第49話 珈琲来航
<1854年11月14日 昼下がり>
【坂本龍馬】
「帰ったで!」
最終的に連れてきたのは以下の6名。
間崎哲馬・乾猪之助・平井収二郎・中岡慎太郎・吉村虎太郎・岡田以蔵。
半平太の弟子とあって、一癖も二癖もあるうえに、頭が固い奴らときたで。
まぁ、姉貴ならなんとかするじゃろ。
「龍馬!またほっつき歩いて!」
「まぁまぁちづねぇ、お味方を連れてきたで勘弁しちくれや。」
迎えてくれるのは嬉しいんじゃが、雷が落ちるかと思うと毎回冷や冷やするで。
「間崎哲馬です。よろしくお願いします。」
「お久しぶりです。平井収二郎です。」
「乾猪之助と申します。」
「吉村虎太郎。」
「中岡慎太郎と申す。」
「…岡田以蔵です。」
「…。半平太のところの門下生ね。
話は聞いている。一応手打ちは済んだから信じることにする。
こいつのことは信じなくてもいい。
でも、何があっても乙女さんの言うことはちゃんと聞いて!
必ず皆にも関係してくるから。」
「「はっ。」」
ちづねぇは弟をなんとおもっちょるのか…。
こやつらもほんにわかっちゅうのかのぉ…。
「龍馬、次はこれぞ!」
兄上が笑顔で手伝いに大八車を引かせてくるが…。
「兄上!二つあろうが!」
「ん?前回は半平太もおったろう?今回は人も増えると思うてな!」
「おらんかったらどうするんじゃ!」
「お前が二往復するだけだろう?」
「っく…。兄上、まだ怒っちょったんか…
姉貴のところは食料やらなんやらなくての。
すまんがいっしょに運んでもらうで。」
おうおう、そんな悲壮な顔すんなや。
前回は二人で1台運んだんじゃきの。
師匠を称えておけよ。
【楠瀬乙女】
「龍馬は上手くやっただろうか?」
能力確認も含めた道路整備の途中にふと思う。
隠蔽の意味もあるので、一本目は切り上げて、二本目の城に向かう道だ。
龍馬に持たせたのは自分の操縦練習用に買ったおもちゃのドローン。
終末医療も兼ねていたので、病室にこもりっきりの患者に外を見せてやりたくてドローンを購入した。
映像もあるだろうが、『自分の見たい景色』を『自分の意思(操縦)で見る』っていうのはまた違うものがあると思ったからだ。
が、いつの間にか免許が必要になったので、それの講習に行ってもらう人を選んだり、免許をすでに持っているスタッフを追加で雇ったりした。
しれっと患者に操縦させようとしていたのは内緒だ。
一応、私も操縦だけはとひっそり家で練習していた機体を貸したわけだ。
何万もする機体は怖かったしね。
「これがあれば頭が固いやつも説得できるき、貸しちくれや!」
と龍馬が言っていたけど、自分の好奇心だけで言った訳じゃなかろうね?
結果が出ずに機体を壊してきたらノしてやるからね…。
3時前と言うことで、一息つくために道場に戻ってきた。
「お帰りなさい。
調子はいかがですか?」
栄さんがコーヒーとお菓子を持って来てくれた。
今日はコーヒーに挑戦か。
「これが珈琲ですか…。
こんなに簡単にできるとは…。
文字は読めるのですが、この記号やらなんやらが分からなくて…。
乙女さんが煎れてくれたときとは違って、墨汁のような色になってしまって…。
分量があってればいいのですが…。」
「ありがとうね。
多分あってるさ。
ま、こんなに簡単にできるようになるのは100年後くらいかね?
実際は本物?もこんな色だし、みんな目分量だよ。
私はブラックで濃いめが好きだけだからね」
「『ぶらっく』?」
「あぁ、英語、亜米利加人が使う言語で、「黒い」っていう意味だ。
このままの見た目通り、砂糖もミルクも入れない飲み方さ。
苦いが頭が冴える気がしてね。
抹茶の苦味が好きなのと似てるのかね?
栄さんは前みたいにミルクと砂糖を入れるかい?」
「私も試してみます!」
フンスと握りこぶしを作る姿は可愛らしい。
口をつけるも顔が一気に渋くなる。
まぁ、そうなるわな。
「に、苦いです…。」
「はっはっはっ!
苦いから甘い茶菓子に合うんだ。
とは言え、無理して飲むもんじゃないよ。
砂糖だけでもいれておきな。」
「いえ!そうおっしゃるならば失礼して…。
!甘いっ!!」
「さっき食べたときより甘いだろう?」
栄さんを見てニヤリとする。
「!?な、なぜそれを…。」
「菓子の個数さ。一個だけ少なかったからねぇ。かまをかけたつもりだったんだが。
ま、別にそれぐらいで咎めたりしないから。味見は作り手の特権だよ。
…、ブクブク太らない限りはね?」
「は、はい…、気をつけます…。」
頬を真っ赤にしてうつむく姿も愛らしい。
ったく、龍馬が言うようにこんな可愛い嫁さんに離縁突きつける奴なんかこっちからお断りだよ!
しっかし、『コーヒーなんて目が覚めれば良い』って、こだわりなんてないと思ってたけど、
こうしてみると簡単なものだけでも結構な組み合わせになるんだね。
まぁ、豆の違いも焙煎の違いも分からんけどさ。
八平さんの介護をしているとは言え、八平さんもある程度自分で動けるし、投薬治療しかないわけで、私の手伝いをしたいと看護の勉強をしてもらっている。
私の蔵書からいくらか貸し出しているが、かなり進みが早い。
離縁のことを忘れようというのもあるだろうが、こういう集中力も坂本家の血筋なのだろう。
嫌な過去を吹っ切って、新しい目標に向かえるようになったのは良いことだ。
まぁ無理しないようにしてほしいけどね。
「おまんらーっ!もー着くぞぉーっ!」
あぁ、表から聞こえるこの声は…。
無茶の代名詞が帰ってきたか…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます