北の魔女

「ちょっと、またどくさちばっかり!」

「ま、待てっ、ナザリア。このきのこは……」

「これひとつで、百人は殺せるわね」

「へ、変だな……。では、この木の実と野草はどうだ!?」

「毒、毒、毒!」

「はっはっはっ。父さん、情けないな」

「アゼイラン、あんたの獲物は臭すぎて食べられないよ!」

「えええええぇぇぇぇっっ!」

青猪あおいのししさばかずに持ってきて正解だ。これの肉は匂いだけで人を昏倒させる」

「じゃ、じゃあ。この大蛇は……」

「毒!」

「鹿は……」

「鹿じゃない、魔獣だ! もちろん、食べられたもんじゃないよ!」

「ふふふー。男どもは情けないわ」

「アユラ!」

「は、はいっ!?」

「この魚は鱗と骨ばっかり。こっちは泥臭い。あれは毒!」

「しくしく」


 出ました、空間転移! と感動する暇もなく。

 一瞬で戻って来た廃墟の村では、ナザリアさんにおしかりを受けるセジムさんとアゼイランさんとアユラさんの姿があった。


 ……残念です。

 僕を尾行し、獲物を奪っていった極悪三人衆。

 だけど、アレスちゃんの方が上手だった。

 僕は気づけなかったけど、どうやらアレスちゃんは尾行に気付いていたみたい。それで、横取りされそうなときには、あえて駄目な食材に僕を導いていた。それに気づかず、極悪三人衆は奪っていきました。

 朝の鬱憤うっぷんも、この情けない姿を見られたおかげで晴れていくね。アレスちゃんも満足顔です。


 怒られている三人とナザリアさんは、取り込み中。帰ってきた僕たちに、まだ気づいていない。


 それにしても。

 スレイグスタ老のような大仰おおぎょうな術式を展開するまでもなく、僕とアレスちゃんを取り込んで空間転移を発動させたミシェイラちゃん。

 もしかして、一番怖いのはミシェイラちゃんなんじゃないでしょうか……


 ミシェイラちゃんの空間転移に感動したり驚愕きょうがくしたり。


 ところで、僕たちだけ帰ってきたけど、魔女は良かったのでしょうか?

 確認すると、魔女の姿は見当たらなかった。


 ミシェイラちゃんがあと一回、往復するのかな?

 確認しようとしたら。


 きらきらと、星のかがやきのような光の粒が近くで乱舞し始めた。

 光の粒は瞬く間に増えていき、夕方前の廃墟の村に星屑ほしくずの空間を作り出す。


 村の異変に、怒り心頭のナザリアさんや怒られて縮こまっていた三人も気づく。


 なんだ、と全員が注目する先で。

 星の輝きが集まったかと思った瞬間。

 そこに、意識のない黒髪の女性を抱いた魔女が出現した。

 光の粒が余韻よいんのように、魔女と女性の周りに漂っている。


 魔女も空間転移ができたんだね。

 恐れ入りました。


「ま、魔女……」


 顔を引きつらせるアゼイランさん。

 どういうことか、と魔女から僕たちに視線を移すアユラさんとセジムさん。


「お兄ちゃんが誘ったの」

「はい。僕が誘っちゃいました!」


 正々堂々と、自分の行いを認めます。


「魔女を懐柔かいじゅうするなんてね……。なるほど、これがエルネアという子なのね。改めてよくわかった」


 少し呆れ気味だけど、やれやれと僕を見て笑うナザリアさんに、僕もあははと笑い返す。


「すまぬな。世話になる」

「はい、どうぞ。その衰弱の子は、そっちに横にして。それと、頼れる人がいないから、手伝って」

「わかった」


 ナザリアさんと魔女は軽く言葉を交わすと、それぞれに動き出す。

 魔女は、示された建物跡の方へと黒髪の女性を運ぶ。

 ナザリアさんは、毒の幸を遠くへと容赦なく投げ捨てて、僕の方へとやって来た。


「はい。君の集めたものをちょうだい」

「ナザリアさんも僕を尾けていたんだね」


 手ぶらの僕が大量にいろんなものを手に入れていると知っているのは、監視していたからだ。


 アレスちゃんにお願いして、本日の収穫を出してもらう。


「大漁だね。でも、ちょっと多すぎやしない?」


 断崖だんがいで身動きできなくなっていた山羊やぎが二頭。森で狩った鹿と猪。草原を走っていた鳥。お魚いっぱい、森や山の幸もいっぱい。ついでに、まきになりそうな枝なども収集してきていた。

 僕ひとりじゃ持てないけど、アレスちゃんの謎の空間は大容量です。


「今後のことも考えて、少し多めに取ってきたんです。それで、少しお願いが……」

「なんだい? 今朝のびというわけじゃないけど、ある程度のわがままは聞いてあげる」

「それは良かった。実は、これからもしかすると、長期間の食べ物が必要になるんです。でも、僕は保存食の作り方を知らないので」

「ああ、それなら任せて。肉は燻製くんせいに。魚は干したり野菜は漬けたり。手を貸そう」

「ありがとう! 食糧難のナザリアさんたちにも分けるので、お願いします」

「それは助かるね。それじゃあ、明日以降ももう少し集めてもらおうか」

「お任せあれ」


 交渉成立。

 僕はナザリアさんに保存食を作ってもらう。ナザリアさんは、食料の備蓄びちくを増やせる。

 お互いに利益になる、いい交渉でした。


 早速、アレスちゃんが放出した食材を分別しだすナザリアさん。今夜の分を指定し、残りは明日以降に手を加えるために、僕たちへと的確に指示をだす。

 セジムさんたちは昨日のように精霊さんを召喚し、ナザリアさんの手伝いをさせていた。


「エルネアは短刀を持っていないの?」


 白剣で大胆だいたんに鹿の肉を捌きにかかった僕を見て、アユラさんが笑う。

 所持していないことを伝えると、懐から一本の短剣を取り出して、手渡してくれた。


「貸してあげる。切れ味は最高よ」

「ありがとうございます」


 短剣をさやから抜く。そして、おお、と驚く。

 短剣は、金属製じゃなかった。細かい縞模様しまもようの入った美しい鉱石の剣。うねうねと地層のような黄色や赤や青の筋が、黒い刃の表面に浮いていた。

 短剣を鹿の後ろ足の内側に差し込む。するりと剣先が肉の隙間に滑り込む感覚は絶妙だ。


 僕とセジムさんは、肉の解体に明け暮れた。アゼイランさんは山菜の種類分け。アユラさんは、分けられた野菜や果物をつぼに漬け込んだり、干したりする。

 壺は、土の精霊さんに即席で作らせていた。

 なるほど、精霊さんはこういうときに便利だね。


 黒髪の女性を寝かせた魔女は、ナザリアさんと一緒に夕食を作り始めていた。

 今日は食材が豊富だから、夕食が楽しみです。


 アレスちゃんは、ミシェイラちゃんと並んで焚き火の前に座り、お芋が焼けるのを待っている。

 紫色のお芋です。美味しいのかな?

 夕食前に食べ過ぎちゃうと、お腹いっぱいになっちゃうからね。と注意をすると、幼女と少女は「はーい」と元気よく手を挙げて返事をした。


 手際よく作業をしたけど、量が多い。

 気づくと、空は薄暗くなり始めていた。


「今日は終了。ご飯にしましょう」


 ナザリアさんと魔女が大量の料理を焚き火の周りに並べる。

 机なんてないからね。地面に敷物を広げて、そこに食べ物を置いていく。みんなは、食べたいものを自由によそって食べる。


 解体途中や加工前のお肉は大丈夫なのかな、と心配したけど。それは夕食後に、ナザリアさんと魔女が手をつけるらしい。

 さすがは主婦です。しっかりしているね。

 魔女も、意外と家庭的です。未だに外套を深く被っているので容姿はわからないけど、言われていたような怖い印象はない。ただし、あまり社交的ではないのか、ナザリアさんとミシェイラちゃん以外とは接点を持とうとしていない雰囲気があった。


「ところで」


 ミシェイラちゃんが無造作に魔女へと近づいていった。


「いつまでも顔を隠すのは失礼なの。知らない仲じゃないし、食事中くらいは顔を見せなさい」


 言ってミシェイラちゃんは、飛び跳ねて魔女の外套の頭巾部分を後ろにはじいた。

 魔女の顔が、夕方の廃村のもとに晒された。


 僕とセジムさんとアゼイランさんがほうけた。


 外套と同じ、真っ白な肌。長く美しい銀髪。全てを超越した美貌びぼう

 王都や大きな都市や街では、有名人や架空の英雄、美女の版画絵が売られている。王宮や美術館、貴族やお金持ちの人のお屋敷には、美しい彫刻や絵画が飾られている。

 でも、そうして人の手が加わり美化されたどのような美術品や芸術品も、足もとに及ばない。

 あらわになった絶世ぜっせいの美貌に、男三人衆は一瞬で魅入ってしまっていた。


「こほん」


 と咳払せきばらいが耳に入り、慌てて魔女から視線を逸らす。

 女性の顔を無遠慮ぶえんりょに見つめるのは失礼になっちゃうからね。

 セジムさんとアゼイランさんも白々しらじらしい態度で視線を逸らしていたけど、ナザリアさんとアユラさんに白い目で見られていた。

 というか、セジムさんとアゼイランさんは魔女を知っていたんだよね。それでも魅了されるくらいの美しさ。魔女が普段から外套を深く被っている理由は、この辺りにあるのかもしれない。


「さあ。ご飯なの!」

「ごはんごはん」


 幼女と少女は、僕たちのちょっと気まずい雰囲気なんて知らない顔で、並べられた夕食に飛びつく。

 自分のお皿にお肉や野菜を山盛りにして、座っていた場所に戻る。そしてお祈りもせずに、もぐもぐと食べだした。


「さあ、冷える前に食べてしまおう。せっかくのご馳走ちそうだからね」


 ナザリアさんは大きくため息を吐いたあとに、アユラさんや魔女、そして僕たちにも食器を渡してくれて、自分も好きなものを取って食べ始めた。


「いただきます」


 こういうときに遠慮をしていたら、損をしちゃうからね。

 僕もお皿を山盛りにして、アレスちゃんの横に座って食べ始める。

 みんなで焚き火を囲み、美味しい夕食でお腹を満たしていく。

 魔女もお皿に少しだけ盛って、ナザリアさんの横に座って食べ始めていた。

 焚き火の炎に照らされた魔女の頬がほんのりと色づいていた。


「ところで、魔女……さんは禁領でなにをしていたんですか?」


 そういえば、魔女さんの名前を知りません。

 呼び捨てにするのも失礼だし「魔女さん」と呼んでも良いのかな?


「そういえばそう。あの子を連れて、なにをしていたの?」


 僕の質問に、ミシェイラちゃんが頷く。

 ミシェイラちゃんも、魔女さんがなにをしていたのか知らないんだね。やはり、知り合いでも同じ仲間、というわけじゃないのかな。

 勝手な思い込みで、超常の者たちは同じ思想、同じ思惑おもわくで動いていたりするものだと決めつけちゃっていたけど。こうして見ていると、計り知れない存在の方々にも色々な立場があるんだな、と知ることができた。


「どこからの知識かは不明じゃが、愚か者が昔の遺跡を掘り起こしたようでな。それの後始末をしておった」


 昔の遺跡……?

 ふと、とある古代遺跡が思い浮かぶ。


「そういえば。満月まんげつとびらが開いていると聞いていたのを忘れていたの。でも、それは貴女ひとりで片付けられるものなの。まだいたりに達していないあの子を連れてくる必要はないと思うの」

わらわが、あれにやらせてみたかっただけじゃ」

「それで、上手く再封印できたの?」

「さすがに、短期間で三箇所は厳しかったようじゃがな」

「ふううん。それであの衰弱なのね」


 僕以外の人たちが、うんうんと頷いていた。

 初めて聞く単語が幾つかあったけど、やはり魔女さんと黒髪の女性は……

 三箇所の昔の遺跡……


 アレスちゃんは会話に参加することなく、一心不乱にお皿に盛られた食べ物を口に運んでいる。

 やれやれ。本当に、誰に似たんでしょうね。

 おかわりでさらに山盛りのお肉や果物を取ってきた姿を見て、僕たちはアレスちゃんの愛らしさに笑いあう。


 ナザリアさんは、いつも食糧難だと愚痴っていたけど、調味料は豊富に持っていたみたい。

 味付きの美味しい夕食に、僕だけじゃなくミシェイラちゃんやナザリアさんたちも満足そうだ。

 魔女さんも、言葉数は少なかったけど、居心地の悪いような雰囲気ではないように見える。

 魔女さんは、もっぱらナザリアさんやミシェイラちゃんと言葉を交わしていた。

 どうやら、僕を含めた男どもは相手にされていないらしい。とはいっても、無視されているわけじゃない。質問すれば応えてくれるし、少しだけこの地域のことを教えてくれたりもした。


 この廃墟の村は、二千年以上前に聖女が住んでいた場所らしい。

 魔族が支配するよりもずっと前から存在する神聖な場所で、こうした土地が大陸には幾つかあるのだとか。


「僕も世界をまわって、そうした場所に行ってみたいな」


 と感想を漏らすと、魔女さんは口角を少しだけ上げて、微笑んでくれたように見えた。


 ご飯を食べ終え、談笑を少しして。

 完全に空が暗くなっていた。


「今日はいつも以上に働いたおかげで、眠くなってきちまった」

「父さんは昨日から寝ていないしな」

「セジムさん、寝てないんですか?」


 大あくびをしたセジムさんを驚いて見つめる。


「それじゃあ、今夜は僕が夜の警備をしますね」

「悪いな。途中で代わるから最初は頼む」


 今夜は、順番で夜の警備をすることになった。

 最初は僕で、次がアゼイランさん。セジムさん、アユラさん、と続くらしい。

 僕は、日中に大量に消費してしまった竜気を瞑想で回復させたかったので、こころよく受けた。


 セジムさんは早々に場を離れると、近くの建物跡に入る。アゼイランさんとアユラさんも雑談のあとに、同じ建物跡に入っていった。

 家族で寝るのかな?

 焚き火の場所からは壁があって、寝所は覗けない。

 ナザリアさんと魔女さんは、夕食の後片付けのあとに、僕たちが残していた作業を終わらせてくれた。そして、ナザリアさんは家族と同じ寝所へ。

 魔女さんは、また焚き火のところへと戻ってきて、腰を下ろした。


「寝ないんですか?」

「妾はあれを見守る必要がある」


 あれ、とは別の建物跡で寝ている黒髪の女性だね。

 僕たちを信用していない、というわけじゃなく。彼女に無理をさせたのは魔女さんなので、責任を感じているのかな。


 特に会話が続かなかったので、僕は瞑想をすることにした。

 胡座あぐらをかくと、アレスちゃんがいつものように膝の上に乗ってくる。アレスちゃんは、霊樹の木刀を抱えていた。

 瞑想しだすと、すぐに竜脈の本流を感じ取る。ここは、竜脈の本流の真上なんだね。

 み取った竜脈を体内で循環させて、アレスちゃんと霊樹の木刀に分け与える。自分自身でも少しずつ溜め込んで、竜力を回復させていく。


 どれくらい瞑想していたのか。

 十分に回復したことを感じて、意識を戻す。

 瞑想中も周囲の警戒をおこたらないくらい、今の僕には朝飯前です。だけど、注目を集めていたことには気づかなかった。


 魔女さんと、そういえば寝所に行かなかったミシェイラちゃんが僕を見ていた。


 は、恥ずかしい。


「師は誰じゃ?」


 魔女さんの質問に、一瞬戸惑う。

 スレイグスタ老のことを言ってもいいのかな。はぐらかして言えば問題ないかな?


「ええっと、スレイグスタというおじいちゃんに……」

「ああ、あの悪坊わるぼうか」

「もしかして、知ってるんですか?」

「あれが小童こわっぱの頃から。そうであったか。あれが師とは、随分と苦労しておろう」

「はい。悪戯いたずらとか……」

「昔からじゃな」

「そうなんですね」


 魔女さんがスレイグスタ老を知っていたとは!

 ミシェイラちゃんも当然のように知っていて、そこからはなぜか、スレイグスタ老の悪口や昔話になった。

 きっと今ごろ、遠い地でくしゃみをしているに違いない。


「その霊樹の幼木と精霊はスレイグスタに渡されたのか?」


 おお。なにも言ってないのに、霊樹の木刀の正体とアレスちゃんの属性を言い当てられちゃった。


「いいえ、見つけたのは僕とミストラルです。霊樹の精霊……アレスちゃんは、幼木に憑いていたんだよね」


 と膝の上のアレスちゃんを見ると、うんうんと頷いていた。


「使役はせぬのか?」

「ええっと、僕は耳長族じゃないですし。プリシアちゃんも使役はしたくないって言ってるから。でも、それで今朝はひどい目に遭いました……」


 ミシェイラちゃんを見ると、悪びれた様子もなく微笑んでいた。

 どういうことか、と話を促されたので、今朝の顛末てんまつを魔女さんに話す。


「自分たちは使役したくない。かといって他者に使役もされてほしくない。気持ちはわからぬでもないが、それならそれ相応の対応をする必要があるじゃろう」

「はい。失念していたことは反省です」

「其方は……」


 魔女さんは、焚き火越しに僕とアレスちゃんを見た。


「腰の白い剣は古代種の竜族、おそらく、スレイグスタの牙か。それと、霊樹の幼木を変化させた木刀。武器は真っ当であるが、防具が貧弱じゃな。それは街人の服装であろう」


 魔女さんに言われるまでもなく、僕の服は普通の服だった。

 でも、僕にはこれが普通なんだよね。

 学校に通っているときにも習った。たて重厚じゅうこうな防具は、野党や弱い魔物には有効かもしれない。だけど、それ以外の強い魔物や魔獣や妖魔といった人の手に負えないような存在が相手の場合、邪魔にしかならない。それなら、軽装で素早く動ける方が有利だと。

 さらに僕はこれまで、竜人族の人たちのなかで生活をしたり、魔族相手に大立ち回りをしたりしていた。そういう圧倒的な攻撃力を持つ存在を相手に防具は無意味で、だからこそ気を回したことはなかった。


 自分の知識と考えを話す。すると、魔女は一理ある、と頷いてくれた。


「じゃが、いつまでも防御面への気配りが欠けていては、それこそ今朝のようなことを繰り返すじゃろう」

「そうなんですけどね……」


 では、どうすればいいのだろう。

 ライラは、重傷を法術で回復した後遺症で、精神干渉に弱くなっている。だから守護具しゅごくを絶えず身につけているんだけど。物理的な防具ではなく、そうした内面の防具が必要なのかもしれない。


「ここに誘ってもらった礼じゃ。もしもこの地に滞在している間に指定するものを集めることができれば、対策になるようなものを渡そう」

「えっ! 本当ですか?」


 魔女さんの思わぬ申し出に、僕とアレスちゃんは手を取り合って喜びあう。


「では、なにを集めればいいんでしょうか?」

「まずは、霊樹の葉がひとつ」

「それは、すぐにでも手に入りますよ!」

「次に、千手せんじゅ蜘蛛くもいと

「……その蜘蛛ってなんですか?」

「あとは、邪竜じゃりゅうなみだ

「邪竜さん、どこかに飛んでませんか……」


 簡単なのは、最初だけでした!

 千手の蜘蛛なんて聞いたことないし、禁領に邪竜が住んでいるなんて話は、巨人の魔王からも聞いたことがないですよ!

 魔女さんの難易度の高いお礼返しに、僕とアレスちゃんは手を挙げたまま固まってしまった。

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