第5話 ジョブ選択
「他のメンバーはどうする? やっぱもう一回声かける?」
マンジーニが言う。
「俺の妹はダメだ。眠ってて起きない」
ポートが呆れ顔でため息をつく。
「弟の弟は家にいませんでした」
と、マイ。
「私の弟はダメ。怖がって泣いてた」
ルデスは双子の妹パティのことを思い出した。
パティも転生者なのだろうか。
「俺は……」
ルデスが声を上げようとした時、マンジーニがこう言った。
「僕の妹は家にいなくて話せなかった。まぁ、とりあえず行こうぜ。らちが明かない」
その言葉に皆、頷く。
「とりあえず、このメンバーでダンジョンに入って見るか!」
ポートが一歩踏み出す。
それに倣って皆も、一歩進む。
現世にもどりたいのは皆、同じなのだ。
とりあえず、この村で人生を生きる気は無い様だ。
皆、多くは語らないが、きっとこう思っていることだろう。
刺激がここには無さすぎる。
ダンジョンに入る。
石造りの階段が下に向かって続いている。
洞窟の入り口から入る光で足元はハッキリと照らされていた。
それでも、ごつごつとでっぱりのある石段を、皆でゆっくりと慎重に下りた。
「扉だ」
ポートが声を上げた。
目の前には鉄でできた扉があった。
「どうする?」
「ここまで来たら進むしかないじゃん」
ポートが扉に手を添えると、驚くほど簡単に扉は開いた。
「ここは?」
ポートが声を上げた。
そこには石の壁、石の天井、石の床。
石造りの大きな広間だった。
中は青白い炎を灯すタイマツによって照らされていた。
「おい、あれは?」
マンジーニが数メートル離れた床を指差す。
そこには魔法陣の様な模様があった。
「何かの儀式でも行われている部屋なのか?」
ルデスは呟いた。
「いや、それとも、勇者召喚のための魔法陣?」
フィリアが声を上ずらせた。
彼女の顔は笑顔で、これから何が起きるのか期待しているかのような感じだった。
「まさか。じゃ、俺達は何なんだよ? 勇者でもないただのモブキャラとして転生したのか?」
ポートが不満そうに言う。
「いや、そういうつもりじゃ」
「おい、見ろ!」
ルデスが声を上げる。
魔法陣の中央から、白い頭が現れた。
まるで泉から人が現れるかのように、白いドレスに白い髪の女性が姿を現した。
女神の様に美しいその人は口を開いた。
「ようこそ。ゲームへ」
ゲーム?
女神は確かにそう言った。
「私の名は、アネモネ。ゲームの管理者の代理人です」
アネモネという女性はこう告げる。
「では、ゲームの説明を始めます」
アネモネがそう言うと、間髪入れずにフィリアが質問する。
「あの、何で私達はここの転生したのですか?」
「答えられません」
「え?」
立ち入った質問であることはたしかだった。
人間が神に対して、何故、生まれたのか?
そう訊くに等しい。
きっと神は答えないだろう。
だが、アネモネはこう答えてくれた。
「答えはあなたたちでみつけてください」
何も答えが無いよりかはマシ、というレベルのものだったが。
「なんで私達が選ばれたの?」
フィリアは食い下がる。
「特にあなた達である意味はありません」
「誰でも良かった? と?」
「はい」
「そんなあ」
フィリアは眉を下げた。
きっと自分は選ばれた人間だと思いたかったのだろう。
それはルデスも同じだった。
他のメンバーも。
そして皆、何か質問したそうだ。
だが、ポートがこう言った。
「まずはしっかり説明を訊こう。聞き逃したら取り返しがつかないことになる。だって、俺達の命がかかわっているかもしれないんだから」
そう言われるとそうだ。
これからどんなゲームが始まるにしてもルールを把握していなければ戦えない。
話の腰を折られても女神は笑顔を崩さない。
説明を始めた。
「このダンジョンは12階層からなっており、全てクリアするとあなた達は現世にもどれます」
12階層!
多い方ではないな。
皆もそう言う印象を持った様だ。
「それぞれの階層にはモンスターが生息しており、これらと戦わなければなりません」
モンスター!?
だんだんゲームっぽくなって来た。
「下の階層に行くほど強くなります」
つまり、十分なレベルアップをして階層を下る必要があるということか。
「階層と階層の間には、このような広間があり、助言や買い物、訓練が出来ます」
辺りを見渡すと、天使がいた。
それぞれの天使には役割があり、女神が言うところの武器屋や格闘場を兼ねている様だ。
「そして、一日一時間しかこの場所に入れません。一日一時間以上たつと、自動的にゲームから退出させられます」
ゲームは一日一時間か。
「最後に大事なこと。死ぬと二度と生き返りません。現世にも戻れませんので」
え?
蘇生魔法とかないんだ。
「では、それぞれのジョブを決定して下さい」
文字が虚空に浮かんだ。
ジョブ
戦士
魔導士
僧侶
騎士
勇者
盗賊
テイマー
アーチャー
剣士
遊び人
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