闇の中・通り魔追跡編
第118話
私は岩手明子。それなりの成績で学生時代を終えてそこそこの会社に就職し、何のやりがいも見いだせない仕事に一生を費やした馬鹿な女。
自分でいうのもなんだけど、素材は悪くないんだから若いうちにもっとオシャレすれば良かった。趣味はあったんだから、仕事なんて適当にやって精一杯そっちに気力も時間もつぎ込めば良かった。食べたいものがあったのに半端なダイエットで我慢することもあったし、勝手な思い込みで変な気を利かせて途切れてしまった人間関係もあった。
半端な我慢。私の人生はその一言に尽きた。
一生……人生……。そう、私にとって、それらは過去形で語ること……もう終わったことだ。
――終わった、はずのことだった。
会社に向かう途中で電車に撥ねられた時に終わったはずの私の意識は、なんとその続きがあった。生まれ変わり、というやつなのだろう。
なんの信仰心も持っていなかった私には、魂とか輪廻転生とかがどういう仕組みなのかなんてわかるはずもない。だけど、前世の記憶を持ってのそれはとても珍しいことなのではないだろうか。前世ではテレビで何度か見たことがあった程度だったし、今世では噂に聞いたことすらない。
さらにいえば、前世の記憶を持って生まれ変わった先は元の世界ではなかった。全く別の世界、いわゆる異世界というあれだ。太陽も月もそれぞれ一つずつだし私には星もわからないけど、あの地球じゃないというのは自信を持っていえる。なにせ、ここには“魔法”があったからだ。
魔力を使って、呪文を唱えて、手から火を出す。そんなことが普通にできるファンタジー世界が地球のはずがなかった。
だけどここで重要なのは、
そこは私が前世で趣味として入れ込んでいたゲーム『学園都市ヴァイス』の世界だった。
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