複製体だよ♪

羽鳥 雲

完結済み

ある世界のとある日そこでは人体実験が行われていた。それは科学の進歩のためであり、戦争で勝つためでもあった。しかし......

 

――実験体七号 緊急事態により複製します

複製失敗 修復 失敗 修復 失敗......

エラーエラー エラーエラー 自立プログラムを失います 直ちに修復してください

----------------------------------------------------------

また違う世界でのこと......

「国王様、準備が完了いたしました!いかがされますか?」

「うむ、今すぐ起動しろ。代表国に選ばれた以上一刻も早く魔王を討伐するのだ!!」

「「「ははっ」」」

そこでは世界を侵略しに来た魔王を倒すため、代表国が転移の儀式を行っていた。

「報告いたします、魔力の流れや術式はすべて良好,順調です」

「そうか、ご苦労であった。下がれ」

この国の国王、アメンは平静を保ちつつも内心わくわくしていた。国王なので厳格なのか......と思いきや子供のころは童話にあこがれ部屋を何度も抜け出していたわんぱく少年であった。そしてそれは大人になった今でもその心は抱いており......

「国王様!魔法陣が光り始めました!転移が成功したようです」

「そうか、今行く」

そう言ってアメンは今回の勇者に会いに謁見の間へと出向くのだった。

----------------------------------------------------------

「国王様大変です!魔法陣の奥に大量の生命体がいます」

「なに?前例は...」

アメンがそう言うと部下たちが書物を持ってきて探し出すしかし、前例はなく......

「前例がありません...」

「国王様、魔法陣を任されたもの達が倒れました魔力不足です、人員を!」

前例がないどころかこの国は他と比べて小さい国、人員が足りていないのだ。そして、部下たちの不満は募っていくばかり......

「国王様、事が大きくなる前に打開策を......」

「あぁ、わかっている......仕方がない、冒険者協会に要請を出せ、報酬は弾むから魔法使いを呼べと。今すぐにだ」

「いい......のですか?」

本来であれば国から要請を頼むこはほとんどない、さらに転移召喚で要請をする前例などなく名誉に関わることなのだ。

「やむを得ん、最悪の場合の魔法陣が暴走する前に対処せねばならん」

「「「了解いたしました」」」

----------------------------------------------------------

「要請に応じ参りました。私、冒険者ランクBのヒナです。今回の代表を務めさせていただきます。では、今回依頼を受けた総人数は30人ほどですがどうすればよろしいでしょうか?」

「あぁ、助かるでは早速だが魔力切れのないようにあそこにある魔方陣に魔力を入れてくれ」

「魔力、ですか...?」

少し警戒をするヒナ...それもそのはずこの世に魔力をそのまま使うことなどそうないのだから。この世界では魔力を無の状態で使うことなどなく、すべて属性による魔力に変換して使用していた。

「あぁ、要請にもあった通りとにかく緊急事態なんだ頼む」

「ああ、一度受けた依頼はそう破棄しないさ......総員魔方陣付近へ!やれっ!!」

ヒナの掛け声と同時に冒険者の魔法使いたちが魔力を魔方陣へ込めていく...

そして、魔方陣の光はさらに強くなり視界が埋め尽くされた。

「総員,安全確保の確認をしろ、繰り返す総員,安全確保の確認だ」

冒険者たちはいっせいに距離を取り、光で視界を取られながらも状況確認のため光を見つめた。そして光はだんだんとおさまっていき......

----------------------------------------------------------

そこには6人の人間?がいた。どいつも外見的に多少のけがをしており、瀕死の状態であった。

「い、依頼主殿...これは、転移魔法では......?」

「...よくわかったな。だがこれも依頼だ、秘密主義で頼むぞ」

「了解した、その辺は安心してくれ。こちらもプロなのでな」

「う...」

このとき転移者の一人が言葉を発した。

「!!...よくぞ参られた勇者方、あなたにはこの大陸にいる魔王を倒していただきたい」

お決まりのセリフを言うも返答がないことに気づき

「どうしたのだ勇者殿...?」

「か、いふくを...」

そう言うと勇者は倒れ、光の塵となって消えた。

「「「......は?」」」

アメンもその部下たちも戸惑いの目を浮かべる。

「何が起きたのだ......?」

「勇者が消え...た?」

「いや、でも後の5人は...」

「これは...?」

しかしさすが冒険者というべきか

「総員落ち着け、依頼主の言葉を待つのだ。お願いします」

「あ、あぁ...わが部下たちよ、残りの勇者だけでもステータスの鑑定を急げ」

「「「はっ」」」

----------------------------------------------------------

 ~二日後~

謁見の間にて国王とその部下とあの日居合わせた冒険者、そして勇者がそろっていた。

「あー...ではこの度はお集まりいただき感謝する。早速ではあるが勇者たちに自己紹介を頼みたいんだが......」

それに勇者が答える。

「私たちは化学が発展していた国から来た。私たち5に...4人はそこにいるオリジナルの複製体である」

国王たちは彼らから別の国から来たこと,元の世界に帰る意思はないから安心してほしいということ,魔王を倒すことに異論はないからその後の衣食住が欲しいことなどを聞いた。そして魔王を倒してくれるならと国王はもちろんその条件をのんだ。

「次にその転移時に獲得するスキルなんだが...これが何かわかるかね?」

これ...国王がさしたのは実対複蘇生じったいふくそせい、それはオリジナルが死んだときに複製体が身代わりとなりオリジナルは全快する、というものだった。転移後に1人死んだのはそいつが死にそうだったのではなくオリジナルが死にそうだったのではないか、というのが国王の考えだった。

「国王様、俺がオリジナル-いつきだよろしく。俺たちの国ではさっきも言った通り科学が発達していた。しかし、それは戦争に使われるものだった。だから俺の複製体は絶対に死なない、断言する」

だから国王の考えが合っているといつきは肯定した。

「それともう一つ、転生の影響で複製体たちは自我を持っている。だからから俺と同じ対応をしてほしい」

「わかった、我が国とその他諸国は魔王討伐を目標に全面的に支援することを誓おう」

こうして魔王討伐に向けて準備を整えていくのであった。

----------------------------------------------------------

 ~一週間後~

「よっす~」

「おはよう」

「......」

「おはようございます」

「あ、あぁ...おはよう」

準備開始から一週間が過ぎたころいつきと複製体たちはなじんでいたが国王はまだ戸惑いつつ毎日を過ごしていた。それはいつきたちの戦闘能力が高すぎたからである。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ~数日前~

「私はこの国の騎士団体長だ。今日から戦闘の基本を教えることになったよろしく頼む......む?5人いると聞いていたが1人しかいないじゃないか」

「それはですね...さぼりました」

「は?いやいや、世界の危機なのだぞ⁉」

「さぼりました^ ^」

なんと複製体たちは自我を持っているとはいえ練習に顔を出さなかったのだ。

「仕方がない、ではあなただけで稽古をつけさせていただきます」

「本気でお願いします」

「了解しました」

次の瞬間いつきに剣が刺さる、そしていつきが倒れた......と思いきやスキルの効果によりいつきが立ち上がる。しかし

「え......おれがころ、した...?こ、こ、こくおうさまああああああ」

「なに叫んでるんですか?」

騎士団長は勘違いしたようで自分が殺してしまったと勘違いしていた。

その後騎士団長は世界で5本指に入る実力者だということが判明、しかし複製体に対戦を試させたところ複製体が圧勝、もう討伐に行ける準備が整ってしまったということであった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「と、いうことで...討伐に我も連れてって!」

「は?......」

「だって、だって一応国王だから国王らしく振舞ってきたのに...せっかくのチャンス、逃すわけにはいかないんだから!!」

「「「国王様......」」」

「ええい、我は勇者たちと話すのじゃー部下どもはこの部屋から出ていけー」

「......」

「破壊力すげえな、部下たちドン引きして全員出て行ったぞ。んで、これが本心なわけじゃないですよね?」

「ん?何を言っておる、これは本心に決まっておるじゃろう。ということで、連れてって、連れてって、連れてって、連れてって、連れてって......」

「おい、国王様が駄々こね始めたけどどうすればいい?」

「そんなの俺に言われても困るよ」

「だって、俺たち~もともと戦闘のために作られたんだから~」

「...オリジナル......なんとかしろ」

「はぁ、連れてけばいいんでしょ」

「マジで連れて行ってくれるのか?いつき大好き~えへへへh」

「「「......」」」

----------------------------------------------------------

そうして俺-いつきは国王を連れ魔王を倒しに行くことになった。

(ナレーションどっか行ったんだけど...こんなんじゃ収集つかねぇしぐちゃぐちゃだな......)

「道中にいる魔物はすべて複製体に任しているからな、お前は冒険気分を楽しんでくれ。仮にも国王なんだから魔物に突っ込むなよ」

「え......お前って我の扱いひどくない?仮にもでも国王なんだよ??わし......」

(そりゃあ、見た目50越えのおっさんがあんなんなってたら国王だろうが引くしこうなる...自業自得だな......)

----------------------------------------------------------

「魔王城ついたぞー!」

「俺らのおかげだぞ~」

「はよしろ」

「冷たいなお前ら...進むか......え?“ワープ石、魔王の間までひとっとび♪”......は?」

「よし、使ってみるか...」

「おいまて国王...あちょ......」

「無事飛べたみたいでよかったじゃ~ん」

「結果論......」

「そうだ、結果論だ結果論だ!」

お前ら魔王の間までせっかく来たのに緊張感ない奴だな

「!!」

「どうしたオリジナル、魔王目前にいるぞつぶしていいか?」

ちょっとまってまった...お前らにも聞こえるようにするから

----------------------------------------------------------

「へ~、つまりお前はナレーションをやってた魔王ってことで情報収集をしていたのかな~?」

ふん、お前らに関する情報はすでに集まっている。オリジナルが弱いということをなぁw。死ね!

「あの、ばかなんですか?」

あ?

「いや、あなたがいなくなった時から複製体が戦闘してたので複製体の戦闘記録がないということをお気づきで?」

......あ。

「複製体、やれ^ ^」

ぐああああぁぁ、みごと!勇者お前に褒美を授けよう。

「は?」

魔王の体がはじけ中から死んだ複製体たちと7体目の複製体が出てきた。(ナレーションちゃんとやるのな......)

「7体目...?」

そう、7体目......これからよろしくな、オリジナル!


「しねぇぇえぇぇぇぇぇ!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

複製体だよ♪ 羽鳥 雲 @kumo28

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ