ぐちゃぐちゃな思いとプレゼント
マチュピチュ 剣之助
プレゼントの意図は?
「恋愛に関する本を探しているなんて珍しいわね」
不意に声をかけられて、太郎はどきっとした。後ろを振り向くと、本屋の店員の宮田がにっこりと笑いかけていた。
「あ、宮田さん。こんにちは。あ、いえ、たまたまです・・・」
太郎は、恥ずかしくなって、慌てて本を閉じて別の場所に行った。
太郎が、恋愛に関する本を探していたのには理由がある。近所に住む同級生の美穂から急にプレゼントをもらったからだ。
「太郎くん、これいつものお礼。ありがとね」
そういって、美穂から渡されたプレゼントは、包装がぐちゃぐちゃになっていた。その日は雨が強かったため、包装が濡れてしまったようであった。
「あ、ありがとう・・・」
太郎がそう言うと、美穂は太郎と目を合わせることもなく、そそくさと行ってしまったのであった。
太郎と美穂は、近所に住んでおり、小さい頃から友達だった。二人の関係は、同い年の兄妹のような関係だと、少なくとも太郎は思っていた。美穂とは、高校生になった今も、よく一緒に遊ぶことが多かった。とはいえ、これまではプレゼントを贈るようなことはまったくなかった。
「何のお礼なのだろう・・・」
美穂がプレゼントを渡して去った後、太郎はボソッと呟いた。プレゼントが珍しかったことに加えて、特にプレゼントをもらうような理由が、太郎にはまったく思いつかなかったのである。誕生日はまだ2か月先であるし、特にお祝いされるような出来事も特になかった。美穂は、お礼と言っていたが、特にお礼を言われるような親切をしたわけでもなかった。
「な、何なんだろう。この気持ち・・・」
しばらくして、太郎は自分の中がぐちゃぐちゃになっていくのを感じた。親友の一人として、兄妹に近い存在として接していた人に対して、今までとは違った感情を抱きつつあるのを感じた。
「明日、美穂に会ったら、じっくりと話してみよう」
太郎はそう決心をした。
ぐちゃぐちゃな思いとプレゼント マチュピチュ 剣之助 @kiio_askym
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