愛が綾なす後宮で

和泉瑠璃

第1話 入内

「いいか、絶対ばかなことをするんじゃないぞ!」

 最後に聞いたハヤテの言葉が、まだ胸の中で渦巻いている。

 本当は飛んで帰ってしまいたい気持ちをおさえて、私はこの後宮の冷たいまなざしで値踏みする【命婦】の前に座っているのに、見当違いな釘の刺され方をした。

「後宮に住む女性は貴きも卑しきも含めて、ゆうに千人を越えます。

 【女官】を賜るあなたは官女としては卑しいとは言えませんが、

 【女御】や【更衣】【尚侍】の方々には遠く及びもしません。

 ゆめゆめ浅はかな夢など見ぬように」

 最初から、主上の寵愛など望んできてなどいない。

 そんなもののために、あれほど心配してくれたハヤテを、私は踏みにじらない。

 私は、ただ無言で深く一礼して了解したことを示すと、興味もなさそうに命婦は先を続けた。


「さて、あなたがこれからお仕えするのは……

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