第132話
僕が気付いた時に、ニスタは何やら思いつめた様子で「見つけた」と言っていた。プロタゴにしても、たっぷりの敵意を込めているという違いはあったけど、明らかな焦りが見えているのは違いがない。
まあ、探していたのはこっちの方なんだけど……っていうのは置いておくとして。
ここに至って、こんな状況っていうのがどういうことか? さすがに確信が持てた、僕だって馬鹿じゃない。
「やっぱり、君は……そうだったんだね。まさか僕以外にもいるとは思いもしてこなかったよ。考えればあり得ることだったのに……」
「“そう”? 何のことをいっているの?」
「……」
プロタゴは黙り込んで成り行きを見ている。やはりニスタの方だったということ、か。
「ここまで来て、とぼけるなよ。僕が君のことに勘付いたと思ったからこそ、そっちから出向いたんだろう?」
「だから……何の話?」
……?
ニスタはなんでそこまで明言を避けようとする? はっきりと言葉にすると困るような事情……、例えば隣のプロタゴには実は何も明かしていない、とかあるんだろうか。
ちょっと試してやるか。
「言いたくないならはっきりと言ってやるよ。君も『学園都市ヴァイス』のプレイヤーだったんだろう? それもかなりコアな……ね」
遺跡のあの装置の動かし方まで知っていたなんて、相当なマニアだ。そして僕の方でもそれくらいまではわかっているんだぞと示すための言葉でもある。
「「…………?」」
わあ、やっぱりプロタゴとニスタって双子なんだね。首を傾げる仕草がそっくり。……じゃなくって!
なんでニスタまで意味がわからないって表情なんだ? そこまでしらを切るなら、ここに来る意味もなかったはずなのに。
「誤魔化す意味なんてもうないだろう? ……君も転生者だ……ってことは」
相手の意図がわからないけど、その駆け引きに乗ってやる意味も義理もないから、早々に決定的な言葉をぶつけてやった。僕を動揺させようと小細工したのかもしれないけど、無駄だよ。見た通りのただの学生じゃないんだ、その程度じゃ揺らがない。
「本当に何を言っているの、アル君は? ウチらはただお師匠様に見捨てられそ――」
「――時間を稼いでも無駄だぞ、アル・コレオ! グスタフの野郎か、それか薄汚い裏社会のお友達でも待っているつもりなんだろう!」
ニスタの言葉を遮ってプロタゴが怒鳴りつけてくる。これだけ騒いでも、広場の周囲に人が近づいてくる気配はない。何か細工をしているってことは間違いないだろう。
けど、今問題はそこじゃなくて……。
「違うの?」
びっくりするあまり、全くの素のテンションで質問してしまう。さっきまで一応格好つけてちょっと低く喋っていたから、余計に馬鹿みたいな声の調子になってしまったけど、取り繕う余裕がない。
「だから……何のこと? さっき言ってたテ、テッセーシヤ?とかいうもののこと?」
「ニスタ! あんな奴の口車に乗るな! 何か卑怯なことをされる前に一気に叩くぞ!」
プロタゴの威勢のいい声を合図にニスタも戦闘態勢へと身構えた。その表情はどちらも真剣……からかっている風でもなければ、高度な情報戦を仕掛けてきている雰囲気でもない。
つまり……要するに……これは……あれだ。……僕が勝手に盛大な勘違いをしてしまっていたらしい。
……………………はっず。
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