第101話
「……む」
怪しい倉庫を眺めていると、グスタフが何かに気付いて小さな声を出した。
ああ、デカい斧を持った髭もじゃの男がこっちを見ているのか。
いや、むさ苦しい風貌のあの中年男が倉庫前で何やら訓練みたいなことをしているのは見えていた。だけど一心不乱にやっていたものだから、気にしていなかったんだよね。
それがいつの間にか大斧を振るのを止めて、じっと僕らを――というかグスタフを――見ていた。
そしてグスタフが無言のまま歩きだそうとする。なんというか、何か通じ合うものでもあったのかな……? そう考えて見てみれば、あの髭もじゃ中年男は汚い盗賊っていうよりは、山中で修行する武人、みたいな雰囲気もなくはないかもしれない。
あー、っとなると……。
「ラセツは裏にまわって適当な場所から入ってきてくれる?」
「逃げ場を塞ぎつつ鏖殺じゃな?」
「うん、情報の確保は……まあ、こっちで考えるからそれでいいよ」
解析のレテラの副次効果でよめる気配からすると、倉庫の入り口付近――つまりはこっちに近い側――にもそれなりの人数がいるようだ。あの髭もじゃとの戦闘が始まればそいつらが出てくるだろうから、僕の方で適当に捕まえておけばいいだろう。
「あれは俺がやってしまっていいんだろう?」
僕が追いかけ始めると、グスタフが背中越しに何かのフラグみたいなことを聞いてくる。そこに突っ込んでも間違いなく不思議そうな表情をされるだけだから、置いておくとして……。
「もちろん」
そしてそう答えている間に、当の髭もじゃは建物に向かって何かを怒鳴ってから、大斧を肩に担いで待ち構える態勢だ。
戦闘が始まるまでもなく、五人ほどが建物から出てくる。感知していた内の半分くらいしか出てこなかったし、出てきた奴らは奴らであくびをしていたり、武器すら持っていないのもいたりで、明らかに舐めてかかってきているように見える。
ふぅむ……、こんな場所を確保していることから抜け目ない奴がいるのかと考えていたけど……、そいつは今ここにはいないってことなのかな。まあそれも含めて、誰かから聞き出すなり、何かまた紙切れでも見つけるなりすればいいか。
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