2023.5.8 将来への悲観?

 発達障害のある息子に、感情が爆発するような怒りっぽさやパニック、他害があるとだね。


 自殺を心配するのと同じぐらい、将来、その怒りのコントロールのできなさで、犯罪者になってしまうのではないか、取り返しのつかない事をして、周りも本人も苦しむのではないか、その時私はまだ生きていて、支えてあげられるのだろうか、と心配になる。


 これを言うと、

「お子さんを信じてあげて」

「あなたが信じてあげなくてどうするの?」

 と言ってくる人もいるかもしれない(過去にいた)


 信じている、というか、わかってはいるんだよ。息子がとても、人一倍優しい心を持っていることは、私が一番知っている。


 ただ、こちらが望むことを勝手に信じて、必要な手助けをしないのなら、そんなのただの勝手な期待と放置なんだ。


 心は体と繋がっていて、怒りっぽさも集中力のなさも、暴れるのも、性格のせいだと思われる。


 どんなに頑張って操作しようとしてもスムーズには動かない車に乗り、途方に暮れている、優しい息子を私は見ている。


 ここを押せばいいんだよ、という普通の車のアドバイスを聞いてその通りにしても、同じ事が起こらない車に乗って、どうして他の人と同じにできないんだろう、とイラつく息子を見ている。


 ブレーキのきかない車に乗り、坂道を転げるように暴走して、その中でパニクって泣いている息子を見ている。


「私なら、それと同じ車に乗っていても、上手く運転するし、暴走もしないよ。心がけがあるから」と言えるだろうか?

 私は、とてもじゃないが、そんなことは言えない。そんな自信はない。


 暴走して大声をあげながら、他の子を(周りから見れば)理不尽な怒りでポカポカ叩いてしまった息子。

 彼は、学校で飼っている孔雀を、かわいそうだからどうにかして自由に檻の内外を行き来できるように穴を作ってあげたいと訴える息子である。

 他の子がいじめられている、と思えば、相手が大人であろうと止めに行く、友達を守りに行く子である。(自分はパニクると危険人物になるのにだ)


 ブレーキが効かない。


 それが、「ほんとうは根が優しいんです」で全て許されるはずもない。


 叱らざるを得ないような状況でも、内心では「この子も困ってるんだよな」というのはわかっているが、ただただ将来を案じてしまう。


 定型発達の子を持つ親の何倍も考え、周りに相談し、色々試して、それでも、「ちゃんとしつけをしていない」と思われる、ただ謝るしかない、そういう世界に私はいる。説明しなければ誤解されたままだが、説明したところで迷惑をかけていることは変わらないし、言い訳しているだけになる。


 私はまだ、息子への愛情によるワンクッションがあるのだが、息子本人は、成長するにつれ、辛いだろうと思う。本人はダイレクトに自分を責めるようになってしまう。


 ブレーキの無い車を安全に自分の力で止められるように、定型発達の子供の何百倍も苦労して工夫して悩んで頑張って、それでもなかなか上手くいかず、「ぼくは悪いことしちゃったんだ。先生のものを壊しちゃったんだ(学校のiPadを投げて画面が割れた)。死んだ方がいい?」と言ってくるような世界に息子もいる。


 自分の行動を全て障害のせいにするような人間に育てたくはない。親にも本人にも、できることはあるし、問題行動は軽減していける。が、「障害がない人の数十倍の反省をし、精神力を使っても、自分をコントロールできない」という状況もまた真理で。自分の全部を「自分のせい」「自分がいけない」と受け止め感じてしまいすぎる生き方では、おそらくこの子は生きてはいられない。

 

 それでも、人に迷惑がかかる。

 根が優しいから許されるのかと言われたら、一歩間違えば人が怪我するようなことは、許されるものではない。


 だけど、心の奥底では、彼がものすごく難しい課題に取り組んでいるのだと、わかっている。


 なんとかしてあげたい。


 わかってるんだよ、息子が優しくて、素敵な心を持ってるのは、わかってるんだって。

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