第151話

 いける。

 

 単純に個としての強さで、僕がメンテを上回っているという手応えがあった。ちょっとした撃ち合いで魔法使いとしての実力が拮抗していると感じたからこそ、プラスアルファの部分でこちらの優位を感じた。結局は魔法の変わった使用法に過ぎないグリッチ魔法に対して、僕が生き残るために今日まで磨き上げた魔法格闘の方が、実戦の中で“刺さる”。

 それに何より、根本的な差というものもある。

 

 「ご主人様、冒険者は逆転や撤退のための奥の手をいくつか持っているものです。彼らの生存能力にはご注意を」

 「……ああ」

 

 後方で様子見に徹していたライラから注意が飛んでくる。どうにも油断癖のある僕にとっては得難い冷静さだ。……自覚があるなら治せよって話だけど。

 

 「必要なら、俺が叩き切る」

 「頼りにしてる」

 

 続いてさっきからずっとカバーしてくれているグスタフからも頼もしい言葉。

 

 「あっはははははぁ!」

 

 と、転がされた後はこちらをすごい形相で睨んでいたメンテが、急に大口をあけて笑いだした。

 

 「なんだよ、急に」

 

 ダメージを回復させる時間稼ぎなのかもしれないけど、優位な状況にあるこっちとしては時間を掛けることはやぶさかでない。

 ということで、いつでも跳びかかれるよう足に力を込めながら、声に出して反応する。

 

 「転生者だし、厄介な戦い方もするようだしぃ? 私もピンチかと思ったけど、勘違いだったわぁ」

 「……?」

 

 虚勢を張ることで、自分の闘志を鼓舞したり、こちらの戦意を少しでも削いだり、そういう戦術だっていうなら、まだわかる。だけど、あいつの表情は本気も本気、大真面目にそう確信したことを口にしているってものだ。

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