第4話

「ねぇねぇ、ゆーりんちー。僕のお気に入りのボールペン知らない?僕のジェットストリームぅ。」


「存じ上げませんが、先程中庭で競馬新聞をご覧になった際に落とされたのでは無いかと推測します。」


「成る程ー!ちょっと取ってくるねー。」


あの微妙な初対面から2ヶ月。


添島は徐々に仕事に慣れ、ブッコローにも慣れた。馬の話にはさっぱり興味が無いし、「添島悠理?じゃあゆーりんちーね。」と言われてつけられた渾名も全くもって納得していなかったが、上司として仕事と性格に問題が無かったので、気にしないことにしたのだ。


上司が馬好きで奥さんとかわいい子供の話が多いミミズクであっても、仕事さえちゃんとやってくれたら添島の生活に一切支障はない。


今日も定時迄に仕事が片付きそうだ、と少し添島の気分が上がったその時、即応課に設置している緊急用回線がけたたましく鳴った。


「はい、即応課添島です。」


「第3保管庫筒井です。出ました。対応お願いします。」


「10分耐えて下さい。お願いします。」


電話口で10分?!と叫ぶ声が聞こえたが、添島は構わず電話を切った。

次に深く、深く深呼吸をする。


ああ、定時は無理かぁ・・。


添島の口から、長いため息が漏れた。


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