第2話

 部長が、疲れてる。


 同じ課の津田さんは母親と同じ年らしいけど、割と自由な人だと思う。私が薦めた「ゆうせか」の今までの動画をほとんど見たって…ドはまりし過ぎてて衝撃的。

 そんな津田さんが、さっきから部長のことをチラチラ見ているんだけど…仕事しましょうよー。


 でも、まあ、気になるよね、今日の部長は疲れてる。

「腕が筋肉痛でさぁ…アハハッ」

 その言葉に津田さんが反応したのに私も釣られて部長を見ちゃう。何したんですか、部長?

 津田さんは激しくうなずき口を押さえているし、何?いったい何なの?


 トイレを出たら待ち構えていたような津田さんに声をかけられ、屋上に連れていかれた。

「何かあったんですか?」

「…私見たのよ、昨日ライブ配信でブッコローが…」

「ブックローって、ゆうせかの?ハマってますねー」

「ブックローじゃなくてブッコローね、でね、今度発売される本に」

「え?本が出るんですか?すごー」

「ね!私買いましたよ!もうすぐ届くんですー♪」

「わあー、また見せて下さいねー。」

「はーい。…で何を言おうとしたんだっけ」

 知りませんよ…。

「本が出た、って言ってませんでした?」

「あー!そうそう、でね、その本にブッコローがサインをしていくのよ!」

「えー!それ欲しいー。え、その動画は見逃したなぁ」

「面白いから、長いけど全編見て!」

「了解です!…で、話ってそれですか?」

「…あ、そうなんだけど、そうじゃないって言うか…部長が…」


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