はっぴぃエンド

(ねっっっむ……)

 何故かアラーム無しで起きた私は、すぐに携帯の着信がなっていることに気づいた。

(というか多分これで起きたけどね!)

 安眠の妨害しやがってコノヤロー、みたいな恨みがましい気持ちでスマホを見てみると、葵からの着信で。

 寝起きの頭が覚めないままにすぐに電話に出ていた。

「もしもし……?」 

「あんた、何かあった?講義、出てないじゃない」

 その言葉に、恐る恐るいつもの推し時計を見てみる。

 午前十時。

(…………やら、かし、てる!!)

 おちおち落ち着け、まだ慌てるような時間じゃない。いや慌てるような時間だが!?

 とりあえず、怒られないように言い訳…………。

 ああもう思いつかない、正直に言っちゃえ。 

「……ごめん、寝てた……」

「ま、何となくそんな気はしてたわ。……早く来なさいよね。

明日も会うって約束、したでしょ」

「あ…………うん、すぐ行く……!」

 その言葉に、安堵よりも先に、嬉しさが来て。

 私はすぐさま支度に取り掛かっていた。


 ルンルン気分になったおかげで、準備はあっという間に終わる。

 まあ、さすがに朝ごはんというには遅い時刻だから、昼と一緒でいっか、と思って抜いたけど。

(土井善晴さん怒らないでね)

頭の中の彼はいつもニコニコ笑顔なので少し元気をくれる。

(いってらっしゃい)

(土井さん!)

 なんて、どうでもよくてくだらないことと少しの空腹感を引きずりながら、スニーカーを履く。

 行ってきます、と呟いて、ドアを開けた。

 いずれ来る季節を思わせる、綺麗な快晴が眩しい。 

(んー……夏になったら、何、しようかな)

 沢山のやりたいことを想像しながら、早歩きでエレベーターに乗って一階のボタンを押す。

(……花火とか、行けたら、いいな)

 今まで一人でできることしか無かったそれは、気づけば葵と一緒に何をしたいかに変わっていた。

 なんとなく無敵になったみたいな、高揚感がして。

 ピンポーンと、一番下に辿り着いて扉が開く音と同時に、外へ軽くぴょいっ、と飛び出す。


 私にとっての夢の話は、これから日常になっていく。

 そんな気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夢話 @kuuuuuge

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ