社外秘:あの人は中の人だけどホントは外の人らしい。

つくもあきお

第1話

 部長が、おかしい。


 事の発端は、佐藤主任がうちの映像コンテンツのお手本として、「ゆうせか」とかいうチャンネルの名前を出した、金曜日のミーティングだった。

「マジで面白いんですって!うちもこーゆーの作りましょう!」

「作るんはええけど誰がするん?」

「部長に決まってるでしょう!」

「ええけど、これ…なあ」

 ノリノリの主任に圧されて大林部長はいつになくゴニョゴニョしている。部長はデキる人だが表に出すコンテンツには出たがらない。それは分かっているが、それにしても妙な渋り方だ。それでも、娘ほど年の離れた主任のひと声

「これでアクセス数が増えますから!」

 で、覚悟を決めたらしい。スタジオに下りていった。


 そして数分後。


「はい、どーも!今日はアプリ担当の津田と、」

「担当の佐藤です。そして、」

「☆※ハイドーモー、Oでーす¥§*☆」

 ミキサーのエフェクトをいじくって「ゆうせか」のブッコローをオマージュした、というより…まんまパクった声でしゃべり倒す部長がいた。


「部長!最高です!!これでいきましょう!」

 主任はあまりに理想そのままの収録が出来てテンションがやたらと高くなっている。私や自分の視線が不自然だから、とブッコロー代わりに置いた部長の似顔絵の配置を見直したりしている。シリーズ化に向けてやる気充分すぎるくらいだ。

 部長は「やり過ぎたかなぁ…」とブツブツ言いながら編集作業をしている。

 手持ち無沙汰になった私は「ゆうせか」を何本か観てみることにした。

「…!これは…。」





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