ぐちゃぐちゃ倶楽部

水乃 素直

ぐちゃぐちゃ倶楽部


 学校にある「混とん室」には、整えられた物事をぐちゃぐちゃにする、ぐちゃぐちゃ混沌倶楽部がありました。

 私は、この部員として活動しています。

 ぐちゃぐちゃクラブは、毎日活動していませんが、キツネのお面をした部長から「毎週、月、冥、プルートの曜日には参加しましょうね」と言われているので、週2日活動することになっています。

 そんな部長は、今「空売りして株式を操作するためには、とりあえず筋トレだ!」と叫び、2週間ほど山でキャンプに行きました。

 まぁ、彼女には、見えないところでボディーガードが付いているので、大体は安心なのですが。


 私は、今日は何を混沌にしようか、考えていました。

「ぐちゃぐちゃ倶楽部」の名前を「こんとん倶楽部」にしようかな、と考えていたところで、副部長が活動の挨拶を始めました。

 挨拶をする理由は「初めと終わりを決めないと、無秩序が広がるだけであり、良くない」ということらしいのです。

 副部長は少し賢い人なので、たまに何を言っているかわかりません。

「えー、自由が大事なのです。無駄なものにこそ意味が宿ります。選択と集中は、文化を滅ぼすのです」

 大仰に言っていました。

 私が突っ込みました。

「要は、廃部の危機なんですよね」

 副部長の鋭い目が光ります。

「い、いきなり本音を言えば楽しくないです。ぐちゃぐちゃしたものの先に楽しみがあります」

「いやでも、3人しか居ないんじゃ部活にならないですよ、副部長」

「そ、そんなことは、形而上学的な論点からずれます」

 可愛いアホポンコツな先輩の形而上学的なものをぐちゃぐちゃにしたので、今日のグチャグチャ混沌クラブの活動報告は、このあたりで締めていいと思いました。おしまい。


 その時、部室の扉が開き、闊達とした声が響きました。

「おー! 戻ったぞ! 諸君!」

「部長様! お疲れ様でございます!」

「あ、部長! お久しぶりです」

 キツネのお面をした先輩が帰ってきたのです。まさに混沌部の部長でした。

 部長はすかさず言いました。

「何がぐちゃぐちゃって、すでに今がそのもの」

「ほう」

 私が相槌を打ちましたところ、部長は、泥団子を掲げ、

「光る前に、すでに光っていて欲しいよな!」

 と言いました。

 今日は泥団子で遊ぶそうです。

 何をぐちゃぐちゃにしたことにするんだろう、と3人で遊びながら、私は一人で、今回の報告の見出しを考えていました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ぐちゃぐちゃ倶楽部 水乃 素直 @shinkulock

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ