悪役生活の始動・入学編
第16話
「もうすぐ十五歳、か」
辿り着いた巨大都市を見据えて、思わず呟いた。
「ああ、そして俺たちもようやくヴァイシャル学園の生徒だ」
横に並ぶグスタフの顔を見上げると、なにやら感慨深いという表情をしている。……そう、見上げる、だ。この四年ほどで、グスタフは僕が“知っていた”通りに見上げるような大男へと成長していた。
僕も十四歳にしては長身なんだけど、やや細身なこともあって別に大きくは見えない。一方で相棒のグスタフはというと、二メートル近い身長にがっしりとした肩幅、脚も腕も太くて魔獣ゴーレムみたいに厳つい。
自分の事も『俺』なんて呼ぶようになって、質実剛健なシェイザ家の子弟らしい雰囲気だけど……中身は変わっていない。僕とグスタフの左目の上に傷跡ができたあの日以来、互いに信頼する相棒だ。
ちなみに、グスタフが僕に本当に親しみを持ってくれるようになったというだけでなく、僕の方も今ではグスタフを心底から信用している。だからこそ、僕の秘密を明かした二人のうちの一人でもある。秘密っていうのは、もちろん前世の記憶とゲーム知識の話だ。
ヴァイシャル学園への入学は十五歳になる歳だというのに、まだ十四歳の僕らがこの学園都市ヴァイスへときているのは、いわずもがな、入学試験を受けるためだ。
まあ僕もグスタフも昨日にはついていて、今は宿を出てようやく落ち着いて街並みをみたところ、であったりする。
試験内容は知識試験と実力試験の二つを受けて、その総合点で合否判定される。要は筆記と実技だ。で、実技の方はわりと柔軟で、剣技や魔法での戦闘能力や、魔法道具作成、魔法薬調合、芸術など事前に申請しておけば大抵のものが通る。戦闘能力の方にしても、実戦的な能力を見て欲しいのか、純粋に剣や魔法の技能を見て欲しいのかというところまでも指定可能となっている。
十歳の時に“思い出した”通り、グスタフは普通にやっても問題なく合格するはず。知識面はまあ問題ないし、剣のシェイザ家の名は伊達ではない。
不安なのはむしろ僕の方で、ゲーム『学園都市ヴァイス』での『アル・コレオ』は不正を疑われて悪い噂が流れるほどのぎりぎり合格。悪役としての魔法の実力も、入学後に頭角を現したものだ。
まあ、今の“僕”に不安はないんだけどね。知識は頑張って勉強してきたから十分だとあの厳しいコンシレにも保証されたくらいだし、技能中心の魔法で申請した実力試験は……まあ楽しみだ、とだけ言っておこう。
ちなみにグスタフの実力試験は実戦よりの剣技。ゲームではムービー演出だった迫力ある模擬戦闘を間近で見られるのが今から楽しみだな。
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