第131話
色々と考えながら街中をうろついていると、気付けば人通りの少ない広場に出ていた。狭い路地をいくつか経由しないと辿り着けないこういう場所は、常に人なんていないのだけどね。
現に解析の副次公開で気配を感じ取ろうとしても近くに人はいない。“人通りの少ない”とはいったものの、今に限っていえば人のいない広場っていうことだ。
まあなんでそんなことをつらつらと考えているかというと、ただの皮肉だ。自分への、だけど。いくら考え事をしながら歩いていたとはいっても、こんなところへ来てしまっては情報収集もできやしない。
あえて言い訳をするなら人気のないところをふらふらしていたら、通り魔に都合よく襲われたりしないかな、とか。
ライラは路地をうろつく人から情報収集でもしようとしたところで、いきなり襲われたっていう話だったけど、その時はまだ通り魔が“弱い相手”を狙っていた段階だったしなぁ。容姿も所作もきりっとしているとはいえ、メイド服姿でどう見ても戦闘に長けている風ではないライラが狙われたというのもその段階だったからこそだろう。
今は力をつけてきたからか、通り魔は冒険者まで襲うって話だから、制服を着ている僕は狙われないだろうね。
「一旦、大通りまで戻るか……」
自分の言い訳を自分で論破したところで、自嘲気味に笑みを浮かべつつ、踵を返す。頭の中でぐるぐると考え続けるのは昔からの癖だ。
だからといって、考えに没頭しすぎて周りが見えなくなっているなんてこともない。定期的に解析のレテラによる副次効果へと意識を向けている僕は、なんなら周囲にきょろきょろと目をやりながら歩いているそこらの素人よりも、よっぽど状況を把握できていると自負してもいる。
「……おっと」
だからこそ、表面に出した態度以上に、驚いてしまった。
「……見つけた」
「逃がさねぇぞ」
何せ、振り返ったところで、僕の視界には広場から出られないように立ちふさがる人影があったから。さらにいえば、その人影というのが、黒髪の双子プロタゴとニスタだったからだ。
「これはこれは……」
「何をにやにやしてやがるっ!」
無意識にでたさっきの自嘲とはまた違う笑みに、プロタゴがすぐさま噛みついてくる。
向こうが苛つくのはもっともだけど、僕としては笑いたくもなるよ。考え事をしすぎて気付けば妙な場所に入り込んだなぁなんて思っていたら、本当に向こうからやってきてくれるなんてね。
そもそも通り魔だって、そこまで真剣に追っていた訳じゃない。犯罪者を追うのは衛兵の仕事だし、学生を守るということならヴァイシャル学園の教員の仕事だし、縄張りを荒らされて怒るのはヤマキだ。僕としては鬱陶しいなぁ、くらいのことでしかない。
それでも追っていたのは消滅の魔法を使ったという情報があったからだ。秘匿されたそれを使えるということはニスタとの繋がりを推測できたから、追っていたんだ。
つまるところ、僕としては
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