第4話 他の転生者
「ゲームじゃないみたいだね。この世界」
少年の一人がルデスを見つめ、そう言った。
(ゲーム……? 今、ゲームって言った?)
「スマホも無いなんてやってられないよ」
少女の一人がそう言う。
(スマホ!?)
「あ……君達もしかして……」
「お、ゲームやスマホという言葉に対するその反応! 君も転生者だね!」
少年がルデスの手を取った。
「あ、ああ……」
「おっと、自己紹介が遅れてごめん。俺の名は小杉陶兵。高校生一年生。ここでの名前はポートっていうらしい。だからポートって呼んでくれ。現世の名前で呼んだら、オヤジとお袋が変な顔をするからな」
「ポート。はじめまして。俺の名は天月宗孝。同じく高校一年生。ここでの名前はルデス」
「ルデス。よろしくね。ちなみに、俺は現世の姿のままだ。君は?」
「俺も」
「なるほど。実はここにいる皆もだ」
ポートは他のメンバーを指差し、ウインクして見せた。
男が男にウインクするのは気持ち悪い。
だが、ポートは可愛らしさの混じったイケメンだったので、気持ち悪くなかった。
むしろ爽やかだった。
こいつはさぞかし現世ではモてたことだろう。
それはそれとして、ルデスはホッとした。
自分と同じ境遇の人間と出会えたからだ。
「ポート、私の名前は冷牟田紗由香。ここではフィリアって名前みたい。可愛い名前だから気に入ってるの。同い年ね。よろしく」
茶髪の可愛い少女が声を掛けて来た。
「私、早水凛子です。皆さんと同い年です。ここでの名前は、えっと……マイ、です」
照れながらルデスに話し掛けている黒髪の少女。
「マイ、同じ年なら敬語やめなよ」
「え、でも、違う高校ですし……」
「あはは。ここじゃ、高校なんてもう関係ないよ」
「は、はい……」
フィリアに背中をバシバシ叩かれながら、マイは顔を真っ赤にしている。
フィリアは明るくて活発な印象だ。
そしてマイは大人しく、自己主張が小さい印象。
「僕は清澄轟介。皆と同じ年。ここでの名前はマンジーニ」
木にもたれながら、目線も会わずに自己紹介する少年。
マンジーニは何を考えてるか分からない感じだ。
彼らはルデスと同じ様に現世から転生して来た仲間達だった。
「ちなみに、皆、ここでの記憶ってあるの?」
全員が首を横に振る。
話を聞いていると、皆、ルデスと同じだった。
つまり、皆、現世の記憶が、ここで生まれ育った記憶を上書きしているということか。
姿は現世のまま。
記憶も現世のママだ。
だが、一つだけ、ここでの記憶がある。
「僕らも洞窟に行くっていう記憶だけがあって、それを頼りにここに来たって訳さ」
ポートが穴を指差しながら言う。
「結局、集まったのはルデスで最後なのかな。この村にはもっと子供がいるから転生者がもっといると思ったけど」
フィリアが腕を組む。
「あ、何でそう思ったかって?」
ルデスの顔を見て、フィリアは解説する。
「この村の総人口は20人で大人が10人、子供が10人なの」
フィリアはだいぶこの世界での情報を仕入れている様だ。
「記憶が無いから色々この世界のことを知っておきたかったの。生き延びるためってのもあるけど、私ってさ、好奇心旺盛で」
身振り手振り表情をころころ変えながらフィリアは話す。
どうやらこの世界について、絶望を持たず興味を持った様だ。
楽しんでる様にも見える。
「ま、パパとママには何でそんな質問すると変な顔されるから。私の家そこそこお金持ちみたいで、この村の中ではの話だけど、本が沢山あってね。歴史本で調べたら、この世界って、それぞれの両親から男の子と女の子一人ずつ生まれてて、それにきっちり10人ずつなんて変わってる。それが代々続いてるんだって」
確かに。
やけにキッチリした数字だった。
この世界が現世と異なる仕組みを持つ異世界であることに改めて実感させられる。
フィリアの言葉を受けて、マイが手を叩いた。
「そうですね。兄弟が3人だったり、一人っ子がいてもいいのに」
ルデスと同じ疑問を持っていた。
マンジーニが頷く。
「なんか、そう言うのってゲームみたいだよな」
村人の数と生まれる子供の数と性別。
確かに。
だが、誰しもが思っていた。
ここがゲームではない。
ステータス画面を表示させる実験は誰しもが試し済みだ。
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