第150話
自画自賛になるけど、僕がラセツとの手合わせをしている最中にとっさに思い付き、そして過去のグイドとの戦いで形にした魔法格闘は、特に実戦において強力な手段だ。
魔法を防がれればそのまま殴れるし、拳を防がれれば魔法が回り込む。血濡れの刃団のタマラも悪くはなかったけど、あれはただ順番に使っていただけ、発想は僕と同じだけどそれじゃあ順番に防がれれば結局は同じ。ただ相手の対処が難しくなるに過ぎない。だからこそ、同時に叩きつけるということが重要となる。
属性爆発とかいうグリッチ魔法を単純な魔法の防御で相殺した、だけどいったように僕は同時に行使する。
だから――
「なあぁ!」
――衝撃とそれを防いだ壁、それらが消えた後には突っ込む僕が残り、メンテとの距離は無様に驚く表情がはっきり見えるほどに近い。
最初の一発目はこちらも不意をつかれてとっさの防御しかできなかったから、吹き飛んで距離が広がった。だから今度もそうなったとでも思い込んでいたんだろう。なぜ手にまとわずにしっかりと岩壁を出したか考えれば予想できることなんだけどね。
「うらぁっ!」
そしてそのまま肩を突き出してメンテの鳩尾に抉り込ませ、ここまで走り込んできた勢いが僕の体重と脚力で衝撃として伝えられる。
「げぷうぅ」
無理やり息を吐かされた滑稽な苦鳴の尾を引いてメンテは転がり、だけどそのまま無様に倒れ伏すようなことはなく、途中で勢いを利用してうまく立ち上がってこちらを睨んでくる。
さすがに学生であるキサラギ・ボーライみたいには簡単にいかないか。
「ぜぇ……ぜぇ……この私を……砂まみれにするなんてぇ……」
街中のほぼ全てが石で舗装されているヴァイスでは転がって遊んでも泥んこにはならない。だけどまあ、メンテが言いたいのは汚れが砂だからどうということではなく、人間風情が自分にダメージを与えるとはってことだろう。
転生者であるらしいメンテだけど、これはすごく冒険者っぽい反応だ。強大な魔獣を狩る彼らは、どうにも人間相手の戦闘を軽視する。それはつまり、そんな魔獣を狩りの対象とする冒険者はすごいんだぞという自尊心な訳だけど、魔獣が人間を上回るのは“強さ”だ。“厄介さ”なら人間の方が圧倒する。なにせ色々と考えた上で、相手の嫌がることを選んでやってくるからね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます