第2話 人生に大切なことはトリとの合コンで学んだ…
「へ~、文具とかお詳しいんですか。意外!」
「そうそう、一応仕事でいろいろ使ったりするんでねッ」
合コンは意外なことに盛り上がって楽しかった。
ただし、合コンとして盛り上がるというよりも文房具とか本のトークで盛り上がるという感じだった。
最初の会話は、「どんなお仕事をしているんですか?」なんて堅苦しいものだったが、私のすぐ近くに座っていた鳥は有隣堂と角川に勤務しているということだった。どちらも聞いたことのある企業名で「すごい……」といったら、有隣堂勤務のブッコローさんはまんざらでもない顔をした。角川の鳥さんはほほ笑んでいるのかどうかあいまいな無表情を続けていた。
だけれど、楽しい。
普通の合コンなら彼氏を探す目的でギスギスしたものになるが、鳥が相手となると可能性はゼロだ。ただ純粋に昔からの友達と話すような心からリラックスできる感じがした。
そして、お酒も回っているから鳥の前で焼き鳥を食べることも気にならなくなった。
「そうそう、やっぱその部位が一番動かすから、筋肉質でしっかり栄養があるんですよ」
私が焼き鳥をほおばっていると、角川勤務のトリさんは冗談なのか本気なのか分からない一言メモを教えてくれる。
「そうそう、有隣堂のレストランもフライドチキンが美味しいんですっ。おススメです!」
さすがにその一言にちょっとだけ怖くなって私は話題を反らす。
「ほかの参加者の方、いらっしゃらないんですね……」
「ああ、鳥限定合コンって名前にしているけど、いつも参加する人はいないのですよ。参加者は貴方と有隣堂さんのブッコローさん、そして私だけなんですよ」
「そうそう、合コンやりたいねーッなんていいつつ、恒例の異業種交流というなのただの二人でやる飲み会みたいなものになってるんですわーッ。まさか、本当に参加したいという女性が現れるなんて。YouTubeの番組のドッキリかとおもってたんです…」
ああ、そうなのね。
やっぱり、鳥限定合コンなんて申し込む人なんていないよね。
だけれど、お酒が入った私はもう開き直って自分の合コンの失敗について話し出した。
二人、いや、二羽はさっきまでの盛り上がりとは真逆の、真剣に静かに聞いてくれた。
そして、一通り私が話し終えると、
「まあ、人それぞれ色んな生き方がありますよね」
と角川のトリさんは静かに慰めるようにいって、お酒を注文してくれた。
「お姉さん、それじゃ駄目ですねェ…もっと自分らしさを出していくべきですっ」
ブッコローさんはきっぱりと言って追加の焼き鳥を注文された。
気が付くと座敷席ではなく、カウンターで三人並ぶようにして座り、焼き鳥が焼けるのを眺めていた。
あれっ、私、今もしかして両側から口説かれている?
乙女ゲームで言えば、クールな物静か系イケメンと、やんちゃ系のお兄さんに挟まれている!?
もしかして、私って今モテキ??
二人とも有名企業に勤務しているし、結婚相手としてはいいかもしれない。
鳥だけど。
二人とも、話も面白いし、ずっとまともだ。
これが、私にとって人生で最初で最後の合コンで楽しかった思い出となった。
それから、私は合コンに行くことも、婚活をすることもなくなったのだ。
今はもう、一人じゃない。
一人じゃない毎日ってたのしい。
私はあの合コンのあと、ずっとやりたかったことを始めたのだ。
そう、ペットと暮らす生活。
一緒に暮らすぴいちゃんは今日も可愛らしいくちばしをでご飯をついばむ。
ぴいちゃんは可愛い。
なによりも愛しくて、私にとって恋人にも等しい。
私はぴいちゃんが幸せそうに過ごす姿をみながら、合コンとか恋愛とか以外にも人生には大切なことがあるんだよねとかみしめながら、静かにペンをとった。
まだ、自分の思ったことをこうやってペンでノートにしたためるだけだけど、書き溜めたらいつかあのトリさんが言っていたカクヨムに小説をなにか投稿できるようにればいいなと思っている。
合コンに行ったら、鳥の彼女になりました 華川とうふ @hayakawa5
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