第4話 背広

朝だよーと誰か起こして。


朝食を頼んだふりして食パン齧る。 


コーヒーを飲んだふりして麦茶を飲む。


これが貧乏アパート暮らし!


何時だ、ガラケーの表示。


9:45まずい着替えないと。


急いできがえるーーー。


背広が小さい間違えて持ってきた? 中のネーム俺。


「俺のかー」


終わった、これで学園に行ったらチビTならぬチビセーかよ。


でも行かないとな、また昨日の再現になる。


とりあえず着て、足はくるぶし10cm上上着は手首より10Cm上! 


なんでこうなった一張羅、着替え無し金も無しでも行かないと。


駅から駅にめっちゃみられてる、どうする?


駅から学園に、ますます見られている。


学園の門だ。


このまま入ったらチビセー決定、今いる在校生が、卒業するまで笑い者! 頭抱えてしゃがみ込む。


そこに近づいてくるものなど分かるわけない。


「もしもしどうしました、今日の説明会に来たのよね」


昨日会った眼鏡鋭い整った顔のオネーサン、事務局長だ!


「はいこんにちはです本日はお日柄もよく」と立ち上がる。


「ブハハハハハ、駄目よその格好はヒヒヒヒヒ死ぬ死んでしまう」


めちゃくちゃ笑われている、もしこの格好で中に入ったら俺は。


「ごめんごめんごめん、あまりにもアハハハハハ駄目よ死ぬ」


俺は笑いが止まるまでそのまま立ち尽くしている、また笑い声。


「ちょっと何アハハハハハ待ってお腹がハハハハハハハ」


昨日の先生だ。


俺は動く事が出来ない、ただ時間が過ぎて行く。


「ちょっと御免なさい、フハよし頑張れ私ブハハハハハ」


「駄目よ事務局長だハハハハハ死ぬ駄目もうハハハハハ」


かなりの時間が過ぎて行く。


「ごめんーん、気合いを入れてどうしたのその格好はブハ」


顔を下に肩が震えている。


「私もごめんウハハ御免なさい、気合い入れて質問その格好は?」


大丈夫かな答えて。


「クリーニング屋さんが閉まっていて、コインランドリーで洗濯して乾かしたらこうなってました、朝気付きました」


一瞬の間。


又笑い出す2人。


「駄目よその格好は、昼食が食べられないわよハハハハハ」


「そうね園長も理事長も食べられないわねブハハ」


涙目の2人とどうしようもない俺。


「新しい背広を買ってくれば?フハハハ」


「そう着替えて来た方が良いわよフフフフハハ」


(俺は金が無い事を正直に言おう)


「ここまでの交通費しかありません、新しい背広など買う余裕ありません!」


(えっ今なんて買う余裕が無い)眼鏡の奥キラリン。


「なら私が、就職祝いに新しい背広を買ってあげます。

よいきましょう!」


腕を掴まれる。


「いえそんな事して貰える理由が有りませんよ、大丈夫要りません」


「理由ね?」


(貴方を虜にする第一歩よとは言え無いわね)


「その格好で食事会をするとして、もし園長や理事長が笑い転げて、何かを喉に詰まらせて倒れられたら、どう責任を取るんです、出来ないでしょう?」


「それはそうですが、しかし」


「しかしもかかしも無い、行くわよ早く!」


事務局長に手を引かれて駅方面に歩いて行く。


残された女先生。


(待って何故貴女が彼の背広を買うの?可笑しいわよね?)


「待って事務局長さん、彼の事は園長より私が連れて来いと言われてます!」


反対の手を捕まれる。


「そんな事言われても、この格好の人を園長の前に連れていけますの?」


(それは無理でも可笑しいわよね?)


「なら私が責任を持って、着替えさせますよ」


(何この娘彼を攫う気、鳶に油揚げ状態)


「イエ先生ここは学園の事、私の管轄です行くわよ」


また手を引っ張られる。


(絶対可笑しい、何かあるはず)


「なら私も着いていきます!」


両方に手を引っ張られドナドナされて、紳士服の量販店に連れて行かれる。


「さてと、店長ちょっと」


カウンターから中年の紳士。


「これはこれは本日のご用件は何ですか? 夏物はまだですが、春物はこの間ご注文いただきましたが?」


俺を店長の前に立たせて。


「この子の寸法測って、背広一式大至急用意して!」


女の人2人に連行された俺を見ても笑わず、凄い人だ。


「これは自分で洗濯してしまったんですね、それでは採寸します。

体を触りますが、よろしいでしょうか?」


俺は頷く。


そして店長は、サイズを書き留めて行く。


「お値段はどの位を予定してますかね?」


「あのーなるべく安いのでおね「いい生地でお願いよ、お金は私が建て替えるから心配しないでね、良いものは長く持つものよ」


(私と一生居るのだもの、良いものでなければね)


(可笑しい、なんかムカつく絶対負けるものか)


「事務局長、お金は大丈夫私が建て替えるわよ。

マサシさん気にせず買い物して!」


睨み合う2人何故か眼から火花が見える。


「お客様あちらで合わせましょう」


良い生地のあるコーナーに、連れて行かれる。


「このタイプの者はどうですか?」


とりあえず羽織って見るが、値段が見えてしまった。


「待ってこれは買えませんよ!」


「マサシさんそれ気に入ったの、ならこのネクタイね」


また値段が見えた。


「無理払いきれません、あちらの入り口近くの物でいいです」


俺の指刺す場所は、バーゲンセールのさらに奥見切り品。


「大丈夫気にしないで買いなさい、オネーサンが払うから!

え〜とベルトはこれかな」


(早く会計して、借金で縛らないと!)


(やはり可笑しい絶対何かある、守って上げないと)


「大丈夫よそんなおばさんに建て替えて貰わなくても!

本当のが払ってあげるわよ。

なんなら下着も買っといたら!」


(おッおばさん何を小娘が邪魔するな! それに下着だと、何をするつもりだ)


(きゃー言ってしまった、下着だって〜まるで夫婦の買い物)


「あのー2人ともとてもでは無いけど払えないです。

勘弁して下さい」


「「いいのよ買いなさい!」」


仕方なく俺と店長は、一式揃えて行く。


「三揃背広とシャツ・ネクタイピンセット(ダイヤ)・下着・靴下とクツおまけして合計200万円です」


(俺の人生詰んだ)崩れ落ちる俺。


「まあまあね、はいカードサインするわよ」


「待って、私のカード使って」


「先生ここは私がね、よ」


「まあまあここはの私が、払いますよ」


どうする俺と店長。

















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