第148話

 勝手に思い込んでいたメンテは、勝手に気付いて、今はなにやら繰り返し頷いている。

 

 「どおりで……、あの二人を言いくるめたり、遺跡の機構を回避したり……。そういうことだったのねぇ」

 

 状況とユーカの証言から確信はしていたこいつが黒幕だっていうことを、わざわざぶつぶつと呟いて自白してくれている。バレバレだとしてもしらを切って、相手を動揺させようとかそういう思考はないのかな、この冒険者さんは。

 ……ああ、でもそうか。冒険者って基本的には対魔獣――つまり会話のできない化け物を相手にするから、そういう駆け引きに親しんではいないんだろうね。そう考えると、転生者だとしても裏社会の人間を相手するよりは気楽といえる。

 

 「ヴルカ放出パルティ強化フォルテ

 

 俯き気味に思考しているメンテに、威力を強化して赤々とした火球を撃ち込む。とはいえ、あいつはどう見ても純魔法使い。

 

 「消滅スコンパルサぁ……からのぉ、ヴルカ放出パルティ強化フォルテぇ!」

 「消滅スコンパルサっ!」

 

 難なく魔法パリィで消滅させ、直後にこれ見よがしに同じレテラ構成の魔法を撃ち返してくる。当然、こちらも悠々と打ち消したけど、この距離だと消耗戦にしかならないな。

 そして威力も発動速度も互角……かな、たぶん。ただしこっちには魔法格闘があって、向こうにはグリッチがある、と。

 

 「こっちに、分があるかなぁ」

 「任せて大丈夫なのか?」

 「ああ、グスタフはフォローを頼む」

 「わかった」

 

 頭の中で攻略の算段をたてると、少しだけ不安そうにグスタフが聞いてくる。だけどさっきと同じだ。僕がなんとか突破口を探るときに、後ろで相棒がカバーしてくれるならなんとでもなる。失敗が怖くないからこそ、大胆な行動もとれる。今はさらに冷静で賢い――今でも本質的には気弱だけど――ライラも様子見に徹しているんだから、なおさら安心してぶつかっていけるというもの。

 

 問題はメンテに奥の手グリッチがいくつあるのかってところだけど、少なくともさっきの奴ならもう何とかなりそうな手段も思いついた。ちょっと強引だけど、試してみようか。

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