第133話
「
入学試験時にはデュエマギアだったプロタゴが、あの時に見せたのと同じ熱湯球を、トレマギアとなったからできるようになった放出のレテラによる射出魔法として放ってくる。
「どうだ、俺のっ!」
弾速は遅いけど、湯気の尾を引いて迫ってくるプロタゴの熱湯球。温度でいうと火球の方が高くて殺傷力があるし、当たったところで岩や氷の杭みたいに体に穴をあけられる訳でもない。だけど沸騰する水の温度でも浴びれば十二分に負傷はするし、固体でないからこそ半端に防いでも
「
滞留の制御レテラでしっかりと厚みと幅のある岩壁を眼前に展開して盾とする。これで完全に熱湯球は防いだ……けど、これこそが向こうの狙いだろう。
そう考えて視線を巡らせる。
「っ!? ヴ、
僕が防御のための魔法に気を割いている隙に、プロタゴから離れて動いていたニスタだけど、しっかりと視界に捉えてやると動揺をみせた。それでも時間差でクロスファイアとなるように火球を放ってきた胆力は中々のものだ。
事実として、防御の難しいプロタゴの熱湯球にしっかりとした魔法で対応したあとのニスタの追撃は、相討ち覚悟で食らいながら撃ち返すか、あるいは致命的な隙をさらして転がって避けるくらいしかない。一対二での実戦という状況では、理想的な攻め方といえる。
「
まあ僕なら一文字魔法でも十分な威力を出せるから、その戦術は破綻するんだけど。
「……え」「……は?」
僕とニスタの間の空間に出現した渦巻く風が、緑光を散らしながら一瞬吹き荒れてニスタの火球と相殺した光景に、双子は戸惑って動きを止めた。
「
実戦慣れはそれ程していない……な。わざわざ僕に反撃の機会を提供してくれるなんて。
悠々と放った緑光まとう風刃はまっすぐとニスタへと向かう。ただし直撃しても即死させないように、一応腕へと狙いをつけている。
それに加えて、と。
「す、す、すス
よくそれで発動できたなぁ……と思わざるを得ないくらいにぎこちなかったニスタの詠唱だけど、きっちりと僕の風刃は消された。確信は持っていたけどやっぱりニスタは消滅のレテラを習得していた。
転生者絡みのことは……まあ、多少の誤解もあったようだけど、こうなると通り魔についてもニスタとの繋がりを疑ったことは間違いじゃなさそう。だけど百歩譲って消滅は何かの偶然で習得したのだとしても、あの遺跡での機構の操作だけはそんな偶然起こりっこないと思うんだよねぇ。
「えぇぇっ!」
と、一瞬思考が逸れていた僕だけど、風刃に続くようにして踏み込んでいたことで、間髪入れずにニスタとの距離を詰めていた。攻撃魔法に連続してだったから、特殊な歩法も魔法による加速もできなかったけど、ニスタを驚かせるには十分な速度とタイミングだったようだ。
「
右腕を振り上げると同時に一文字を詠唱して、風を手にまとわせた。
「うら!」
そしてそのまますぐに拳をニスタへと叩きつける!
「
僕の詠唱にとっさに反応したのか、ニスタが振り回した手は確かに僕の右腕に当たってまとっていた風を散らしてしまった。だけど魔法使いとしては思ったより上々だったニスタは、戦士としての能力はあまりに貧相だ。つまり、僕が振り抜いた
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