ぐちゃぐちゃ節

Shiromfly

民謡「ぐちゃぐちゃ節」(1972年収録)唄:升原敏夫

(ハァーヨイショ)


 雨降り過ぎて 川溢れ

 泥に塗れて はたしごと


 泣いちゃあ あかん 泣いちゃあかん


 ぐちゃぐちゃ ぐっちゃ ぐっちゃぐちゃ

 丘に草燃ゆ エー ホイホホイ(春)

 海にうお跳ね モー エイエイ (夏)


 村を出るときゃ 涙は要らぬ

 おらが村には 灯りが足らぬ


 あの娘にゃ似合わぬ 恋雨こいさめ


 ニャー バンバン キエー

 猫が盛りゃあ (ピー)も立つ


 ※囃子はやし以下同じ


 ぐちゃぐちゃ ぐっちゃ ぐっちゃぐちゃ

 原に花咲く ダー ニュンニュン (秋)

 山に雪む アー ヤヤヤイ (冬)


 くにに帰らぬ つもりで乗った

 汽車は真っ黒 煙を吐いた


 あの娘に伝えた 恋文ヨ


 ヒャー ブンブン ボエー

 妻が怒りゃあ つのも立つ


 月時雨つきしぐれ オンザスカイ

 

 誰が歌った 村祭り


 ヨォー オ オ オ オ (鬼) ああ 鬼だ鬼

 ヨォー 鬼が来るぞ 逃げろ 逃げて俺のぶんまで生きろ

 

 俺が時間を稼ぐから マジで



※脚注


 K県の某村に伝わるという民謡を、民俗学の研究者が録音したもの。

 とある大学の資料室の大掃除ついでに発見されたテープを、現在の技術で復元してみた。

 

 以下は一緒に収められていた研究者の手記に基づく私見である。


 この歌は、村の中で唯一、升原敏夫氏だけが歌えるものだったとのことだが、独特の方言の訛りが激しい上、録音機材の性能も充分ではなかったことで、途中、ところどころ正確な歌詞が不明瞭なものになっている。


 全く違う歌詞である可能性もあるが、研究者がそう聞こえたと断じている以上、信じるほかない。


 なお( )内は、升原氏の奥様による合いの手と思われる。


 恐らく、大元は大雨による河川の氾濫で壊滅した畑の復旧を祈祷した祭りに原型があると考えらえる。だが、伝承が続く間に、様々なアレンジが加わった末、様々な時代の世相を反映した、独特の民謡として完成したのだ。


 升原氏を始めとした関係者は全員他界しており、この録音について語れる者は、もう、居ない。


 そうやって失われていってしまう文化や伝統を、私たちは、大事にしなければならないのだ。

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