【第4話】正体
僕たちは屋敷での初仕事を終え、事務所に戻ってきた。
洞窟の中からどうやって出たのかはわからない。入った時と同じように目を塞がれ、気づくと屋敷の門前に立っていた。
「あの屋敷には誰が住んでいるんです?」
「さあな。俺も会った事はないんだ」
「私は見たことあるヨォ。お爺ちゃんだったなぁ。痛っ!」
口を滑らせたアイさんにゲンコツが飛んだ。吉川は本棚から分厚い横文字の本を一冊取ると、デスクに座って読み始めた。
「何が面白いのかなぁ」
「お前はもっと勉強しろ」
アイの皮肉は、吉川には効いていないようだ。
「吉川さんって霊媒師なんですか?」
「霊媒師……?」
僕の言葉を聞いた2人は、一瞬顔を合わせると腹を抱えて爆笑し始めた。僕は真剣に聞いたつもりだったが、なんだか損をした気分だ。
「そうだった、君には何も説明をしていなかった」
やっと落ち着いた吉川が説明を始めた。
「俺は、君の知っている言葉で言うと、魔法使いだ。職業で言えば看板の通り何でも屋だ。霊媒師というのは偽物を含めて職業の名前だからな。うちで出来る事は何でもやる」
「私は弟子ってところかなっ?」
「お前はただの雑用係だ」
「えぇ、センスあるって言ってた!」
「そんなことを言った覚えはない」
(何なんだこの人たちは。魔法使い? そんなものが本当に実在するのか?)
「まあ、今すぐ信じろとは言わない。そのうち嫌でも信じることになるだろうからな」
「改めて聞きますけど、なぜ僕を誘ったんですか?人手不足には見えないですけど……」
「君にはカレが見えていただろう」
「彼? 彼って……?」
「まぁ、それもそのうち分かる」
僕は、何もかも分からないことだらけで不服だったが、吉川はなぜか嬉しそうに微笑んでいた。
今日はもう仕事が無いとの事だったので、僕は帰ることにした。
「リュウキ君が帰るなら私も帰ろうかな」
「え……」
「えってなによ。一緒に帰っちゃダメなの?」
「いや、良いですけど……」
口を尖らせたアイと事務所を出て、家まで歩いた。話を聞くとアイさんの家は僕の近所で、帰り道も全く同じ道のりだった。
僕は気まずさが多少なりともあったが、アイは全く感じていなかったらしく、ひたすら僕に話しかけていた。適当に返事をし過ぎて、内容はほとんど覚えていないが。
ようやく、僕の家に着いた。
「ほお、結構大きい家だねぇ」
そう言って、アイが僕の家を眺めていると、通りの方向から視線を感じた。見ると、同じクラスのアカリだった。
アカリの目は悲しみのような、妬みのようなものを浮かべていた。こちらに気付いたアカリは、顔を伏せどこかへ走り去ってしまった。
「ありゃ、ごめんね。なんか勘違いさせちゃったかな?」
「いえ、ただの同級生なので」
「でも、あれは……じゃあね」
アイは何かを言いかけたが、そのままスキップをして帰って行った。
誰もいない家に入ると、疲れたのかそのまま部屋に行き、ベッドに吸い込まれた。
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