第164話
「オルディナリア! お、また何か作ったのか?」
実習室から出たところで、僕はクラスメイトから声を掛けられました。手にしていた物が気になったようです。
「えっと、これはですね……」
正直にいうと、顔は覚えていても名前が出てこないくらいだったのですが、話の内容が内容だったので僕は快く足を止めて答えます。
僕が手掛けた魔法道具の流麗さを理解したいというのであれば、説明する労くらいはなんてことありません。
今僕が実習室にて自習として作っていたのは単純な機構の道具で、レール上に設置された棒が勢いよく前後するというものです。魔力を通すと力を発生させる道具というのは既にあるものですが、出力任せで直接ぶつけるか、弾となるものを射出するかといったところです。
「――ですが、こうして手元で完結させることで威力を保ちながら、使い捨てになるようなこともなく――」
「ちょ、ちょっと、うん! わかった! 説明してくれて、ありがとうな!」
「――あぁ、ここからが重要なところで……」
説明が佳境に入ったところだというのに、声を掛けてきたクラスメイトは行ってしまいました。わかっています、僕の話が長くてくどいのが嫌がられているということくらいは。……、だけど聞いてきたのは向こうではないですか。
「それって、武器を想定している魔法道具なの?」
「……え?」
去って行ったクラスメイトの背を恨みがましく睨んでいると、思っていなかった方向から声を掛けられました。びっくりしたのは突然だったからですが、呆けた声を出してしまったのはまた別の理由――その人物に驚いたから――でした。
「ああ、突然に横からごめんね。聞こえてきた話が興味深かったものだから」
「アル君が、急に方向転換して寄っていくから俺も驚いた」
ふわふわとした金髪に優しい面立ちをした物語の王子様みたいな美青年と、彼に付き添うように立つ長身でがっしりした体躯に厳つい顔と赤茶色の髪を五分刈りにした頭がのっている美丈夫。
彼らは僕でも知っている学年の有名人、アル・コレオ君とグスタフ・シェイザ君でした。
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