ライラの陰謀

「エルネア様、エルネア様。起きてくださいですわ」


 むにゃむにゃ。もう朝かな?


 ライラの声で、僕は目覚める。

 だけど、重いまぶたを開けて目を開けても、部屋は真っ暗。

 もしかして、まだ日の出前?


「ライラ?」

「しっ、ですわ」


 まだ夜だよ、と言いかけた僕のくちびるに、ライラの人差し指が押し当てられた。


 ははぁん。

 これは、ライラの抜け駆けの行動ですね?

 ようやく思考が回り始めて、状況を理解する。


 竜気で視力を強化する。

 すると、暗いお部屋では、まだみんなが静かに寝息を立てていた。


 ここは、ヨルテニトス王国王宮の一画に設けられた、イース家の

 王様が、大家族である僕の家族専用のために整備してくれた、豪華なお部屋だ。

 家族全員で寝られる寝具は特注品。それだけじゃなくて、ニーミア用の可愛らしい寝具や、フィオリーナやリームといった子竜が休めるような場所もきちんと作られている。

 まあ、ニーミアたちは専用の寝床に寝ることなく、僕たちの布団に潜り込んで寝ているんだけどね。


「ライラ、どうしたの?」


 みんなを起こさないように、ライラの耳元に顔を寄せて質問する。すると、ライラはそれだけで顔を赤らめちゃった。


「はわわっ。エルネア様の吐息といきが」

「ふーっ」

「きゃっ」


 なんて、遊んでいる場合ではありません。

 寝静まっているはずのみんなの気配が不自然に動けば、敏感なミストラルが起きちゃうかも。

 それで、僕とライラは慎重に寝床から抜け出した。


「エルネア様、少しお付き合いくださいですわ」

「ふっふっふっ。抜け駆けですね?」

「はい」


 嬉しそうに微笑むライラ。

 ライラはいっつも抜け駆けをたくらむくせに、高い確率で誰かに阻止されちゃうんだよね。

 だから、たまにこうして成功すると、本人はすごく嬉しそうだ。


「どこかに行く?」

「はい。ですので、できればお着替えを」

「わかった。それじゃあ、服を持ち出して外で着替えようか」


 外って言っても、屋外じゃないよ?

 廊下から、別の部屋って意味だからね?


「にゃむ」


 はっ。

 ニーミアは起きてる?

 気のせいかな?


 僕とライラは、衣装部屋の前に準備されていた二人分の普段着と、外に出ても寒くない防寒着をそっと取ると、静かにお部屋の出口へと向かう。

 お部屋から抜け出す前に、誰も起きていないよね、と確認するように寝台を振り返る僕。


 まず最初に、朝の早いミストラルとルイセイネを見る。

 だけど、二人とも寝相ねぞうよく寝ていて、こちらの動きに反応している様子はない。

 というか、僕は珍しいものを見ています。


 ミストラルとルイセイネの寝ている姿は、とても貴重だよ!


 なにせ、二人は絶対に僕よりも前に起きて活動を始めるからね。

 お昼寝なんてものもほとんどしないから、僕が夜更よふかしをしたり、深夜の尿意で目を覚まさない限り、見ることはできないのです。


 ミストラルとルイセイネが寝ている様子に、僕とライラはほっと胸を撫で下ろす。

 この二人が反応していないということは、他のみんなが起きる可能性はほとんどないからね。


 現に、ユフィーリアとニーナは、二人仲良く抱き合って眠っていた。

 セフィーナさんは、寝姿まで格好良いね。

 昨晩はいなかったはずのマドリーヌ様が、なぜか隅っこの方で寝ているけど、気のせいです。

 お布団の下に出来上がった大小四つの山の下では、フィオリーナとリームに挟まれて、プリシアちゃんとアリシアちゃんが丸くなって寝ているはずだ。

 ニーミアは、一番高い布団山のいただきで丸まって寝ている。ふわふわの体毛に包まれたニーミアは、寒さに強いんだよね。うらやましい。


 全員が寝ていることを確認すると、僕とライラは廊下に出る。


「うわっ、寒い!」


 もしかして、お部屋は暖炉だんろの熱がまだ残っていたのかな?

 僕とライラは震えながら、着替えを抱えて廊下を急ぐ。

 こんな寒い廊下でなんて、着替えられません。それに、寒さでしゃきっと引き締まった頭でよくよく考えると、衛兵さんが巡回してくる場所でライラを下着姿にはできないからね。


 ということで、暖かいお部屋を探す僕とライラ。

 すると、目的の場所はすぐに見つかった。


 僕たちが利用させてもらっているお部屋。そのすぐ隣のお部屋の扉が少しだけ開いていて、そこから灯りが漏れていた。

 というか、この部屋は確か、ライラ専用のお部屋だったはず?



「ライラは準備がいいね?」

「はわわっ。私ではないですわ?」


 自室から灯りが漏れていることに小首を傾げるライラ。


「もしかして、昨晩消し忘れたとか」

「かもしれませんわ」


 ライラの着替えだけは、自室に保管されている。

 なにせ、量が多いからね!

 王様が、ライラのいない間にも大量に持ち込むんだ。

 だから、僕たち用のお部屋以外にも、ライラ専用のお部屋があるわけです。


 もしかしたら、ライラが昨晩に着替えで利用した際に、灯りとなる光の魔晶石ましょうせきを処分し忘れたのかも。

 王宮で利用される魔晶石なだけあって、放っておくと、ひと晩中灯っているんだよね。

 なので普通は、寝る前に不要になった光の魔晶石などを、夜間警備の衛兵さんにあげたりするんだ。


 ともかく、僕とライラはお部屋へ入る。

 すると、暖炉にも火が残っていた。


「ライラさん、火の始末は忘れちゃ駄目だよ?」

「はわわっ。ごめんなさいですわ。お風呂あがりに、早くエルネア様と合流したくて。……ですが、私は消したような? でも、消えていないということは、消し忘れですわ。ごめんなさい」


 しゅん、と反省するライラの頭を撫でてあげる。


「よしよし、あまり落ち込まないでね?」


 ライラは素直だから、自分の失敗にはきちんと反省を入れる。

 そして、同じ過ちは犯さない。

 だから、反省したライラには、おしかりの追加よりもなぐさめてあげることの方が大切なのです。

 僕に頭を撫でられたライラは、すぐに元気になった。

 それで、僕とライラは暖かいお部屋で、着替えることにする。


 真冬の着替えだけで考えると、お部屋に灯りが残っていたり、暖炉に火が残っていたことはありがたいよね。


 ……ところで、昨日ライラがお風呂に入った時間に合わせて暖炉に火を入れていたとして。はたして、朝方までまきは残っているものだろうか。

 というか、僕とライラの着替えだけが防寒着と一緒に準備されていたのは、気のせいかな?


 いや、考えすぎだよね?

 たぶん、着替えはライラが僕を起こす前に準備したに違いない。

 それと、さっきはライラを疑ったけど、もしかしたら、こちらの動きを把握していた使用人さんが、事前にこのお部屋の段取りをしてくれていたかもしれないね。


 なんて、ライラの着替えを見つめながら考えていると、僕の視線に気づいたのか、ライラが振り返って顔を赤く染めあげた。


「エルネア様、恥ずかしいですわ」

「ふふふ、何を今更!」


 がおうっ、とけだもののようにライラへ襲いかかっても良いんですよ?

 だけど、今日は眼福がんぷくだけで自重しておきましょう。

 なにせ、ライラには目的があるみたいだしね。


 ということで、僕も着替えを済ませる。

 普段着の上から、もこもこの羊毛ようもうをふんだんに利用した防寒着を着込む。

 頭巾ずきん手袋てぶくろくつも、全部もこもこ。

 羊種ひつじしゅのメイちゃんになった気分です!


 そして、暖かいお部屋でこれだけ着込むと、さすがに暑くなってきちゃう。

 それで、仕度が済むと、僕とライラは暖炉の火を消して、光の魔晶石を持ってお部屋を後にした。


「廊下に出ても、寒くないね?」

「暖かいですわ」

「うん。これなら、外で雪が降っていても全然寒くないだろうね。それで、僕たちはこれからどこへ向かうのかな?」

「エルネア様、こちらですわ」


 もこもこの靴は、足裏にまで羊毛が敷き詰められているみたい。

 ふわふわとした不思議な感覚を体験しながら、僕はライラに案内されるがままに廊下を進む。

 すると、ライラは僕を連れて、中庭に出た。

 そして、驚く。

 僕とライラを中庭で待っていたのは、レヴァリアだった。


「レヴァリア、おはよう?」

『まだそのような時間ではないわ!』

「はわわ。レヴァリア様、ごめんなさいですわ」

『ふんっ。上牛の約束を忘れるなよ?』

「はい。特上の牛を準備しますわ」

「ライラさん、牛でレヴァリアを買収したんですね?」


 なにやら、ライラは今回の抜け駆けに気合を入れている様子だね。

 レヴァリアを仲間に引き込んでいたり、ミストラルたちに気づかれないように着替えや防寒着を準備していたり。

 そして、レヴァリアの協力を必要としているということは、どこかに遠出をするんだね?


「さあ、エルネア様。急いでくださいですわ」

「もしかして、時間がない?」


 でも、まだ夜明けまで随分と時間がある頃合いだよ?

 いったい、ライラは僕を連れてどこへ行こうとしているのか。


「はっ。まさか、駆け落ちかな!?」


 みんなが目覚める前に、うんと遠くへ。

 まさか、ライラがこれほどまで抜け駆けに命を懸けていただなんて!


『馬鹿か、貴様は』


 僕の発想に、レヴァリアが冷たい視線を容赦なく浴びせる。

 しくしく、そんなに見下さなくて良いじゃないですか。


 あんまり僕をいじめると、鱗を拭いたりお世話をしてあげないよ?

 なんて冗談を言いつつ、僕はライラと一緒にレヴァリアの背中に乗る。

 僕とライラを乗せたレヴァリアは、すぐに空へと舞い上がった。


 大小四枚の翼を荒々しく羽ばたかせて、高度を上げていく。

 ただし、いつものような咆哮はあげない。

 明け方前だからみんなに気を使っている、なんて、レヴァリアに限っては絶対にない。

 ということは、ライラと交わした上牛の契約の中に、静かに飛ぶことも含まれているんだろうね。


「それで、ライラ。僕たちはこれからどこへ?」


 このまま秘密でも良いし、早く目的を聞きたい、という興味もある。それで、ライラがどう答えてもいいように心の準備をしながら、質問する。

 すると、ライラは思いのほかあっさりと、目的地を教えてくれた。


「前に、フィレル殿下に聞いたのですわ。王都からずっと南東の方に行くと、ヨルテニトス王国で最も高い山があるそうですわ」

「へぇえ。北部の山岳地帯じゃなくて、南の方に最高峰の山があるんだね。それで、僕たちは今からそこへ?」

「はい!」


 レヴァリアに乗せてもらい、しかも邪魔者が誰もいない状況になって、ライラが俄然がぜん元気になる。


「それじゃあ、レヴァリア。そこへお願いします」

『貴様に言われずとも、向かってやるわ』

「あっ。もしかして、昨日すぐに飛んで行ったりしていたのは、場所を特定させておくためだったのかな?」

『黙っていろ!』

「いやいやん。レヴァちゃん、健気けなげね?」


 なんてレヴァリアをからかったら、翼を畳んで急降下を始めた。


「「きゃーっ!」」


 突然の急降下に、悲鳴をあげる僕とライラ。

 せっかくレヴァリアが咆哮もあげずに飛んでくれたというのに、僕とライラの悲鳴が王宮の空に響く。


「ご、ごめんよ、レヴァリア」

「レヴァリア様、お許しくださいですわ」


 涙目で僕とライラが謝ると、レヴァリアは王宮の屋根の上すれすれで翼を広げ、急降下を止めてくれた。

 そして、改めて空へと上がる。


 ふうっ。

 危うく、王宮を壊しちゃうところでした。

 僕とライラは顔を向き合わせて、苦笑した。


 気を取り直したレヴァリアは、ライラが示す目的地へ向けて翼を荒々しく羽ばたかせる。

 するとそこへ、遠くから飛竜が飛来してきた。


「もしもし? どうかされましたですか?」

「アーニャさん!」


 飛んできたのは、げ茶色の飛竜。

 飛竜はレヴァリアが怖いのか、接近しようとはしない。少し離れた場所で小旋回をしながら、自分に騎乗している者の務めを補佐する。

 そして、焦げ茶色の飛竜に騎乗しているのは、よく見知った女性竜騎士、アーニャさんだった。

 ちなみに、相変わらず言葉遣いが変だ。


「アーニャさん、おはようございます」

「まだ、おはようございます、はお早いですわよ?」


 レヴァリアに乗って空に上がっても、東の空には太陽どころか明るみも差していない。

 ほんと、おはようには早すぎるよね。

 では、そんな時間に飛んできたアーニャさんは、何をしていたんだろう?

 聞くと、深夜の巡回中だったらしい。

 そうしたら、王宮の方でレヴァリアが飛翔したかと思えば急降下し始めたので、慌てて飛んできたんだって。


「ご心配をおかけしました。というか、アーニャさんは今でも竜騎士としてのお勤めを頑張っているんですね?」

「はい、それがお役目ですので。私のことはともかく、エルネア様たちはどちらへ?」


 僕はアーニャさんに、ライラと出かけることを伝える。


「そうですか、ホルム火山へ行かれるのですね。私の故郷は、火山の麓なの、です!」

「ああ、だからフィレルが山のことを知っていて、ライラに伝えたのか」


 なんで急に、フィレルがライラへホルム火山のことを伝えたのか。合点がいきました!


 フィレルの名前が出ると、アーニャさんは顔を赤く染めた。


「それじゃあ、僕たちはアーニャさんおすすめの火山へ行ってきますね! それと、これからもお幸せに」


 照れるアーニャさんに、にやにやと意味ありげな笑みを向けながら、僕たちは飛び去った。






 レヴァリアが目的地の場所を把握してくれているおかげで、迷いなくホルム火山へ向かえる。


「エルネア様、髪をかせてくださいですわ」

「うん、お願いするね」


 服は着替えても、髪はぼさぼさのままでした。

 ライラは僕の背後に回り込むと、荷物からすくを取り出して、帽子をとって髪を梳いてくれる。

 櫛まで持ってきているなんて、準備がいいね。


 頭を優しく触られていると、眠くなってきちゃう。

 しかも、まだ夜明け前だしね。


 ライラがこんなに朝早くから僕を連れ出したということは、きっと夜更け前から朝にかけてやりたいことがあるに違いない。

 そういえば、目的地は聞いたけど、何をしに行くかは聞きそびれちゃった、と今更ながらに思いながら、ライラに髪を梳いてもらう。


 髪を整えてもらうと、僕とライラは仲良く談笑しながら、ホルム火山までの空の旅を楽しむ。


「そういえば、お腹が空いてきちゃったね?」

「それなら、軽食と飲み物が荷物の中にありましたですわ」

「えっ? ライラが準備したんじゃないの?」

「はわわっ。違いますわ」

「それじゃあ、いつの食べ物だろう?」


 普段は、アレスちゃんの謎の空間を利用して食べ物や飲み物は持ち運んでいる。

 ただし、楽園で起きた事件のように家族が個別で動く場合は、それぞれが荷物を持ったりする。

 ライラの荷物に入っていた食べ物と飲み物は、いったい何日前のものかな!?


 と、危惧きぐしたんだけど。

 なぜか、ライラが取り出した食べ物は腐った匂いもしていなくて、それどころかほんのりとまだ暖かかった。

 飲み物も、陶器とうきの水筒からうつわに移すと、まだ湯気を立てていた。


「もしかして、アレスちゃんが気を利かせてくれたのかな?」

「そうかもしれませんわ」


 そもそも、目覚めの時点からアレスちゃんの干渉はなかったよね。

 精霊のアレスちゃんは眠る必要がないので、僕が起きるのに合わせて、活動を始める。それなのに、ライラの抜け駆けを阻止しなかったよね。


「ライラのお部屋のこともアレスちゃんだったと考えると、納得できるね。あとで、アレスちゃんにお礼を言おうね」

「はい、お礼をしなきゃですわ」


 そんなことを言っていると、霊樹ちゃんとの思い出づくりに巻き込まれるよ、と話して笑い合う。


 僕たちが寛いでる最中にも、レヴァリアは愚痴もこぼさず飛んでくれていた。

 そして気づくと、遠くに高い山の影が見え始めていた。

 まだ夜明け前ということもあって、黒々とした影が薄闇色の景色に浮かぶ。

 ホルム火山のいただきは、雲を越えた位置にあった。

 レヴァリアは雲の下を飛んでいるので、これからもっと近づけば、見上げることになるね。


「ホルム火山だけじゃなくて、周りの山も標高が高いんだね」


 見れば、頂が雲を突き破っている山は他にもあって、北部山岳地帯とはまた違った山の景色が広がっているんだな、と思わせる。


 さて、この天高くそびえる火山のどこに、目的地があるのか。

 興味深くレヴァリアの飛行を見守る僕。

 すると、レヴァリアは翼に竜気をみなぎらせて、高度を上げ始めた。


「もしかして、山頂?」

「はい。そこが一番綺麗と聞きましたわ」


 ふむふむ。何が綺麗なのかは、楽しみとして取って起きましょう。


 ホルム火山に接近したレヴァリアは、山頂を目指してどんどんと高度を上げていく。

 火山活動は止まっているのか、ホルム火山の火口から噴煙ふんえんは上がっていない。

 だけど、噴煙の代わりに、眼下になった山肌にはきりが立ち込み始めた。


「霧が雲と一緒になって広がっていくね」


 薄い霧は山肌に沿って吹く風に乗り、目まぐるしく様相を変化させていく。

 そして、次第に密度を濃くしていくと、流れる雲と合わさって、山腹に雲海うんかいを作り出した。


『着いたぞ、さっさと降りろ』


 景色に見とれているうちに、レヴァリアは火山の山頂に到着していたみたい。

 僕とライラはレヴァリアにお礼を言いながら、背中から降りる。


「雲海が遠くまで見えるはずだよね。東の空が明るみ出しているよ!」

「エルネア様と、ここで朝日を見たかったのですわ」

「なるほど!」


 だから、夜明け前から抜け出したんだね。

 レヴァリアが飛行にかかる時間を計算してくれて、ライラに計画実行の頃合いを伝えたんだろうね。


 僕とライラは、山頂に並んで東の空を見つめる。


 山腹に広がった雲海は視界を埋め尽くしていて、地表は見えない。

 でもそのおかげで、朝日に照らされた雲海が幻想的に光り輝き、僕たちの瞳にまぶしく映り込む。


「雲海から突き出た周りの山が、湖に浮かぶ島のように見えるね」

「とても綺麗ですわ」


 風にあおられて、雲海が揺れる。

 雲海の下から昇ってくる太陽の輝きは、次第に空を暁色あかつきいろに染め上げていく。


 僕とライラは肩を寄せ合って、美しい景色をうっとりと見つめ続けた。







「はっくちょん! んんっと、鼻水をふいて?」

「あらあらまあまあ、いっぱい鼻水が出ましたね」

「にゃあ」

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