合コンに行ったら、鳥の彼女になりました

華川とうふ

第1話 合コンに行ったら鳥がいた

 合コンが好きじゃない。

 毎回合コンの思い出がない。


 初めて合コンに行ったのは高校生の頃だった。

 合コンといっても、男女で集まってカラオケにいくなんてそんなお遊び。

 女子高だったから、みんなそういうキラキラしたものに憧れていた。

 合コンで出会って、手をつないで、デートして、文化祭に来てもらって……そして、キス。

 そんな甘くて淡い青春の一ページに憧れていた。

 だけれど、現実は甘くない。

 漫画みたいにとんとん拍子にいくのは選ばれし、美男美女とか陽キャに限るのだ。

 ただ、普通の女の子には漫画における地味だけどささやかな恋愛なんていうものが存在しないことが、その合コンでわかった。

 地味同士なかよくなんてことはなく、男たちは一番可愛い女の子に群がり、一番ノリのいい子が男子のメアドをゲットした。


 大学デビューしても私の合コンは惨敗であった。

 サークルに入らなかった私には出会いがない。

 出会いがないので積極的に出会いの場に行こうと、色んな人に合コンに誘ってほしいとお願いした。

 同じ授業をとる女の子やゼミ、バイト先など。

 色んな人にお願いしたから、様々な経歴の人達と出会うことができた。

 だけれど、誰とも付き合うことがなかった。

 男子ばかりのオタサーにでも入って姫になるほうがよっぽど恋愛勝者になれると気づいたのは就活を目前にした3年生も終わりのころのことだった。


 社会人になってからも合コンに行った。

 そこでは幸せになれるツボを売ってくれる人。

 健康になれる水の営業をしている人。

 結婚指輪をしているのに彼女募集中の人。

 など、さまざまな人がいて私の人生において大事なことを教えてくれた。

 人生で大切なことは合コンが教えてくれたといいたいところだけれど。

 あいにく分かったことと言えば世の中にはまともな人間がいないということと、サラだの取り分けは不要だということくらいだ。

 よく合コンで気が利く子がサラダを取り分ける描写があるけれど、そもそもほとんどの男はサラダなんて食べない、野菜なんて嫌いなのである。


 そこで今日わたしが申し込んだのは、鳥限定合コンであった。

 インターネットで申し込んだ。

 合コンにまともな人がいないのは分かっているのだから、別に人じゃなくてもいいし、インターネットで出会うことにも抵抗がなくなっていた。

 友達の知り合いの変な人よりも、全く知らない人のほうが簡単に連絡を切れるというメリットもあるし。


 それに動物が好きという人に、変な人はいても悪人はいない。

 だめでもともと……そんな気持ちで私は合コンに参加した。


 なんて、きっと自虐的な人がくるに違いない。


 私は合コンに相応しくない、煙がもわもわと漏れ出ている焼き鳥屋の暖簾をくぐった。

 この合コンのために店を一軒貸し切りにしていると聞いたが、いかにもぼろくて玄人の一人のみの人間が好みそうな店だった。


 そして、扉を開けるとそこには……ミミズクとフクロウっぽいなにかがいた。



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