【番外】魔鬼

 男は暗闇の中で白い煙を吐いた。深く被ったフードの中に、ギラギラと光る目が二つ浮いて見える。男の静かな怒りが見えた。


「なぜ奴らの手にあるんだ?」

「申し訳ありません! なにせ時計塔が関わっているようで……」

「私は言い訳が聞きたいんじゃない」

「では、すぐに……」


 ゴツゴツとした地面に首が落ちる。恐らく彼は、自分が死んだことにも気づいていないだろう。


「必ず、奴らより先に見つけてこい」


 周りにいた真っ黒なローブ姿の者たちは、次々に黒い煙となって消えていった。それと入れ替わるように一匹のアゲハ蝶が岩肌に留まった。


「私をおちょくるのも良い加減にして欲しいものだな。貴様のせいでこちらは忙しい」

「「それはお互い様だろう? アンタらを止めろって時計塔からの依頼でね」」

「フハハハハ……貴様に止められるのか? 」

「「俺ひとりじゃ厳しいだろうがな」」

「1人残らず殺してやるから楽しみにしておけ!」


 男がそう言って杖を振ると、アゲハ蝶は粉々になって消えた。暗い洞窟の中には、男の乾いた笑い声だけがこだましていた。




##############



「ワンワンワンワン!!」

(うるさ……もう朝か……)


 爽やかな朝に、野良犬の鳴き声が響く。

 何か不思議な夢を見ていたような気もするが、あまり覚えていない。


(起きるか……)

 少し早いが、明日からの準備もしなくてはならない。


「めんどくさ」

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