第3話

今年の新卒採用の案内をしてくれている渡邉さんの後に続いて入った部屋には、橙色のミミズクが居た。


「ブッコローさん、今年配属になった添島さんです。」


「あ、君が期待の新人?」

橙色のミミズクが器用に翼で赤鉛筆を持ちながら手を振る。


魔法が存在する現世には、猿以外から人へと進化した所謂獣人系の人類も存在する。


だから添島も極端に驚きはしなかった。


ただ、身体の一部に動物的特徴が出るのではなく全身ミミズクは珍しいな、という第一印象ではあった。


「今日から此方に配属となりました、添島悠理です。御指導御鞭撻の程宜しくお願い致します。」



「一応この魔法文書及び事象即応課課長のR.B.ブッコローです。宜しくお願いします。それで早速なんだけど、添島さんの意見を聞きたいんだけどね」



「はい、何でしょう?」



「皐月賞はどの馬が一着だと思う?」


仕事に関わる話かと思い身構えていた添島は、聞かれた質問が自分の全く知らない競馬の話で返答に窮した。


馬・・・馬・・


「・・申し訳ありません。自分の知見が狭くて皐月賞に出走する馬を存じ上げません。ですが、出走馬の情報をいただければ、過去の皐月賞の結果及びキックリ文書の内容をデータベースから参照して予測を報告することは可能です。」



「・・い、いや、それはしなくても大丈夫です。」



こうして、二人の初対面は何とも言えない微妙なものとなってしまったのである。









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