蚯蚓

カフェオレ

蚯蚓

 頭痛を堪えながらベッドから起きるとすでに時刻は十四時を回っていた。

「寝すぎた」

 加奈実かなみはボソッと呟いた。

 誰が見てもそれは明らかな状況だが、声に出して少しでも事態を把握しないことには、頭が回らない。

 幸い今日は土曜日。仕事は休みだから遅刻など気にする必要はない。

 ひと安心して、一人暮らしのゴミ溜めのような部屋を見渡す。

「きったな」

 また呟く。

 頭痛の原因は昨日の飲酒のせいだ。要は二日酔いだ。

 昨晩は同期達で飲み会があったらしい。SNSをパトロールしていたら見つけてしまったのだ。加奈実は呼ばれていない。

 疎外感が酒の勢いを助長したのだろう。例え呼ばれたとしても行くもんか。そう主張するように飲んだ。

 飲み会が嫌いな訳ではない。最初の頃はよく会社の飲み会にも顔を出していたが、だんだんと呼ばれなくなった。彼女にもその理由はなんとなくだが分かっていた。

 人とは違う嗜好、きっとそれだろう。

 酒の席でそれを暴露したのか、それとも実際に披露したのか定かではないが、どっちみち酒による失敗だ。

 いや、失敗ではない。ありのままの私でいて何が悪い!

 どうやら頭が冴えてきたようだ。

 とにかく何か食べようと、加奈実は手近にあったカップ麺の容器を手に取る。このカップの中身は乾麺ではない。市販のものだが、果たして自分以外にこんなものを食べている人間がいるのだろうか。まあいい、美味しいのだから仕方がない。何とでも言えばいいさ。

 加奈実はそんなことを考えながらケトルでお湯を沸かした。

 カップの蓋を開けると、中身が糸を引いていた。

「これこれ」

 加奈実は思わず声に出す。

 ささっと粉末スープを入れる。いい匂いだ。そうする必要はないのだが、味を染み込ませるように中身を混ぜる。

 いよいよ、お湯が沸いた。待ってましたと言わんばかりにケトルを引ったくると、加奈実はカップに熱湯を注ぎ、三分待ってから、美味しく食べた。

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蚯蚓 カフェオレ @cafe443

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