授業参観①


「はい、それでは授業を始めます」



 いつもより真面目な先生の言葉。

いつもより背を伸ばししっかり授業を受ける生徒。

いつもより堅苦しい空気の教室。


 今日は教室の雰囲気が全く違う。

それは教室の一番後ろで見守る、生徒の親御さんたちのせいだろう。

そう、今日は授業参観なのだ。


 僕は窓側の一番後ろの席なので、親御さんたちに見守られている生徒の緊迫した雰囲気をビンビンに感じる。

そして隣の席の霧島さんはというと、ピシッと背筋を伸ばし、真面目に授業を受けている。


 先生の説明を耳を傾けてよく聞いており、うんうんと頷いて積極的に授業に参加している。

普段の霧島さんからすると考えられない光景だ。

 

 いつもは僕にちょっかいをかけてくるはずなのだが。

こんなにちゃんと授業を受ける霧島さんは初めて見た。


 そしてそんな霧島さんを親御さんたちが、なんだあの美少女はと驚いて見ている。

そりゃそうだ。


 霧島さんは艶のある黒髪に整った顔立ち、まさに人形のような可愛さだ。

まあ黙っていればの話だが。


 にしても親御さんの顔を見ていると、何となく誰の生徒の親かわかる。

例えば教室の真ん中あたりに立っている男性。

あの口角の上がった口と大きな目は、山本のお父さんだろう。


 そういえば霧島さんのご両親って来てるのかな?

そんな疑問を持った瞬間、コツコツと足音を響かせて教室に誰かが入ってきた。


 その女性は艶のある黒髪に整った顔立ち、そして人形のような綺麗な顔立ち。

まるで霧島さんがそのまま成長したかのような姿であった。


 絶対霧島さんのお母さんだ!

霧島さんのお母さんであろう人はコツコツと教室内を歩き、霧島さんの後ろに立った。


 ものすごい光景だ。

生徒だけでなく先生までもが手を止めて2人を見ていた。

教室中の視線が集まる中、授業が再開される。



「この問題わかる人」



先生がそう言った瞬間、霧島さんがバッと手を挙げた。



「じゃあ霧島さん」



 今日の霧島さんは積極的だ。

先生から指名された霧島さんは黒板に向かって歩いていき、スラスラと問題を解いた。


 すると教室からパチパチと拍手が起こる。

後ろを見ると、霧島さんのお母さんは軽く拍手していた。

先ほどの凛とした表情とは違い、ニッコリ笑顔で、娘の頑張っている姿を喜んでいるようだ。

 

 霧島さんもフン!と満足そうな顔で席に戻ってきていた。

その後もいつもと違い、真面目に授業を受ける霧島さんだった。

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