番外編 天使の逆光

俺は、武器屋エンカウント・ウェポンの店長を務めているブルジ・エンコフだ。

30過ぎて早々に禿げ上がった頭に、逆に生えてくる髭が特徴的な42歳独身の筋肉ダルマなわけだが……

自分で言ってて少し悲しくなるな……


閑話休題

俺は雇い主であるヴィルヘルムさんと、あるところへ仕入れに出ていた。

なぜ雇い主がついて来るのか、その理由は明白だ。

なぜなら、彼が武器オタクだからである。


「おぉ……ここが例の……私、ここ数百年になってから久々に地上へ上がったので、まだこの大陸には来てなかったんですよ……

ですが、来てみたらビックリですね!

こんなにも技術の発展が目覚ましいとは……今度お母様にも見てもらいたいものです」


ヴィルヘルムさんは、時々変なことを仰る。

数百年前のことを当事者のように話したり、急に神話の話を持ち出したり、そして一番……いや、ここ十数年間見て感じたことは、"老い"を全く感じさせないことだった。

体力という面はもちろんだが、顔つきや体格、若干女性っぽい高い声である所や、どこかでなにかを諦めているような目。

もしかしたら、人間じゃないのかも知れない──

だが、そんな疑問、俺にとっちゃもうどうでもいい。

彼といる時間は、最高に楽しかった。


「あっ、えっとぉ……どのコースお望みで?」

「じゃあ、この技術者気まぐれ武具セットで」


ヴィルヘルムさんはワクワクとでも言いたげな目で呟く。

仕入れるのは俺の店だから、一応料金表を確認する。

「ごごごっ……500万ペラっ!!??」


この世界の貨幣は、種族ごとに別れている。

主に流通している貨幣は、

人間族フューマリーのルセ。

エルフのメガラ。

獣人族ワービーストのセニ。

そして、ドワーフのペラ。

全ての貨幣の価値は違っており、最も価値が高い貨幣がエルフとドワーフの貨幣であるメガラとペラ。

500万ペラとは、約600万ルセ分に相当する額だ。


「どっから出すんですか……?こんな額……」


その問いに、なぜ聞いてるのかわからないとでも言いたげに彼は応えた。


「自腹だよ?」


あぁ、俺は、俺が惚れたのは、この人の、こういうところなんだ。


力強い光に目を細め、俺は前を向く。


「神を救い、我を救えよ。さすれば、救済を与えん」


明日もこの平和な日常が続きますように。

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