第119話
色々と準備を整えたうえで迎えた僕のヴァイシャル学園での学生生活だったけど、ようやくいい感じになってきたように思える。
いい成績で入学して拠点も確保して……、と順調にスタートした矢先にドン・パラディことサティに叩きのめされた時にはどうなるかと思ったけど、それも何とか生き延びたし。
正直なところ、サティに魔法が通用しなくて気絶させられた瞬間は、もう目覚めることはないと覚悟した。フルト王国の裏を仕切るドンに喧嘩を売って敗北したんだから、当然だ。
だけどどういう思惑があったのか見逃されたことで、立て直す猶予ができた。それもあのサティの手の平の上っていうのが気に食わないけど、今はえり好みなんてしていられない。
まあそんなこんなで僕はアル・コレオとして、ゲーム『学園都市ヴァイス』の悪役貴族『アル・コレオ』とは違う学生生活を送ってきた。ゲームでは『アル・コレオ』は誰もが認める“嫌な貴族子弟”だったから基本的に孤独だった。なにせ幼馴染の『グスタフ』にも裏切られるくらいだし。
だけど“僕”は背中を預けられる仲間を得てきた。グスタフは無二の相棒と呼べる存在だし、ゲームではそもそもいなかったライラ、サイラ、ラセツもいる。というか、ラセツに至ってはゲームで描かれなかったダンジョン内の“通路”の先で過去から連れてきた精霊鬼だ。その過程で身につけた魔法で殴る戦闘術も純粋なマエストロだった『アル・コレオ』にはない僕のオリジナルだしね。
あ、そうそう……“通路”の件といえば、だ。
あの時、シェイザ家の人間であるグスタフですら知らなかった“通路”の起動方法を知っていて、僕をピンチに陥れた張本人であるプロタゴとニスタの双子だけど、これまでは怒るグスタフを抑えて放置してきた。
ニスタが操作したあれはゲーム『学園都市ヴァイス』の知識と結び付けて考えない方が難しいというのが理由だ。要するに僕は警戒したっていう訳だね、もう一人の
そんな二人はというと……。
「ひっ」
「く!」
教室で近くを通っただけでニスタは露骨に怯え、プロタゴも表面上は威嚇してきているけどその額に滲む汗は隠せていない。
今の僕は学園でも優等生で通っている。昔は悪い噂もあったけど話してみると温厚ないい人、ってね。例の死亡フラグ群を避けるために意識的にそう振る舞っているんだから、そうならないと困るんだけどね。
まあそんな優等生な僕のことをこうも怖がるものだから、周囲のクラスメイトも「?」と疑問符を頭上に浮かべて首を傾げている。
明確に敵対しておいて何もしてこない僕を相手に勝手に色々と想像して怖がる様は滑稽で見ていて飽きない。けど、そろそろこの不安要素にもけりをつけないといけないとも思っている。
それには何かあと一つでも、決め手になるような情報が欲しいところではあるんだけどね。
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