水泳の授業①
更衣室に楽しそうな声が響く。
皆の雰囲気はいつもと違い、とても楽しそうだ。
「お前、めっちゃ腹筋割れてんじゃん!」
「うー、さみー!」
「この水泳帽ダッサ!」
みんなワイワイと騒ぎながら学校指定の水着に着替えていく。
そう、これから水泳の授業なのだ。
僕は裸を見られたくないので、影を消してサッ!と水着に着替えた。
それはもはや早着替えのマジック程の速さであった。
水着に着替え終わり、白色の水泳帽を被り、ゴーグルを頭に装着して更衣室を出ていく。
更衣室を出ると美しい光景が広がっていた。
目の前には太陽の光に照らされ、綺麗に透き通っているプール。
揺れる水面と塩素だろうかの独特な匂い。
生徒の騒がしい声が高揚感を加速させる。
「はい、着替え終わった奴はプールサイドに並べー」
半袖半ズボンで首から笛をぶら下げ、真っ黒に日焼けしている体育教師が命令する。
いかにも夏を感じさせる見た目だ。
プールサイドに体育座りで並ぶ。
周りを見ると同じように水着で水泳帽の男たちが綺麗に並んでおり、その光景に笑ってしまいそうになる。
みんなどこか恥ずかしそうだ。
それはこの後、女子が更衣室から出てくるからだろう。
プールの授業は楽しいが、少し恥ずかしい気持ちもある。
「ちょっとやだ、男子もう待ってんじゃん!」
「なんか水泳帽ってダサくて嫌だ・・・」
ゾロゾロと女子更衣室から学校指定の水着に着替え終わった女子が出てくる。
みんな恥ずかしそうに人の影に隠れている。
皆が羞恥心を持つ中、女子更衣室から堂々と出てきた一人の人物。
引き締まった美しい体に水着を纏い、恥ずかしがることなく水泳帽を綺麗に深く被った彼女。
ゴーグルは他よりも光り輝いて見え、表情は凛々しい。
そう、霧島さんだ。
「あぁ、霧島さんはどんな姿でも美しい・・・」
「神々しすぎるよ・・・」
皆が霧島さんの神々しい姿にうっとりしている。
男子は誰も性的な目で見ておらず、羨望の眼差しを霧島さんに向けている。
それほど霧島さんが神聖であるということだ。
霧島さんはそんな目線を全く気にせず、キビキビと自分の位置に移動して体育座りを始めた。
「じゃあ授業始めるぞー」
先生の声と共に授業が始まる。
最初にストレッチを行い、水に慣れる遊びから泳ぎの指導へと進んでいく。
そして授業も中盤に。
「よし、次は25m泳いでもらう。泳ぎ切ったら合格だ!泳ぎ方はなんでもいいぞー」
えー、と生徒から不満の声が漏れる。
文句を垂れつつもみんなスタート台に立ち、順番に飛び込んでいく。
僕も列に並び、自分の番を待つ。
泳ぎは苦手なんだよなー、犬かきも上手くできないし。
すると急に生徒がざわざわし始めた。
ん?どうしたんだ?
「あ、次は霧島さんだっ!」
「どんな泳ぎ方するんだろう?」
どうやら霧島さんの番のようだ。
霧島さんはスタート台に立ち、背筋をピシッと伸ばしてと立っている。
そういえば霧島さん、泳ぎは得意なんだろうか。
霧島さんだとクロールとかでスイスイ泳ぎそうだな。
そんな妄想をしていると、ピーッ!とスタートの笛が吹かれた。
瞬間、霧島さんはスタート台から綺麗な45度の角度で飛び込んだ。
思わず生徒から、おおっ!と歓声が上がる。
音もなくプールに飛び込んだ霧島さんは水中をスーッと進んでいく。
そのしなやかさはもはや水泳選手だ。
そして霧島さんは息を吸いに水面に上がったと思うと、両腕を大きく挙げて泳ぎ出した。
ま、まさかのバタフライ!?
霧島さんはまるでオリンピックにでも出ているかのように本気で泳ぎ、凄まじいスピードで進んでいく。
霧島さん!その泳ぎ方はまずい!
いくらとびきり美少女の霧島さんでもバタフライは、あまりのインパクトでみんなに引かれてしまう!
「すごい霧島さん!美しすぎる!」
「ダメだ!目が離せない!」
しかし、僕の心配とは裏腹に、周りの生徒は絶賛だった。
「あ、あんなに美しいバタフライは見たことがないっ!」
先生までもが口を大きく開けて驚き、褒めちぎっている。
そして25mプールを泳ぎ終わった霧島さんはバシャン!と飛び跳ねる魚のようにプールから飛び出た。
「霧島、合格っ!」
先生が高らかに叫んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます