第143話
「ギルドのある通りは付近の路地も含めて大きく、人通りが多すぎます。ですので、出てくるところを捕捉してから、一旦あとをつけて様子を……」
冒険者ギルドの建物を目指して移動している途中で、作戦をざっくりと考えていたライラが、唐突に言葉に詰まる。いくらアドリブ的に動いているとはいえ、こういう時には立て板に水のライラにしては珍しいことだ。
「どうした?」
グスタフも不思議そうに問いかける。ライラは何かに悩んでいるという風ではなく、口をぽかんと開けたままのこの表情は驚いているという感じで……。
なんだか、こういう表情だと五年前のライラを思い出す。
「何をそんな……あ」
何を見てそんな反応をしているのかと視線を辿ってみると……、なんといた。
はっきりと凹凸のある体形の女が、ウェーブがかった長い髪を揺らすようにしながら歩いている。悠然としたその足取りは武術の心得を感じるような鍛えられたものではない一方で、いつでも仕留められるような隙があるという訳でもない。典型的な強い魔法使いの雰囲気だ。
そしてなにより、あの容姿はユーカから聞き出してきた
それにしてもこんなことってあるのか。ヴァイスみたいな大きな街中では僕の解析の副次効果では人探しなんてできない。人がいることはわかっても、誰かまで特定することは難しいからだ。人気のないような区画であれば、ある程度魔力の大きさまでわかることもあるけど、冒険者ギルドがあるような大通りでまともに使えるはずもないから気にもしていなかった。
それがまさかただの偶然で見つかるなんて。僕らの運がいいのか、あいつの運が悪いのか……。
しかもこの位置で、それもこちらが先に見つけた。都合がいいにも程があるね。というのも――
「この方向はギルドへと向かうところなのでしょう。そしてこの先で人気のない場所を通るはずです」
――ということだ。しかも人気のない場所にしても特に都合のいい場所といえる。
「うまくすれば誘導できる? 前に僕らが襲いに行ったあの倉庫に」
「可能です。あたしもそれが最善だと思います」
以前流れの盗賊団がこの街で暴れた騒動の時に、僕とグスタフとラセツで襲った倉庫のひとつ。ラセツが幹部を取り逃がして落ち込んだあの場所だ。そこへと繋がる道が、この先にあるということだった。襲撃をかけつつ、うまいこと追い込んでいけば、あとは事が露見することを心配せずにじっくりと仕留めることができるという計画だ。
「じゃあそれでいこう。ライラに仕掛けは任せる。うまくいけば後は僕とグスタフで何とかするよ」
「はい」「任せてくれ」
僕が作戦決行を宣言すると、ライラの凛々しい声と、グスタフの勇ましい声が続いた。さて、それじゃあ
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