番外編2助けて助けて助けて助けて助け

ぼくはスミス。

スミス・コンダンテ。

この研究所兼鍛冶屋、殺戮専門研究所ヘパイストスの所長兼てんちょーをやっているぼくだが、今日はとあるおえらいさんの依頼をこなすため、大森林まで来ていた。


「ハァ……ハァ……ハァッ、とっ……」


今は、装備の素材収集のため、ヴローヴを狩る罠を設置しているところだ。


ちなみにヴローヴというのは大森林を基点に生息している鉱物魔獣の一種で、大気中の魔素を吸って大きくなるだけの一般魔獣とは違い、体内にヴローヴ金属を生成して自身とは別の核を造り、分裂する。


その体内に生成されるヴローヴ金属はしなりに定評のあるムータ金属の一つなのだが、その中で唯一振盪を溜め込む性質がある。


あっ、ちなみに振盪は激しく震えるってことね。


武器に振盪を伝える、つまり、敵の体に振盪を伝えることで相手を内側からはかい出来るのだが、相手は基本これの対策ができない。

なぜかって言われると、戦闘の時いちいち考えるやつなんていないからだ。

それを考えるのは戦い慣れたやつと、戦闘狂くらいだろう。


まぁだからこそ、この金属はあまり数が少ない。


一番の要因としては、乱獲と、密猟だろう。


それに、ヴローヴ金属核が使えるほどに大きくなるためには、造られ始めてから5年と、相当の時間が掛かる。


ぼくは、おえらいさんがたから許可をもらっているから、こんな大胆なしかけができるのだ。


まぁ……こんなぼくだから手伝ってくれる人はだれもいないけど。


それはともかく、罠を設置してくれる自動人形オートマチック・モンレーヴの配置が完了した。


ひときわ木漏れ日の強い芝生を見つけ、そこにあった丸太にドカッと座り込み、一息つく。


「わっ!」


急に肩を掴まれる。

驚きすぎて肩を震わせるぼくをよそに、彼女はニコニコえがおで話し始めた。


「お疲れ様、こんなに小さいのに、頑張るのねぇ」

「あっ……いえ!ぼくはなにも……定範囲駆動型自動人形オートマチック・モンレーヴ……

オモンくんたちが、あとは頑張ってくれますので……」


深々と帽子を被り、自身の動揺を隠した。


「ふふっ、かわいいのね」

「なっ、なにを、ぼくはかわいくありません!!

それに……コレは、お金をもらってやっていることなので、褒められる筋合いはないのです」


すると、またもや口を緩ませ、彼女は笑う。


「私、大人になったらこの森も、この区も抜け出して、旅がしたい」


そして、こちらを振り向き、縋るような笑顔でコチラをちらりと見た。


「その時は、私を、連れてって。あなたのその──

優しい機械で」

「……うん」


言葉は軽く、何も成さないまま消えていく。


いつか絶対に、助け出す。

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