【第26話】綿密な計画
僕たちが食事をとっている間、時計塔は救出作戦を練っていた。作戦リーダーには、時計塔の特殊部隊と呼ばれる、『DSOU(Devil Special Operations Unit)』所属のジョンが選ばれた。ジョンは、吉川とジャックが拘束されている場所の地図を取り出し、周辺の建物や道路を詳しく調べた。
「遅くなりました!」
「構わん。ロンドンは満喫したかね?」
「はい、とっても」
「それは良かった」
「それでは、私の方から作戦の詳細を説明する。先程の偵察からの報告から、我々は吉川とジャックが拘束されている場所に近づくための最適なルートを決定し、可能な魔術結界やリスクを考慮して、救出作戦を詳細に計画した。スピードと魔術の正確性のバランスを保つために、複数のチームに分かれ、慎重に進んでいくことに決めた」
「なるほど……」
正直、作戦の説明は僕の思考を遥かに凌駕していたため、何を言っているのかほぼ理解できなかった。それに気づいたベンが、付け加えた。
「簡単に言えば、ジョンが考えたルートに沿って個々の戦闘力とスピードのバランスの取れた人選をし、各チームに分かれる。と、いうことだな」
「なるほど……」
「作戦に関しては、単独行動をするのはソルボンだけになるので、そこまで心配は要らない」
「え、ソルボンは1人?!」
「いかんせん人手不足なので仕方がないのだ。彼の魔力と経験を合わせれば容易な事だろう」
「は、はぁ」
「気にすることはないぞリュウキ。私がいなくても、君は自身の力を信じれば良い」
「頑張ります」
「頑張る必要もない。身を守る事を最優先に考えなさい」
「は、はい!」
そんな師弟水入らずの会話を済ませ、ジョンの指示通り、チームに分かれた。チームは4人から5人で、ソルボンを合わせ、3チームで構成された。
僕とアイさんは、同じ投影部隊に配属された。投影部隊は、陽動と目眩しが役目だ。
「緊張する?」
「少しだけ……」
「私もよ」
「きっと大丈夫ですよ」
アイさんは静かに頷いた。作戦会議の時間が迫ってきて、投影要員が集まった。少し遅れたから、リーダーがやって来た。
「待たせてすまないね。私が今回、この部隊を仕切ることになった、アルバースだ」
笑顔が素敵なアルバースは、例えて言うなら、某黄色い熊のキャラクターに似ている。
「さて、作戦の説明に移ろう」
咳払いをして、真剣な顔になったアルバースが宙に手をかざすと、大きな地図が浮かび上がった。流石は投影部隊のリーダーと言ったところか。
「初めに、捕虜2名の事をこれより先はマル対と呼称する。マル対が捉えられているこの廃工場はリュウキの故郷では珍しくもない城と言ったところだ」
アルバースは僕を見て、少し微笑んだ。ちょっと僕は、有名人過ぎる。
「城?」
「外堀、内堀と結界が張られ、場内から見下ろすようにこちらを視認、攻撃ができる」
「それじゃあ……」
「ああ、我々の仕事は最も重要だ。我々が失敗すれば、仲間を見殺しにすることになるだろう」
僕は生唾を飲み込んだ。
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