機能的ぐちゃぐちゃ

最時

第1話 異質なデスク

 昼休み、別部署のツバサのデスクへ向かう。

 机上は書類や文房具が散乱しており、周りとは明らかに違う異質なデスクがあった。

「はあ~」

「マナどうしたの。来るなりそんなため息吐いて」

「相変わらずぐちゃぐちゃだなって」

「ぐちゃぐちゃとはなかなかな言われようだね」

「言われようも何も誰が見てもそう思うわよ」

「マナじゃまだわからないかな。うちの部署じゃこのデスクを見て何か言う人は誰もいないよ」

「ただ単に諦めているだけでしょ」

「いやいや。みんなこの機能的な配置を理解しているんだよ」

「・・・ どこが機能的なの」

「例えばこの書類。ファイルから取り出したりとか無駄な作業を省いてワンアクションで取り出せる」

 机に散乱した書類を手に取って得意げに言うツバサ。

「へー。この状態でもどこに何の書類があるかわかっている訳ね。だけど最近ほとんどの書類はペーパーレスなのに何でこんなに紙があるの」

「比べてみたいときは紙が便利だしね」

「確かにそうかも知れないけど、印刷するならその後ちゃんと整理しないと」

「整理整頓なんか初心者のすることなんだよ」

 ムキになって声の大きくなるツバサ。

「・・・ ツバサは上級者な訳ね」

「そうだよ。まず整理整頓する時間がかかるし、ファイルとかもただじゃないし。取り出すのにも時間がかかるし、非効率の象徴みたいなものだね。だけど初心者はそれをしないと物の位置が把握できないんでしょ」

「・・・ そうですね。失礼いたしました」 

「わかれば良いよ」

「ところで先週貸したペンを返してほしいんだけど」

「ああ。あれっ。確かここに・・・」

 書類をかき分けて、やはりぐちゃぐちゃの引き出しの中をかき混ぜる。

「ゴメン。探して持って行くから」

「はあ~」

 マナはより大きなため息をついて眼を細めてツバサを見る。

「ダメな子を見る親のまなざしやめて。傷つくから」

「ツバサ。整理整頓しなさい」

「・・・ はい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

機能的ぐちゃぐちゃ 最時 @ryggdrasil

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ