【第17話】力の根源

「ヒントとかないですか? 」

「ヒントか、そうさなぁ」


 ソルボンは吉川の本棚を物色しながら、をくれた。


「君の魔術の特性は?」

「変身術と織物魔術……」

「左様。その中で今君が出来るのは?」

「織物魔術です」

「そうだな」

「でも、何度やっても上手くいきません」

「いいか、君の魔術はまだ未完成なのだ。最大限を発揮するには自身で道を開くしかない」

「そんなこと言ったって……」


 正直、もう無理なのではないかと諦めかけていた。視線を感じ、吉川を見ると、開いた木箱をニヤニヤしながら自慢げに見せつけている。


(ムカつく……かなりウザい)


 僕は、その悔しい気持ちを木箱にぶつけることにした。何も綺麗に開ける必要はない。木っ端微塵にしまえば良いことだ。

 

 木箱に最大限の憎しみを込め、魔術を発動させると、手のひらサイズの蜘蛛が2匹、3匹と増え、数えきれないほどになった。蜘蛛の群れは木箱に噛み付いたり、糸でぐるぐる巻きにしたりと、木箱を壊そうとしている。


「破壊するつもりか?」

「……」


 僕はソルボンの言葉を無視して、そのまま魔力を注ぎ込んだ。蜘蛛の糸で巻かれた木箱は、段々と変形していき、瓢箪ヒョウタンのような形になり、そのまま真っ二つに割れた。


「おお!」

「リュウキくん凄い!」

「私の木箱が……」


 3人は、割れた木箱に寄って来た。そこで僕は、ようやく我に帰った。


「あ! 壊してしまって、すみません……」

「素晴らしい」

「真っ二つだぁ」


 吉川とアイさんは目をキラキラさせているが、若干一名悲しそうな顔をしている男がいた。


「ソルボン……あの」

「良いんだ、コレが正解だ」


 先程とは打って変わって、微笑を浮かべるソルボンが、破壊された木箱に手を添えるとみるみる元の形に戻った。


「君の力の根源は何かわかったかな?」

「根源、ですか?」

「そうだ。魔術の行使にはそれぞれ根源が必要になる」

「は、はあ」

「私で言えば、美味しいものをいっぱい食べるとかかな!!」

「なるほど……?」

「君の根源は、や《怒り》だ」

「じゃあ、吉川さんは……」

「ああ、わざと君の怒りを引き出すために見せたんだ。君のこの力は、古代黒魔術に匹敵する力だ」

 

 憎しみや怒りで増大する黒魔術、これではまるで漫画やアニメの敵役じゃないか。または、ダークヒーローか。


「気にすることはない。自身の感情をコントロールすることができれば、君のその力は我々をも凌駕りょうがするだろう」

「良いねぇ、良いねぇ!! 強いの良いなぁ」


 全く、アイさんは呑気だ。だが、確かにこの力は強いかも知れない。コントロールするには、それなりに時間がかかるだろうが。


「じゃあ、次の仕事は君に任せよう」

「え?!」

「君にぴったりの仕事が来ているからな」

「明日が楽しみだなぁ!」

「は、はぁ」


 明日は、もっと忙しくなりそうだ。





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