豊穣の大地

 聖剣が折れても、こころざしは絶対に折らない。

 リステアはいつものリステアで、元気にしていた。

 もうしばらくは謹慎生活らしいけど、彼なら名誉を回復させることができるはずだ。

 そう、聖剣と共に。


 神族のアレクスさんは、人族の国を始めて訪れたようで、文化の違いに色々と興味を示していたらしい。

 時間の都合などで本人には会えなかったけど、天族のルーヴェントから近況が聞けた。

 そのルーヴェントは、飛竜たちやレヴァリアに追いかけ回されて、随分と滅入っていたようだけどね。


 なにはともあれ、歴史に深く刻まれるような事件や事故が起きても、人々の生活はいつものように続き、日々は過ぎていく。


 僕とルイセイネは、王都で甘い生活を送ったあとに、禁領のお屋敷へと戻った。

 リステアたちと次に会うときは、いよいよ聖剣復活の旅になるね。

 いったい、どんな冒険になるのやら。


 でも、その前に。


「んんっと、これからくりりに行くんだよ!」

「よし、出発だーっ!」


 禁領に帰ってきて早々だけど。

 僕たち家族は、プリシアちゃんに手を引かれて近場の林へ。

 なんでも、お屋敷の近くに栗林くりばやしがあるんだって。


 お屋敷で一緒に生活している耳長族の人たちは、決められたお仕事以外の時間によく散策さんさくに出ているらしい。

 禁領の大自然をよく知ることは、暮らしを良くしていくために必要だからね。

 そして、栗林を見つけた。


「まさか、こんな場所に栗の木が密生している林があるなんてね」

「案外、ずっと昔に暮らしていた人が植樹をした場所なんじゃないかしら?」

「うん、そうかもね」


 ミストラルは、僕とルイセイネの帰りが遅かったことについて野暮やぼな言及はしない。

 ただし、双子王女様は別だ。


「ちょっと、エルネア君。今度は私と旅に出ましょう?」

「ちょっと、ルイセイネ。次は私の番ですからね?」


 僕の右腕をお胸様に挟んで抱きつくのは、姉のユフィーリア。

 僕の左腕をお胸様に挟んで抱きつくのは、妹のニーナ。


 うむむ、腕は幸せなんだけど、歩き辛いです!


 栗林は近場ということで、僕たちは徒歩で移動中。

 先導するのは、栗林をまるで自分が見つけたかのように自慢するプリシアちゃん。

 プリシアちゃんの小さな手を握って歩いているのが、ミストラル。

 もちろん、ニーミアはいつもの場所で寛いでいます。ニーミアの長い尻尾がプリシアちゃんの頭の上で揺れている様子を後ろから見ると、プリシアちゃんの髪が長くなったように見えるね。髪の色は違うけどさ。


「にゃん」


 そして、プリシアちゃんたちに続いて歩いているのが僕たちで、その後ろからはルイセイネとライラが付いてきている。

 細い獣道だからね、横一列にはなれません。


「ルイセイネ様は、一回お休みでございますわ」

「あらあらまあまあ、一回だけでよろしいのですね? では、ユフィさんとニーナさんの次に、またお出かけしましょうかしら。ライラさんはその次ですね?」

「はわわっ、間違えましたわっ」

「間違えていませんよ? だって、ライラさんはヨルテニトスの国王陛下と楽しく文通なさったでしょう?」

「あれとこれとは別ですわ」

「では、わたくしがエルネア君とお出かけしたことと次とも別です」

「あううっ」


 相変わらず、この二人の上下関係は楽しそう。

 ルイセイネだって、本心からライラをいじめているわけじゃない。

 ライラの反応があまりにも可愛くて、ついついいじりたくなっちゃうんだよね。


 楽しく散策しながら栗拾いに向かう僕たちの家族。そのずっと後方には、栗林を見つけた功労者、すなわち耳長族の人たちも一緒に来ていた。

 今日は、みんなで初秋しょしゅう大収穫祭だいしゅうかくさいです。


 だけど……


 僕の家族と耳長族の人たちの間に開きがあるのには、理由があった。


「今夜は栗三昧くりざんまいなの」

「栗をそのまま焼いてもいいですね。潰してお菓子にしても良いですし」

「ナザリアの腕の見せ所なの」

「よっしゃー! 俺が誰よりも栗を集めてみせるぜ」

「はははっ、息子に負けるわけにはいかんな」

「私も、久々の栗拾いだわ。楽しみー」


 僕とルイセイネが禁領に戻ってくると、お客さんが来ていた。

 桃色ももいろの髪が愛らしいミシェイラちゃんと、四護星しごせいのナザリアさん一家だ。


 ミシェイラちゃんたちとは、僕が魔王位争奪戦に巻き込まれた際に、一時身を潜めるために禁領へ来たときに知り合ったんだよね。

 もちろん、僕たちの結婚の儀にも招待した大切な知人だ。


 でも、ミシェイラちゃんの正体は只者じゃない。

 あの剣聖けんせい様や竜神りゅうじん様と同格の、超越者ちょうえつしゃなんだ。そして、ナザリアさん一家は、そのミシェイラちゃんを護衛している。


 一家の中心は、しっかり者のナザリアさん。彼女の旦那さんがセジムさんで、二人の間には二人の子供がいる。

 兄がアゼイランさん。妹がアユラさん。


 僕たちが栗拾いに行くと聞いて、彼女たちも嬉々として参加してきた。


 僕のいない間に、ミシェイラちゃんたちとミストラルたちは随分と親交を深めたみたい。

 なので、栗拾いに参加してくれると賑やかになって嬉しいんだけど……


「あの家族がやる気を見せるだなんて。まさか、毒の栗三昧!?」


 そうなんだよね。

 なぜか、あの家族が見つけてくる食材って、全てが毒や危険極まりないものばかりなんだ。

 唯一まともなのがナザリアさんなんだけど、彼女の気苦労は大変だろうね。


 だけど、僕の心配は杞憂きゆうに終わってくれた。


「おわおっ。栗だよ!」


 どうやら、セジムさんたちの毒属性よりも、プリシアちゃんの満腹ご馳走属性の方が勝ったらしい。

 栗が実る林に到着した僕たちの前に、絶景が広がる。


 晩夏ばんか、禁領だともう秋と言っていい季節の澄んだ太陽の木漏こもれ日を受けて、落ち葉の絨毯が黄金色に輝く。

 そして、栗が所狭ところせましと落ちていた。


「落ちている栗は気をつけなさいな。虫が食っているわよ」

「えっ、落ちているやつを拾うんじゃないの?」


 ナザリアさんの忠告に、僕は振り返って聞き直す。

 栗拾いって言うくらいだから、落ちている栗を集めるものだとばかり思っていたんだけど。


「はははっ。素人だな、エルネア君」


 すると、いつのまに拾ったのか、セジムさんとアゼイランさんは長い棒を手にして威張るように笑う。


「落ちている栗を拾うんじゃない。落ちてきた栗を拾うんだよ」


 そして、長い棒で栗の木の枝を叩き出す二人。


「きゃっ」

「わわっ」


 頭上から、とげとげの栗が落ちてきた。

 僕たちは慌てて逃げる。

 プリシアちゃんと、顕現してきたアレスちゃんは、楽しそうに走り回る。


「プリシア、アレス。お手伝いをしてちょうだいね? そうしたら、美味しい栗が食べられるわよ」

「んんっと、頑張る!」

「がんばるがんばる」


 僕たちは、ナザリアさんたちから手ほどきを受ける。


「いい? 落ちてきた栗は、こうして足でとげを開いて中身を取るのよ」

「むむむ、難しいな」


 片足でとげとげに包まれた栗を踏んで固定し、もう片方の足で踏みつけながら棘をく。

 ナザリアさんは簡単にやって見せたけど、実際にやると意外と難しい。

 下はふわふわの落ち葉で不安定だし、もう片方の足で剥くのにも慣れが必要だ。


「むうう」


 案の定、プリシアちゃんなんて栗を踏みつけるばかりで上手くいっていない。


「ふふふ、貴女たちはこれを使いなさいな」


 すると、ナザリアさんが革製かわせいの厚手の手袋をプリシアちゃんとアレスちゃんに渡してくれた。

 さすがはナザリアさんです。小さな子供が同行するということで、しっかりと準備してきたみたい。

 プリシアちゃんとアレスちゃんは早速手袋をはめると、手で栗を剥き始めた。


「大きいね」

「おいしそうね」


 お土産にいっぱい食べ物やお菓子なんかを持って帰ってきたけど、やっぱり自分たちで収穫して、それを調理した食べ物が一番美味しいよね。


「ようし、いっぱい集めるぞーっ!」

「おおー!!」


 僕の号令に、耳長族の人たちも元気よく応える。


 栗の木の林は、賑やかになった。

 セジムさんやアゼイランさんが、棒で栗の木の枝を叩いて実を落とす。

 耳長族の人たちも、空間跳躍で枝に移動して揺さぶり、いっぱい実を落としてくれる。

 そして僕たちは、頭上に注意しながら回収していく。


「おい、向こうに山葡萄やまぶどうがなっているぞ」

「よし、何人かそっちに向かわせよう」


 どうやら、この辺に実っている秋の味覚は栗だけじゃないみたい。

 耳長族の人たちが山葡萄狩りに向かう。


「今夜はご馳走なの」

「あのね、プリシアはお料理のお手伝いをしているんだよ?」

「まあ、それは素敵なの。それじゃあ、今夜はプリシアのつくった料理も食べさせてね?」

「うん!」


 いいえ。プリシアちゃんは、帰ったら遊び疲れて夕食まで眠っちゃうと思います。なんて突っ込みは置いておいて。

 プリシアちゃんとアレスちゃんと並んで、栗拾いをするミシェイラちゃん。

 ミシェイラちゃんも見た目は少女なので、微笑ましい風景に見える。


 だけど、そんな平穏を打ち砕く騒動が巻き起こった。


「なんだ、こいつ!?」

「気をつけろ!」


 山葡萄狩りに出ていった耳長族の人たちの方から、なにやら切羽詰まった気配と叫びが届く。


「エルネア?」

「うん!」

「ミシェイラ様!」

「わかったの」


 そしてなぜか、鋭い反応を示すナザリアさん一家。それと、ミシェイラちゃん。


 僕たちは揃って、現場に急行する。


ねずみの魔獣?」

「いいえ、違うわ。あれは……?」


 駆けつけた僕たちの視線の先で、耳長族の人たちを襲う巨大な鼠。

 だけど、どうも気配や容姿が普通じゃない。


 鼠は、地竜のように巨大だった。

 全身は、体毛も目も牙も爪も全てが漆黒。光を反射しないその姿は、異様さを通り越して僕たちに不気味な印象しか与えない。

 さらに、漆黒の鼠を見ただけで、なぜか全身に悪寒が走る。

 漆黒の鼠の容姿や強さに関係なく、魂が条件反射的におびえているような。


「貴方たち、退がりなさい。あれは、貴方たちが相手にできるような相手じゃないわ!」


 ナザリアさんの鋭い忠告が飛ぶ。


 どうやら、危険な状況のようだ。

 僕は右腰から霊樹の木刀を抜く。

 だけど、そこで更に思わぬ事態が。


『怖いよ。危険だよ』

「えっ!?」


 抜き放った霊樹の木刀が怯えていた。


 これまで、どんなに強力な魔剣や恐ろしい相手を前にしても揺るぎなく僕と共に戦い抜いてきた霊樹が、怖がって震えている!?


「エルネア、あれに霊樹をぶつけちゃ駄目なの」

「ミシェイラちゃん、どういうこと?」


 霊樹が伝えてくる不安や恐れが伝わって、僕も動悸どうきが収まらない。そんな僕の空いている右手を握ったのは、ミシェイラちゃんだった。


 ミシェイラちゃんの背中に、普段は見えない半透明の四枚の羽が見えた。


「あれは、邪族じゃぞく。世界の敵なの」

「世界の……敵?」


 ミシェイラちゃんたちのような超越者は、世界を平等に俯瞰ふかんしている、と僕は思っている。

 善も悪も関係なく、世界の流れに身を任せ、ときには僕たちのような者に特別な魂を与えたり、あるときにはバルトノワールのような者にも力を与える。

 そんなミシェイラちゃんたちは、世界の誰の敵でもないし、味方でもないんじゃないかな。それが超越した者たちに対する、僕の印象だ。


 だけど、そのミシェイラちゃんが明確に「世界の敵」と言った。

 いったい、邪族とはなんなんだろう?


「はあっ!」


 僕と霊樹が動けない一方で、果敢に攻め込んだのは、竜姫りゅうきのミストラルだ。

 人竜化じんりゅうかこそしていないけど、竜人族を代表する実力を持つミストラルの、渾身こんしんの一撃が漆黒の鼠の眉間みけんに命中する。


 ずがんっ、と鈍い音と共に、衝撃波が林を抜ける。


 漆黒の外見とは違う、青い鮮血が舞う。

 漆黒の片手棍が、骨を砕いて眉間に食い込む。

 だけど、あのミストラルの一撃をして、漆黒の鼠の頭蓋ずがいを粉砕することができなかった。


「くっ!」


 それどころか、自分に攻撃してきたミストラルに向かい、漆黒の鼠が恐ろしい牙を剥く。

 ミストラルは、躊躇ためらいなく後方に跳躍して回避する。


 そのとき、空が割れた。


「とてもとても不味まずい魂でーす」


 ぱっくりと割れた空の狭間から、強大な気配が出現した。

 禁領を守護する千手せんじゅ蜘蛛くも、テルルちゃんだ!


 テルルちゃんが、上空から巨大な爪を振り下ろす。

 ミストラルの一撃の数倍以上の威力で、テルルちゃんの爪が漆黒の魔獣に突き刺さる。


「なんですとっ!」


 だけど、貫通しなかった。


 上級魔族を一撃のもとにほうむるだけじゃなく、勢いそのままに大地を深くえぐるテルルちゃんの爪が、貫通しなかった!?


 ギィ、ギィ、と耳障りな悲鳴をあげる漆黒の鼠。致命傷に至っていないのか、テルルちゃんの爪が刺さったまま暴れようとする。

 そこで、テルルちゃんは更に何本かの爪を振り下ろそうとした。


「テルルちゃん。ここは退がっていて良いの。あたしが対処するの」


 りぃんと、耳障りな漆黒の鼠の悲鳴を打ち消すような、優しい響きが耳を支配する。

 見ると、ミシェイラちゃんが羽を震わせながら浮いていた。


「さあ、みんなも退避してちょうだい」


 ナザリアさんの号令のもと、僕たちは大きく後退する。

 テルルちゃんも爪を引き抜き、空の狭間に戻る。


 漆黒の鼠は、自由を奪っていた爪が身体から抜かれると、青い血を撒き散らしながら突進してきた。

 ミシェイラちゃんに向かって。


「ど阿呆あほうめ!」

「我らがミシェイラ様に触れさせると思ったか!」

「獣型の邪族程度が、調子に乗らないでよねっ」


 ミシェイラちゃんと漆黒の鼠の間に割り込むナザリアさん一家。

 強力な精霊術が発動したのか、周囲の精霊たちが活発化していた。


 七色に光る半透明の壁が立ちふさがり、自然現象のあらゆる手段を持って、漆黒の鼠の突進を止める。

 耳長族の人たちが、腰を抜かして驚愕していた。


「さあ、虚無きょむに帰るの」


 四護星が時間を稼ぐ間に、ミシェイラちゃんの術が発動した。


 りぃん、りぃん、りぃん、と羽が揺れるたびに耳に心地よい音が世界を満たす。それと同時に、景色が変貌する。

 雲ひとつない晴天の空を包むように、いろんな角度から何本ものにじが現れた。そして、虹に囲まれた空が桃色に染まる。

 不思議な現象は、それだけでは終わらない。

 栗の木や森、山といった禁領の自然が消え、足下には満開の花が咲き乱れる。


 花の楽園で、ミシェイラちゃんがうたのような旋律せんりつを口ずさんだ。


 背中の羽が髪と同じ桃色に染まり、優しい音色と共に震える。

 羽が震えると、桃色の鱗粉りんぷんのような光の粒が舞う。

 ミシェイラちゃんが手を前にかかげる。すると、桃色の鱗粉がてのひらの上に収束していく。


 ミシェイラちゃんは唄のような旋律を口ずさみながら、収束した桃色の光を漆黒の鼠に放った。


 ギイイイイィィィッッ!


 桃色の光が漆黒の鼠に命中する。

 鼠は、悲鳴をあげた。

 桃色の光は、漆黒の鼠を包み込む。


 桃色の光の柱が天に向かって吹き上がった。

 光の柱の中で、漆黒の鼠は怪奇な悲鳴をあげながらもだえ苦しむ。

 そして最後に、ずぅん、と花の絨毯の上に巨体を横たえる漆黒の鼠。


 神秘的で美しい風景と優しい音色だけど、どうやらミシェイラちゃんの術は桁違いの威力を持っていたようだ。

 あのミストラルやテルルちゃんでも致命傷を与えられなかった漆黒の鼠を、一撃で倒しちゃうなんて。


 漆黒の鼠は、完全に息の根を止めていた。

 その証拠に、全身が徐々に崩壊していく。

 ただし、肉が崩れ、腐敗していくわけじゃない。

 身体の末端から黒いけむりを上げ、消滅していく。


 満開の花が咲き乱れる風景の中で、漆黒の鼠が消滅していく様子だけが不気味に見えた。


「あら、珍しいこと。邪族の忘れ物だわ」


 僕たちが見守るなか。

 漆黒の鼠は、黒い煙となって消滅した。

 でも、最後に残ったものがひとつだけ。

 ころり、と花の上に落ちたのは、真っ黒に染まった宝玉だった。


「これが邪族の魂? なんだか、魔物みたいだね」


 僕の感想に、ミシェイラちゃんは残った宝玉を拾い上げながら言う。


「違うの。邪族は古い宝玉を媒介ばいかいにして出現することがあるの」

「じゃあ、そうじゃない場合もある?」

「あるの。普通は世界のゆがみや混沌こんとんから生まれ落ちるの。それが邪族なの」


 そういえば、と巨人の魔王が言っていたことを思い出す。

 強力な宝玉は、使用中はとても便利だけど、古くなり過ぎてしまうと、わざわいを呼び起こすと。

 もしかして、場合によっては邪族を生んじゃう?


「今回の邪族は、鼠の姿だったからよかったの。でも、気をつけるの。人や竜といった姿の邪族をみたら、一目散に逃げるの。そして、あたしや誰かに助けを求めるの」


 どうやら、邪族も精霊のように力を持つほど姿を変化させるらしい。

 鼠の姿をした今の邪族でさえも、ミストラルの攻撃があまり効いていなかったことを考えると、人やそれ以上の存在の姿をした相手なんて、僕たちじゃ到底太刀打ちできないよね。


 ミシェイラちゃんは、拾った宝玉を僕へ手渡す。


「もう使い物にならない宝玉だけど、持っておくの。記念なの」

「いやいや、邪族の記念なんていりません」


 とは言ったものの、貰っておこう。

 これからの将来の教訓として。


 気づくと、空は元に戻り、周囲も禁領の自然に戻っていた。

 僕たちは、魂の底から沸き起こる恐怖が消え去っていることにようやく気づき、みんなでほっとため息を吐いていた。

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