第109話
馬鹿なのか、こいつら!?
火事場泥棒を企んでいるってことで追いかけてたけど、爆破ぁ?
もっと前の段階でこの紙を見つけていても、鼻で笑って終わりにしていたかもしれない。流れてきた盗賊ごときが何を大それたことをいっているんだ、って。
だけど、僕の頭にはあの厄介な煙が噴き出す光景が残っている。
僕とグスタフに続いて、ラセツもしてやられた魔法道具。視界を通さないのはもちろん、魔力すら遮断するから、解析のレテラが使える僕や魔力的な嗅覚を備えるラセツからも逃げおおせている。
あれが妨害のレテラを付加した水属性レテラの霧とかだったら、消滅で対応できるんだけど……。魔法道具としてどういう理論をもとにした構造なのか見当もついてないから、対応のしようもない。特に逃げに徹して使われているから、なおさらだ。
あれはおそらく古代の魔法道具で、どこかのダンジョンとかで見つけたものだろう。盗賊団ごときが金に物をいわせて買ったとは考えられない。
そうなると何が怖いかって、あれ以外の魔法道具を持っている可能性だ。
あの煙玉でも貴重なものではあるんだろうし、今回の襲撃で使われなかったってことは、僕らを攻撃できるようなものはほぼ持っていないんだろう。少なくとも下っ端は……、もしあるならさっき使っていたはず。
とりあえず、攻撃のための古代魔法道具については、この紙にあった奴らの奥の手であろうこれだけと想定しておいていいだろうね。
エクスプローシブジェム。それが正式名称かはわからないけど、奴らはそう呼んでいるようだ。どこで手に入れて、どうやって使い方まで知ったのか不思議だけど、ヴァイスの一部を焼き尽くすくらいの威力はあると書かれている。
もしかしたらだけど、さっき逃がした奴あたりが古代語を読めるのかもしれない。あるいは、僕が過去にいったときみたいに、条件を満たせば情報を流し込まれる石碑を見つけたのか。
どちらにしても、奴らがそう確信しているみたいだから、こっちもそういうつもりで対応するしかない。エクスプローシブジェムとやらを取り上げて、ただのガラクタだったら馬鹿に付き合ってしまったと笑えばいい。
それよりも甘く見て本当にそんな大爆発を街中で起こされでもしたら……だ。それに自分や仲間が巻き込まれる恐れもあるし、ここまで首を突っ込んでおいてみすみす事件を許したヤマキ一家は裏社会での名声を落とすだろう。
裏で名を汚されるってことは、次にその座を狙っている連中から一斉に攻撃されるってことだ。その結果ヤマキ一家が生き残るかどうかは知らないけど、少なくとも大打撃を受ける。そしてその上部組織であるパラディファミリーも無視できないから間違いなく動く。
その場合、もし生き残っていてもヤマキとその腹心は凄惨な制裁を受けるんだろうけど、相談役である僕も無傷とはいかないだろう。
……というか、パラディファミリーが動くってことは、つまりあのドン・パラディがってことだ。あの狂人なら僕にとって最高に嫌なことを思いついて実行してくるだろうし、何よりアレに頭を下げなきゃいけない状況ってのが嫌すぎる。
うぅん……、損耗した盗賊団ごときが騒ぎを起こそうとしているのを黙らせよう、くらいだったのに……。こんな厄介な計画書を見つけてしまった以上、とっとと制圧しに動かないといけないな。
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