第2話 朝霧姫
私が仕えることになった花神殿は、百花の王と称えられる牡丹が、目にも鮮やかに咲き誇る社殿だった。
ある日、用を果たしにお庭へ降りると、いきなり目の前にきれいな子猫が飛び込んできた。
とっさに捕まえると、御簾があげられて、豪奢な単衣に身をつつむ、艶やかな愛らしい姫君が現れた。
(間違いない……。ここの女御さま、朝霧姫だ!)
「そこの者、すぐにこちらへ。猫の命婦をはよう女御さまに」
姫君のそばにひかえた年嵩の【女房】が厳しい声で私を呼ぶ。
急いで近づいていくと、彼女は目を見開き、「蓮花の御方……!?」と低い声音で言った。
「周防ったら。こんな端女を誰と見間違えているの?」
明るい声でそう言い、扇の内で笑い始めたのは朝霧姫だった。
いたたまれない思いで立ち尽くす私に、渡殿の方から足音が聞こえてきた。
その足音の主は……
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