精進します、ルイセイネ

「すまないねぇ、こんないぼれの世話を焼かせてしまって」

「いえいえ、なにをおっしゃいますか。こういったことでおばあさんの痛みが和らぐのなら、お安いご用ですよ」


 わたくしは、王都の片隅に建立された小さな神殿を訪れたお婆さんの手を優しくさすります。すると、お婆さんは少しだけ表情を和らげました。


 長年、農作業に従事してきたのでしょう。背中は曲がり、小さい身体がより一層小さく見えます。

 わたくしが先程からさすっている手の皮はごつごつと固く、節々ふしぶしれています。

 ですが、とてもいい手です。

 お婆さんの人生を物語る手を、わたくしはねぎらうようにさすります。


「たまにね、こうして痛むのよ。おじいさんが生きてた頃は薬茶やくちゃれてくれたりもしたんだけどねぇ」

「あらあらまあまあ、仲睦まじかったのですね。わたくしも見習いませんと」


 お婆さんのいう薬茶とは、関節の痛みを和らげる薬草をせんじたお茶のことですね。ですが、効果の割に値段が高く、そうそう気安く購入できるものではありません。

 きっと、生前のお爺さんが家計をやりくりして、お婆さんのために買っていたのでしょう。


 わたくしは、お婆さんの手をさすりながらお話の相手をします。


 ここは、アームアード王国が誇る王都の東部。末社まっしゃと呼ばれる、普段は神職の者が常駐することのない小さな神殿です。

 近所の方々のお話によれば、この末社はみなさんでお金を出し合い、建立したのだとか。

 未だに復興途中の王都です。潤沢じゅんたくな資金を持つ王族や貴族の方々の住まいが優先されたり、商人がお店を建てるのに必死な状況は変わりありません。

 もちろん、平民の方々の住居建設が遅れないようにと、法律なども施行されています。


 ですが、こうした末社は後回しになりがちなのです。

 神殿側も、大神殿の建立に全力を注いでいます。

 神職が常駐する、各地の小神殿も建立しなければなりません。

 そうすると、住宅街や路地裏などにぽつんと建つ小さな末社に回せる予算は限りなく絞られてしまいます。


 とはいえ、人々が日々お祈りをする場所は、王都にひとつしかない大神殿ではなく、各地の小神殿やこうした末社になります。

 ここは近隣の人々によって、毎日のお祈りをささげるために建立された、小さな小さな神殿なのですね。


 人口密度の高い王都の、さらに過密な地域。それは、あまり裕福ではない人々の住まう場所。その小さく割り振られた区画の、さらに半分ほどしかない敷地に、それでも立派に石組みされて建つ末社は、地域の方々の誇りだと思います。


「それにしても、女神様には感謝をしなきゃねぇ。こんな見すぼらしい神殿の建立祝いのために、これほどぺっぴんさんな巫女様を派遣してくれるなんて」

「いえ、こちらの方こそ申し訳ございません。このような形でしかご奉仕できないとは……」


 はて、わたくしはなぜ末社に出向しているのでしょうか。

 エルネア君たちと別れて、上級職に就くために修行を、と大神殿を訪れたわたくしは、気づけばこうして末社で寝泊まりしながら奉仕をする日々です。


 もちろん、末社へと神職の者が派遣された理由はあります。

 建立をしゅくし、女神様のご加護が末長く末社と近隣の人々を包みますように、と重要な儀式を執り行うためです。


 とはいっても、日がな一日儀式を執り行っているわけではなく、日中の大半はこうして近所の方々と交流したり、末社のお掃除などに従事するばかりです。


 お婆さんは、わたくしが手をさすっていると痛みが引いたのか、にこやかな笑顔で帰っていきました。


 さて、それでは、わたくしも今夜の儀式の準備をしなければ。そう思い、作業に取り掛かろうとしたその時でした。


 すたたたたっ、と勢いよく末社に飛び込んでくる影が!


「あっ、ルイセイネだよ!」

「見つけたにゃん」

『我に感謝せよ』

「あらあらまあまあ」


 現れたのは、鶏竜にわとりりゅう様に騎乗したプリシアちゃんと、その頭の上で寛ぐニーミアちゃんでした。


「お三方はどうしてこちらに?」


 わたくしがこちらに出向していることは、エルネア君たちにも言ってなかったと思いますが。

 すると、鶏竜様が胸を張って咳払せきばらいをしました。


『我はこの先の公園にきょを構えておる』

「それで、わたくしを見かけたのですね?」

「あのね。プリシアはお利口に勉強したんだよ」

「それはお疲れ様でした。お勉強を頑張ったので、遊びに来たのですね?」

「逃げて来たにゃん」


 ふふふ、理解しました。

 プリシアちゃんのお母さんは、とても厳しい人です。

 わたくしなどは自分の両親の方が厳しいと感じるのですが、自由奔放に成長してきたエルネア君を代表する方々からすると、逃げたくなるのかもしれませんね。

 ですが、プリシアちゃんとニーミアちゃんだけで王都へ来るのは危険です。

 逃亡してきたとはいえ、おそらく保護者が誰か来ていると思うのですが。

 聞くと、ニーミアちゃんが頷きました。


「ライラお姉ちゃんが保護者にゃん」

「それでは、彼女は今どちらへ?」

いてきたにゃん」

『我の脚力の勝利だ』


 あらあらまあまあ、ライラさんも大変な役目を負ってしまいましたね。

 ですが、逃亡者の面子めんつにエルネア君が含まれていないことに、わたくしは敏感に違和感を読み取ります。


「ところで、プリシアちゃん。エルネア君たちはお忙しいのですか?」

「んんっと、怒られてるよ!」

「今度はなにをされたのでしょう?」

「あのね。ユンユンとリンリンを裸にしちゃったんだって。ユンユンとリンリンがミストに怒ってって言ってた」


 エルネア君、貴方はいったいなにをしているのですか!


 ま、まあ、あのユンさんが自分から裸にされたなんて恥ずかしい報告をするくらいですので、きっとエルネア君以外の部分に非があったのだと思いますが。


「精霊たちの悪戯にゃん」

精霊せいれいさとに行ったんだよ。それでね、綺麗なお花をもらってきたの」


 なるほど、理解しました。

 ユンさんとリンさんは、悪戯が大好きな竜の森の精霊たちの洗礼を受けたわけですね。

 では、エルネア君が進んでお二人を裸にしたわけではない、ということでしょう。

 わたくしも経験がありますので、エルネア君だけを一方的にとがめるのは酷かもしれませんね。


「んんっと、リンリンのおっぱいはルイセイネくらいって言ってたよ?」

「ユンユンの太ももが素敵だったらしいにゃん」

「ミストさん、しっかりとしかっておいてくださいね!」


 わたくしはつい、南に向かって叫んでしまいました。


 は、はしたない。


「はぁはぁ、追いつきましたわ」


 するとそこへ、ようやくライラさんが到着しました。

 全力で走ってきたのでしょう。首もとには薄っすらと汗を光らせて、息を切らせながら末社へと入ってきたライラさん。


「いらっしゃい。せっかく来てくださったので、お茶にしましょうか」

「おわおっ、プリシアはお菓子が食べたいよ?」

いも所望しょもうする』


 ふふふ、わがままさんばかりですね。

 ですが、残念です。


「ここはエルネア君の実家ではないので、そのような贅沢品ぜいたくひんはありませんよ」


 わたくしの無慈悲な宣告に、プリシアちゃんと鶏竜様はむうう、としぼんでしまいました。


「ですが、お手伝いをしていただけたら、明日はご褒美がありますよ」

「今のご褒美がいいにゃん?」

「今は駄目です。ご褒美のためには、しっかりお手伝いをしてもらいませんと」


 末社の裏手には、質素ながら生活空間も確保されています。

 わたくしはそこでお湯を沸かして、ライラさんへお茶を提供します。


「ありがとうございますですわ。生き返りましたわ。ルイセイネ様、エルネア様が!」

「はい。もうプリシアちゃんたちから聞きましたよ。ユンさんとリンさんのことですよね?」


 熱いお茶は、プリシアちゃんには残念ながら不評だったようです。

 プリシアちゃんは、ニーミアちゃんと鶏竜様と一緒になって、末社中を物色しています。

 信仰心など、微塵もありませんね。

 ですが、いくら探し回ってもお菓子はありませんからね?


 わたくしはライラさんと一服いっぷくです。

 ……気のせいでしょうか。先ほどまで、お婆さんと一服していたような気がするのですが。


 ライラさんから、みなさんの近況を聞きます。

 どうやら、精霊たちの移住のお話が進んでいるようですね。

 ですが、まさかユーリィ様が同行してくださるとは。

 これも、エルネア君効果でしょうか。

 エルネア君は意外な大物を釣り上げるのが得意ですからね。


 お茶で喉がうるおったことで、ライラさんはひと息つけたようです。

 では、わたくしもお勤めに戻りましょう。


「さあ、プリシアちゃんたち。お手伝いをしてくださいね?」

「「「「はあーい!」」」」


 わたくしがお願いをすると思いの外大勢の返事が返ってきました。

 どうやら、物色をしてもなにも出なかったプリシアちゃんたちは、近所の子供たちを集めて遊んでいたようです。


 プリシアちゃんに引き連れられて、末社には子供たちが集合しています。

 不思議ですね。

 少し前までは想像もできなかった風景です。

 耳長族であるプリシアちゃんが、人族の子供たちに違和感なく混ざっています。

 ニーミアちゃんも、出会った頃だと人前に出る際には子猫のふりをしていたというのに、いまでは飛んだり喋ったりしても、怯えられたり騒ぎになったりしません。


 これは全て、エルネア君の偉業です。

 ユンさんやリンさんをたまに裸にしたりもしますが、エルネア君は歴史に名を残すようなことをしているのだと、改めて認識させられました。


「んんっと、なにをするの?」


 プリシアちゃんの疑問に、わたくしは道具や素材を準備しながら伝えます。


「それでは、みなさんの手を借りてお団子を作りましょう。今夜は満月ですので、女神様へのお供え物ですよ」


 末社に出向しているとはいえ、わたくしの本分は神職に身を置くこと。

 そして、聖職者には日々のお勤めがあります。

 満月の夜は、夜通しの儀式があるのです。


「お団子は、今夜お供えしたら、明日みなさんで食べましょうね」


 わたくしの提案に、子供たちは喜びの声をあげます。

 一番元気だったのは、言うまでもなくプリシアちゃんですね。

 鶏竜様もお団子に興味があるのか、子供たちに混ざって飛び跳ねています。


「ルイセイネ様、お手伝いいたしますわ」

「それでは、お願いしますね」


 ライラさんも加わり、わたくしたちは満月の夜に向けてお団子製作を開始したのでした。






 そして、夜が訪れて。

 お客様たちもやってきました。


「やあ、ルイセイネ。お久しぶり」

「あらあらまあまあ!」


 儀式の準備をしていると、エルネア君を筆頭に、家族全員が遊びにきてくれました。


 それと、大神殿からは儀式を手伝ってくださる上級神官様と上級巫女様も。

 どうやら、建立されたばかりの末社ということで、人員を多めに回してくださったようです。


 近隣の住民の方々も、本来であれば末社には神職の者が駐在しないことを知っています。

 それなのに三人も聖職者が来たということで、夜だというのに人々が集まり始めました。


「緊張してきました」


 わたくしが呟くと、同席する上級巫女様が頷きます。


「だが、普段通りに執り行えばいいのだ」

「はい」


 上級神官様の助言に頷くと、わたくしたちは儀式を開始します。


 満月が、晴れ渡った夜空に美しく輝いています。

 わたくしたちは祭壇さいだんを前に鈴を鳴らし、太鼓を鳴らし、祝詞のりと奏上そうじょうします。


 エルネア君たちは、末社の敷地で神妙しんみょうに儀式を見守ってくれています。


 小さな末社。

 儀式を執り行うわたくしたちだけでなく、訪れる人々も含めて全員が建物の外。

 ですが、月明かりに包まれているような気配です。

 集っていただいたみなさまにも、この抱擁感ほうようかんが伝わっていれば良いのですが。そう思いながら祝詞を奏上します。


 夜半が過ぎると、子供の姿はなくなりました。

 プリシアちゃんも、ミストラルさんの膝枕で気持ちよさそうに寝入っています。

 ですが、大人たちの来訪は絶え間なく続いていました。

 そして、エルネア君たちも帰ることなく儀式を見守ってくれています。


 上級巫女様が夜神楽よかぐらを舞います。

 上級神官様の低いうたが耳に心地いいです。

 わたくしは、二人の先輩方の足手まといにならないように、必死に笛を吹きます。


 深夜。

 満月は変わりなく夜空に浮かんでいました。

 ですが、末社に人の気配が途絶えることはありません。

 お昼に手をさすってさしあげたお婆さんも、敷地の端で静かに見守ってくれています。

 エルネア君たちも儀式に付き合ってくれています。


 わたくしたちは、見学してくださっている人々の前で夜通し儀式を続けました。

 そして、気づくと東の空が白じみ始め。


 太陽が姿をあらわすと同時に、満月の儀式は終了しました。


「お付き合いくださり、ありがとうございました」


 家族のみなさんだけではありません。近隣に住む多くの方々が夜通しの儀式を最後まで見守ってくださいました。

 なかには、感動してくださったのか、涙を流す人も。


「ルイセイネ様。本当に感謝します。こんな粗末な末社で文句のひとつも言わずご奉仕してくださって。儂らは末長くここを守っていきますじゃ」

「みなさまとこの神殿に女神様のご加護とご慈悲がありますように」


 心から願います。

 地元の方々がなんとかお金を出し合って建立した末社には、みなさんの想いや信仰心が詰まっています。

 わたくしも、その素敵な想いのはしに触れられたことがとても嬉しく思うのです。


「儀式が終わったら、もう帰ってしまうのかい?」

「ルイセイネ様がいなくなったら、寂しくなるねぇ」

「いいえ、まだ任期は残っていますので、最後までご奉仕させていただきますよ」


 儀式が終わると、ここ最近で知り合った近隣の方々がわたくしの周りに集まりだしました。

 そして、口々にわたくしを引き留めたり惜しんでくれるのです。


「あんたには感謝しているんだ。うちの爺さんも、あんたが来てくれて喜んでいたんだよ」

「いつも子供たちの世話をしてくれて、本当に助かっていたんだ」

「この間は、ありがとうさ。おかげで婆ちゃんも元気になった」

「どうだい、良かったらうちの息子を?」

「ふふふ、残念ですが、わたくしにはもう夫がいまして」

「あら、残念だね。きっと、素敵な旦那なんだろうね」

「はい。あちらで儀式を見守ってくださっていたんですよ」

「あらまあ! 見ない余所様よそさまだと思っていたら、ルイセイネ様の旦那さんだったのね?」


 すると、今度はエルネア君が近隣の方々に囲まれ始めました。


 ふふふ、と笑みをこぼさずにはいられません。


 世間では、救世主だなんだと持てはやされているエルネア君ですが、その容姿を誰もが正確に知っているわけではありません。

 わたくしのことも、一等地を丸ごと敷地にする竜御殿りゅうごてんの身内であるなんて知る方々はいませんでした。


 とはいえ、耳長族の幼女を連れていたり、愛らしく人の言葉を喋る子竜を頭に乗せているので、露見するのも時間の問題かもしれませんが。


「さて、みなさんの注目がエルネア君たちに集まっているうちに、片付けを致しましょう」


 騒ぎになってからでは手をつける暇がなくなってしまいますから。と儀式の道具やお供え物などを整理しようとしたところへ、上級神官様と上級巫女様が声をかけてきました。


「ルイセイネよ。どうやら立派に務めを果たしているようだな」

「はい。お勤めですから」


 巫女として当然です、と返事をしたら、上級巫女様が微笑んだ。


「ですが、その当然が難しいのですよ? 神職の者とはいえ、私たちも人です。なまけたいと思う時もありますし、きつい、つらいと感じるのが普通なのです」

「だが、君は腐らなかったようだ。あまりこういったことは言うべきではないのかもしれないが。上級職を目指す者は、当たり前だがこころざしが高い。しかしな。そうした者にこういった末社での奉仕などを割り振ると、嫌がったりするものなのだよ」


 なかには、不平不満を漏らす方もいらっしゃるのだとか。

 なんとなくわかります。

 わたくしも、上級戦巫女じょうきゅういくさみこを目指して大神殿を訪れました。ですが、実際には修行や勉学ではなく、こうして末社での奉仕を頼まれて、首を傾げていましたし。

 ですが、これも立派なお役目ですし、むしろわたくしは楽しかったですよ?


 自分の心を包み隠さず話すと、上級神官様に笑われました。


「ははは、楽しかったか。それは重畳ちょうじょう。だがね、私たちは少し不安でもあったのだ」

「と、仰いますと?」

「ルイセイネが救世主殿の伴侶はんりょなのだとは、大神殿に身を置くものなら誰もが知っている。そして、君は救世主殿と大冒険を繰り広げてきたわけだ。そんなルイセイネは、こうした地味な奉仕を嫌がるのではないかとね」

「ルイセイネは、そんな狭量きょうりょうな女性じゃないですよ! 僕たちといるときだって、毎日のお祈りは欠かさないし、満月の夜にはいつも夜通し儀式を行っているんです。僕たちは、それをずっと見てきました!」


 自らの口で「そんなことはありません」と否定する前に。

 エルネア君が人垣ひとがきを割って現れると、上級神官様に抗議の声をあげてくださいました。


 たしかに、エルネア君たちと一緒にいると、とても楽しく日々が過ぎていきます。ですが、エルネア君が言ってくださったように、巫女としての自覚を見失ったことはありません。

 わたくしも強く頷きます。


 すると、上級神官様は困った表情になってしまいました。


「申し訳ない。心よりお詫びを申し上げる。ですが、これはルイセイネに課せられた試練だったのです」


 上級神官様は、エルネア君とわたくしに深々と頭を下げます。

 上級巫女様も、申し訳なさそうな顔をわたくしに向けていました。


「ルイセイネは大神殿に所属する戦巫女ではありますが、普段はエルネア様と行動を共にしております。ですので、他の聖職者の目が行き届かない場所で彼女が正しく務めを果たせるのか、と私どもは見極めなければいけなかったのでございます」


 ああ、それで末社への出向だったのですね、と大神殿の本意を理解しました。


「ですが、それは杞憂きゆうだったようですね。集まった人々の様子を見ればわかります。貴女はよくしたわれているようです」

「腐った心の者の周りには、笑顔は集まらない。この、人々の笑顔こそがルイセイネの巫女としての資質を表している」


 エルネア君を中心に、騒ぎが広がると思ったのですが。いつのまにか、儀式を見守ってくださっていた人々はこちらへと集まり、口々にわたくしをたたえてくれていました。


「ルイセイネよ。残りの奉仕も正しく務めあげなさい。そして大神殿へ戻ったおりには、君を上級職へ推薦すいせんしよう」

「で、ですが、わたくしは戦巫女でございます。実力を図ったりなどは?」

「何を言いますか。エルネア様と竜峰へ赴いた貴女の実力を疑う者などいませんよ」


 一流の冒険者だって、尻尾を巻いて逃げ出してくる土地なんですよ。と集まった方々に笑われてしまいました。


「ルイセイネ、おめでとう!」


 そして、わたくしは大衆の面前でエルネア君から強く抱きしめられて、顔を赤くするのでした。

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