第5話

中庭でジェットストリームを見つけたついでに昼寝をしていたブッコローを掴み、添島は第3保管庫のある別棟地下へとひた走った。


現世では人の思念の強さや、自然のエネルギーを利用して成し得る事象を魔法と呼ぶ。

人が強く願いながら書いた文書や、自然エネルギーを含んだ標本等は時に魔法となって意志を持つ。


そうした魔法は本を離れて勝手に動くことがある。

それに対応するのが添島が所属する「魔法文書及び事象即応課」である。


添島達が第3保管庫に着いた時、保管庫の中は熱帯のジャングルと化していた。


「あー、今日は熱帯植物図鑑が事象化しちゃったかぁ。筒井くーん。事象の犯人どこー?」


惨状を目の当たりにしたブッコローは、いつもの口調で電話を掛けてきた筒井に話かけた。


「熱帯植物図鑑を編纂した編集者の霊魂が具現化して奥に居ます!お願いします!」


「あー、はいはい。じゃあ、僕その人に話聞いてくるからゆーりんちー後お願いねー。」


そう言ってブッコローはジャングルの中へと消えていく。


添島はブッコローを見送りながら、頭痛が始まるのを感じた。


この見渡す限りジャングルになった保管庫をどうしろと?



「・・・・やってやろうじゃあないの。私の今日の晩御飯は山菜天ぷらなのよ。絶対定時に帰りますー!」



そうして添島は晩御飯の献立を叫びながら背に縛り付けていたハリセンを構えた。






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