幸福と不幸

「我ら十氏族じゅっしぞく、竜王エルネア様と奥方様たちに、永遠の忠誠ちゅうせいを誓います!」

「えええぇぇぇっっ!」


 魔族の人たちが集う区画を訪れると、いきなり大勢の魔族にひざまずかれて、すごいことを言われちゃいました。


 彼らは死霊都市しりょうとしに避難してきた魔族で、現在でもあそこで生活をしている人たちの代表団。そのなかでも、僕とルイララが道中に助けた人たちだった。

 助ける際に、僕が関わったことを示す証拠として、千手の蜘蛛の糸を一本渡したんだけど。糸を一族の家宝にして、代々受け継ぐ。そして自分たちは、僕とその家族の永遠のしもべだ、なんて言い出して、僕は慌てて逃げ出した。


 どうやら彼らは、僕のことを過小評価していたらしい。

 助けてもらった。人族でありながら、地方に都市を所有している。巨人の魔王とも面識があるようで、魔王位争奪戦にも参加していたようだ。という認識は持っていたようだけど。

 この日のために竜人族の案内で竜峰を越えて、こうして多くの種族と大勢のみんなに祝福されている姿を見て、改めて僕たちのことを認識したらしいです。

 まあ、魔族の間で知らない者はいないという巨人の魔王が、婚姻の立会人になっていたくらいだからね。

 そういうわけで、僕を見る魔族の一団の視線がとても眩しいです!


 困りました。

 だって、ここで魔族の家来とか作っちゃって他の種族に認知でもされようものなら、また魔王の話が盛り帰ってきちゃう可能性があるからね。

 現場を目撃していたルイララとシャルロットがにやにやしていた。

 あれはきっと、巨人の魔王に報告してまた騒ぎたてようと企んでいる顔だ。


 死霊都市の運営を代行してもらっているメドゥリアさんは、ミストラルたちと仲良く談笑していた。

 逃げ出した僕は戻れるはずもなく、仕方がないので隣の区画へひとりで向かう。

 すると、草原に直座りをした獣人族と耳長族の人たちが歓談していた。


 なにやら、森や自然について語り合っているみたい。

 耳長族も獣人族も、自然とともに生きる種族だからね。自分たちが暮らす自然とどう向き合うのか、なんて難しい話題のようです。

 話は盛り上がっているらしく、せっかく僕が回ってきたというのに、蚊帳かやの外だ。


 しくしく。

 華やかなお嫁さんたちが居なければ、僕はこういう扱いなんですね。


「エルネア君、こちらにおいでなさいな」


 すると、悲しんでいる僕を見つけてくれたユーリィおばあちゃんが手招きしてくれた。

 ユーリィおばあちゃんの隣には、ジャバラヤン様の姿も。

 二人を合わせるとスレイグスタ老の年齢になる超高齢のおばあちゃんたちは、お肌つやつや、髪にもうるおいのある元気な姿だ。


 うむむ。

 スレイグスタ老のおかげですね。


 おばあちゃんのところに行くと、プリシアちゃんのお母さんが飲み物を持ってきてくれた。

 霊樹の雫だ。

 これもまた、貴重な飲み物だよね。

 僕の家族はよく口にしているけど、本当は耳長族へのお土産になるくらいの大切な水だ。

 霊樹の大樹が見える竜の森の深部に行ける者は限られている。なので、早朝に霊樹の雫を集める役目は、もっぱらミストラルや僕たちになる。

 そして、毎日少しずつ集めた雫はこうして振る舞われたり、耳長族の手によって醸造されるわけだね。


「立派な装いだわねえ」

「素敵な儀式でしたよ」

「ありがとうございます。協力してくれたみんなのおかげですよ」


 賑やかな会場だけど、おばあちゃんたちの傍にいると、ほっこりと寛げる。

 緊張の儀式と大変な挨拶回りのなかで、僕はちょっとだけ息抜きをすることができた。


 そういえば、耳長族の次期族長と獣人族の宗主はどこに行ったんですかねぇ……

 ちらりと探してみたら、なんと謎の集団の輪に入ってお菓子を食べていた。

 さすがは、恐れ知らずのちびっ子たちだ!

 巨人の魔王からは、あの集団への挨拶は最後か、もしくは挨拶なんてしなくていい、と言われているんだよね。

 さすがに挨拶なしとはいかないだろうけど、今のところは様子見です。


「そういえば、おばあちゃんたちはなんだか最初から仲が良かったように見えたけど、もしかして知り合いかな?」


 千年以上も生きている二人だし。もしかして過去に会ったことくらいはあるのかな、と聞いてみるとあんじょう、知り合いだった。


「魔女と世界中を旅しているときに、出会ったわねえ」

「ふふふ。ユーリィはお転婆てんばでしたね。よく魔女に怒られている姿を見ました」

「えええっ、おばあちゃんがお転婆だったの!?」

「プリシアちゃんは、ユーリィの影響ですね」

「おやまあ。さすがの私でも、あの方々に気安く話かけるほどではなかったわねえ」

「……やっぱり、おばあちゃんたちはあの集団を知っているんですね」


 どうやら、おばあちゃんたちはあの謎の集団を知っているらしい。

 なぜか巨人の魔王は知っていて当然、と思い込んでいたけど、まさかここにも知っている人たちがいたとは。

 こうなると、もしかするとスレイグスタ老やアシェルさんも知っているかもしれないね。


「あの人たちは誰ですか、と聞いても教えてはくれないですよね?」

「それは、挨拶をしてからのお楽しみだわね」

「ふふふ、エルネア君も私たちの仲間入りかしら?」

「えええっ、僕もおばあちゃんになっちゃうの!?」

「それを言うなら、おじいちゃんじゃないかしら?」

「あっ、おかえり!」

「おかえり、じゃないですよ」

「エルネア君だけ逃げたわ」

「エルネア君だけ休憩しているわ」

「エルネア様、喉が乾きましたわ」

「はい、どうぞ」

「ありがとうございます。私だけ、エルネア様にお水をいただきましたわ」

「ライラさん?」

「エルネア?」

「「うひっ」」


 魔族への挨拶を済ませたミストラルたちがやってきた。

 みんなもおばあちゃんたちの近くに座り、ちょっと休憩です。


 挨拶回りをしている間に太陽は中天を過ぎ、西に傾き始めていた。

 お腹も空いてきていたので、ちょっとだけおつまみを頬張りながら談笑する。

 自然について語り合っていた耳長族と獣人族も、綺麗な女性陣が来たので集まってきた。


 しくしく。

 やっぱり僕は女性陣のおまけだったんですね。


 楽しい時間だったけど、いつまでもこの区画に滞在しているわけにはいかない。

 まだまだ、挨拶回りをしなきゃいけない場所はたくさん残っているからね。


「それじゃあ、次は竜人族の区画へ行きましょうか」

「あれは、もう少し放置していた方が楽しいんじゃないかな?」

「エルネア君、人の不幸を楽しんではいけませんよ」

「エルネア君にめられたわね、可哀想だわ」

「エルネア君の罠にかかったわね、ご愁傷様」

「犠牲者が他にも出ていますわ」


 みんな揃って、竜人族の区画を見つめる。

 ごく一部の人たちが悲鳴をあげていた。

 なかでも、ジルドさんとザンが悲惨だ。


「仕方がないなぁ、助けに行こう」


 重い腰を上げて、みんなで移動する。

 なぜか、耳長族や獣人族の人たちも面白がってついてきた。


「ぐぬぬ、エルネア君、儂を嵌めよったな!? ……ぎゃあっ」

「前に言ったじゃないですか。後悔しても知らないんだからねって」

「くそっ。エルネアよ、あとで覚えていろよ! ……や、やめろっ。やめてください!」

「ザン、アネモネさんが嫉妬の目で見ているよ」

「うふふ、ジルドは数百年ぶりなんだから、もっとこっちへいらっしゃいな。ザンといったかしら? 鍛え上げられた肉体が素敵だわね。ふふふふ……。そうそう。エルネア君、素敵な儀式だったわよ。感動して涙が出ちゃったわ」

「いやいや、アイリーさん。それは感動の涙じゃなくて、笑い転げての涙ですよね?」


 竜人族に訪れた災厄さいやく

 それは、アイリーさんの参加だった。


 見た目は女性、心も女性。だけど、その正体は……!


 僕たちは本人の希望通り、アイリーさんの儀式への参加をジルドさんたちには伏せていた。

 そして、七百年ぶりに竜の墓所から離れたアイリーさんは、思いっきり羽目を外していた。

 役三百年ぶりに会ったジルドさんに、洗礼の口づけを。

 ジルドさんの頬やおでこには、たくさんの唇の跡が。


 なるほど、ジルドさんがあまり竜の祭壇を訪れたがらないはずだ。

 もしかして、僕に監視者がついていなかったら、同じような有様になっていたのだろうか。

 そう考えると、ぞくぞくっと背筋をなにかが通り抜けた。


 そして、犠牲者はジルドさんだけに留まらず。


「まさか、イドまで犠牲になっているとは……」

「おい、貴様。このむくいは必ず受けてもらうからな。……ぐふっ」


 どうやらアイリーさんは、素敵な肉体の殿方が好みらしい。

 ザンやイド以外にも、多くの竜人族の戦士が犠牲になり、いたるところに唇の跡を付けていた。


「アイリーさん、ほどほどにね?」

「今の時代の子たちは、寛容ね。気に入ったわ。これなら、たまには竜の祭壇さいだんを離れてもいいかしら」

「これがあの、伝説の……」

「おそろしや、おそろしや……」


 アイリーさんも、竜人族のなかでは伝説の戦士だ。

 でもまさか、その人が竜の祭壇を護っている人物と知っている人は、ほとんどいなかったみたい。

 これは、アイリーさんにも竜人族の人たちにも素敵な引き合わせだったんじゃないかな。これを機に、竜峰のみんながもっと団結してほしいね。


 阿鼻叫喚あびきょうかんな竜人族の区画を早々に抜け出して、僕たちはなおも挨拶廻りに奔走する。

 時間はいくらあっても足らずに、太陽は傾いていく。


「そろそろ帰る人もいるだろうから、次に移りましょうか」


 ミストラルの合図で、僕たちはまた舞台へ。

 ちょうど、京劇の第三幕が終了したところだった。


 人族の文化に、他の種族も楽しそうに見入っている。

 なかには、スラットンという巨漢女は誰だ、紹介しろ、なんてリステアたちに詰め寄る物好きな人も……

 よし、スラットンの女説が定着しているぞ!


 儀式の主役である僕たちが舞台に上がると、各地で騒いでた人たちもこちらへと注目しだした。


「はいはーい。これから、引き出物の抽選会ちゅうせんかいをしますよー」


 今度の進行役はリリィ。

 大きなかねを器用に持って、からんからんっ、と鳴らす。


 すると、引き出物の抽選会? と首を傾げる会場のみんな。


「みなさん、来場のときに受け取った案内図はきちんと持ってますかー。捨てちゃった人なんかは、また近くの巫女さんや神官さんに貰ってくださいねー。案内図の右下に、抽選番号が記入されてますからねー。竜や魔獣たちは、手や尻尾や身体のどこかに番号を書いてもらっているはずですよー」


 そうなのです。案内図は、抽選券という役割もあったのです。

 そしてこれから行われるのは、大規模な抽選会ですよ!


 ……引き出物なんですけどね。

 最初はちゃんと、来賓分の数を揃えようと努力していたんです。だけど、お客さんが増えすぎちゃって、さすがに手に負えなくなりまして。

 身内や、特に親しい人たちにはきちんと配るんだけど、それ以外は残念ながら、抽選に当選した人に配る、と変更していた。


 舞台に運ばれてくる木箱。

 このなかに、配った案内図や身体に書かれた番号と同じ数字の札が入っている。僕たちがそれを引き、見事に当選した方へは素敵な景品が配られます。


「いったい、なにが配られるんだ?」


 いい質問です。会場からの声に、にやりと笑みを浮かべる。

 引き出物の中身を知らなきゃ盛り上がらないからね。


 舞台には、多くの引き出物が運び込まれてきた。


「この飾りは、竜の骨や牙から作られた御守りです。僕たちがひとつひとつ彫って力を込めていますよ!」


 ルイララの魔法で、広い会場に僕の声が拡散する。


 僕たちの手作り、という部分にはあまり価値がないかもしれないけど、素材が素材だからね。会場から盛大な歓声が上がる。

 さらに、景品を説明していく。


 当たりは、この御守り。他にも、手のひら程度の大きさだけど千手の蜘蛛の糸を使った生地や、霊樹の雫。もちろん、霊樹の雫を醸造したお酒もある。

 さらに、大盤振る舞い。

 スレイグスタ老と霊樹の精霊さんの特別な許可を得て手に入れた、霊樹の果実。残念ながら種である宝玉は配られないけど、果実も超貴重な品で、なによりもほっぺたが落ちるほど美味しい。

 さらにさらに!

 ヨルテニトス王国やアームアード王国への旅行券。これは、人族にはそこまで価値はないかもしれないけど、他の種族には嬉しい景品じゃないかな。あとは、獣人族の村や竜峰、それだけじゃなくて、魔族の国への旅行券もある。

 なぜか、魔族の国への旅行券には顔を青ざめさせる人がたくさんいた。

 でも、本当に素敵な景品だと思うよ?

 魔族の国々のなかでも繁栄している巨人の魔王の国に行けて、至れり尽くせりの内容になっている。どの旅行券にも食べ放題の特権が付いているから、竜族や魔獣たちも嬉しいと思うんだ。


 こうした豪華な当たり商品はあまり数がないけど、他にも引き出物はいっぱい準備している。

 耳長族の織物、獣人族の毛皮、竜峰産の宝石や玉。さらに、アームアード王国とヨルテニトス王国の国庫から呪力武具。

 巨人の魔王から魔剣とかも貰ったけど、魔族以外が装備すると呪われるので、景品にはできませんでした。ああ、魔族への景品にはなるのかな?

 さらに、魔獣が狩ってきた下手物げてものとか、竜族が狩ってきた珍獣。あとは食材やお酒、竜族や魔獣に跨がれる権利なんてものもある。

 どれもが、この儀式に協力してくれたみんながこころよく提供してくれたものだ。


「さあさあ、早速ですが抽選行きますよー! まずは景気づけとして、いきなり当たりの引き出物をひとつ出しちゃいまーす! まずはこれ、僕たちお手製の御守りです」

「『おおーっ』」


 初っ端からの大盤振る舞いに、会場が熱気を帯びた。

 僕は木箱に手を突っ込み、ごそごそと中身をかき混ぜる。そして、一枚の札を取り出す。

 会場のみんなは、舞台の僕たちと自分の手にする番号を交互に見つめる。


「最初の幸運者は……!」


 番号を読み上げると、会場はざわざわと騒ぎ始めた。

 自分の番号じゃない。誰だ、誰が当選したんだ!? 隣の人の番号を覗き込み、周りの者たちと確認し合う。


 だけど、なぜか当選者が現れない。


 むむむ。

 いきなり当選者のいない外れの番号だったのかな?

 案内図はたくさん配ったし、リリィの言ったように、それを捨てちゃった人もいるからね。だから、当選者が出ないことも想定されてはいたんだけど。


 まあ、当選者がいないなら、仕方がない。

 気を取り直して、また木箱に手を突っ込もうとした。

 そのとき。

 舞台から離れた場所で、恐る恐る手を挙げる人が現れた。


 会場がざわめき、一気に注目される人物。


「はいはーい、迎えに行きますからねー」

『お任せお任せっ』

『運んできますよぉー』


 フィオリーナとリームが飛び立つ。

 二体の子竜は仲良くひとつのかごを吊るしている。

 広い会場だからね。当選者は、フィオリーナとリームの吊るした籠に乗って、舞台まで来てもらいます。


 子竜とはいえ、フィオリーナとリームの姿に戸惑う当選者。だけど、周りにはやされて籠に乗り込むと、舞台に運ばれてきた。


「え、ええっと……」


 だけど、舞台に上がっても当選者はおどおどとしている。


 それもそのはず。

 一発目で当たりを引いた人は、普通の冒険者だった。

 セフィーナさんから配られた招待券で来てくれた人だね。

 まだ二十代前半くらいの、普通の男性だ。


「おめでとうございます!」


 僕たちは、舞台で戸惑う男性に微笑みかける。

 それでも、男性は挙動不審に目を泳がせていた。


「緊張することはないですよ?」


 巫女のルイセイネが優しく話しかけると、男性は震える声でようやく反応した。


「あ、ありがとうございます。……でも、俺は受け取ることはできないっすよっ」

「どうしてかしら?」

「不満なのかしら?」

「い、いいえ……。だって、俺みたいな普通の冒険者がこんな高級品を受け取ったら、絶対に狙われるっす……。大切にしたいけど、守りきれないっすよ!」


 軟弱な男性の言葉に、会場がどっと笑いに包まれた。


 たしかに、分不相応なものを持っていれば、悪どい人に狙われて奪われちゃうかもしれないね。そう考えると、この男性にとっては当たりを引いたのではなく、不幸を引いたのかもしれない。


 それじゃあ、他の希望の品に変更しますか、と聞こうとしたら。


「よし、その弱っちい心と身体を鍛えてやろう! おまけの追加だ。お前さんと仲間を、我らの地へと案内しようではないか!」


 太っ腹な提案をしてくれたのは、獅子種のフォルガンヌだった。


「竜王たちのせっかくの品だ。それを今の自分には相応しくない、という理由だけで手放すのは愚か者だ。貴様も戦士だろう。ならば、贈られた物を所持するに相応しい者になる努力をすべきだ。それとも、人族の冒険者とはその程度のものか?」


 フォルガンヌの言葉は、舞台の上の男性だけに向けられたものじゃない。

 会場には他にも大勢の冒険者や、普通の人がたくさん来ている。なかには、これから当選した引き出物に二の足を踏む者が他にも現れるかもしれない。

 だけど、フォルガンヌはそうじゃない、と言っているんだ。

 僕たちの気持ち。感謝の心がこもった引き出物を所有できる立派な者になれば良い。そのためには協力するし、他の者も協力してやれ、とみんなを促している。


「ほう。見た目だけでなく、気概きがいも男前だな。ようし、そういうことなら竜人族も手を貸そう!」


 イドがフォルガンヌの考えに賛同すると、次々に有志が現れだした。


「貴族として、私たちが支えられる部分もあるだろう」

「くっくっくっ、謀略で魔族に敵う者はいない。よかろう、悪巧みをする者を阻む悪知恵を教えてやる」

『なんだ、面白そうだな』

『仕方ないなぁ』


 任せろ、協力する、という手が会場の各地から挙がる。

 思わぬところで、種族を越えた繋がりが生まれようとしているみたい。


「それで、どうするのかしら。此の期に及んでも躊躇うのかしら?」

「だめですわ。ぜひとも受け取って欲しいですわ」

無理強むりじいはしないけど、もったいないと思うよ? 僕もこういう風に周りに助けられて、今があるんだし」


 男性は、会場の声と僕たちの後押しにより、御守りを受け取ってくれた。


「お、俺は……。エルネア様のような立派な男になってみせる!」


 男性の宣言に、会場はより一層の歓声で湧き上がった。

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