという名前だった。これも二組の生徒だそうだけど、ほぼ知らない。
“ほぼ”……ということで、実は多少は知っているんだけど、クラスメイトの噂話によると二組での模擬戦トップであるらしい。そして二組でというだけでなく、密かに一年の中で僕かそのレンツァのどちらかが実戦的な実力では一番ではないかと噂されているほど……らしい。
らしい、らしい、とあれなんだけど、実際に噂話されているのをちょっと聞いただけなんだから仕方がない。街の方で色々と事件があったり、ヤマキ一家ともちょくちょく関わったりしていたから、学園の方まではそこまで細やかに気を回せてこなかったというのが事実だ。
死亡フラグのこともあるしどうでもいいとか思っている訳ではないんだけど……。少なくとも
この発表会にしても、なんか一回戦闘させられる、という程度のものだったはず。ゲームのお約束として、序盤は主人公自身の成長とか仲間集めに焦点が当たって、中盤から敵となる相手が台頭してくるというのは普通だろうし。
まあ僕としてはゲームの悪役貴族みたいにわかりやすく“台頭”する気なんてないんだけどね。
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