第6話「傾国の聖女」

そうしてしばらくすると隣国、つまりミシェルの元の国、レオンハルト王国からダンスパーティーの誘いがあった。


「ミシェル、行きたくないなら断っておこうか?」


「大丈夫です!ついていきます!」


そうしてあの二人と相見える事になった。


「ミシェル様。お久しぶりですわ。」


「聖女ラナ…。」


「ミシェル、ラナをいじめに来たのか?!」


「招待したのはそちらですわよね?」


「ええ、私がしておきました。」


ラナは何を考えているのかわからないが眉ひとつ動かさずにそう言う。


「ラナが?どうして?」


「アーロン様。ミシェル様もご友人に会いたいだろうと思いまして。」

そこに来たのはガビーだった。


「ミシェル。」


「ガビー。」


「ミシェルが隣国の王子を唆したなんて噂、嘘よね?」


「え?」


「国中で噂になってるの。結婚もしたんですってね。」


「う、うん。」


「ミシェルが人を騙すなんて考えたくないけど、……。」


「ガビー、信じて、私はロン様を唆してなんか…」


「そう、私が求婚したんだ。」


そう言うロンにラナはよろけた振りをして水をかける。


「?!」


「あら、ごめんなさい。手が滑って…。」


するとみるみるうちに醜い姿へと変わってゆく。


「ロン様!」


ミシェルは咄嗟にロンの顔にハンカチをあてた。


「ありがとう。ミシェル。」


「ロン様、早く帰りましょう。風邪をおひきになりますわ。」


来なければよかった。ミシェルは心からそう思った。自分が貶められるのは構わない。ただ、ロン様が辱められるのは我慢ならなかったのだ。成り上がってラナ達に自分達の仲を見せつけようと思っていたのに、まさかこちらがやられるなんて思いもしなかった。馬車の中でロンにかかった水を拭う。


「ありがとう。ミシェル。大丈夫だよ。」

そう言うと彼はそっとミシェルを抱きしめた。


「…あ、は、はい。」


突然の事にミシェルはドギマギしながらも優しく抱き返すのだった。



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